2011/05/22(日)「阪急電車 片道15分の奇跡」
有川浩の原作をこれが監督デビューの三宅喜重が映画化。話自体は悪くないが、演出が凡庸のかたまり。2時間足らずの映画なのに長く感じる。岡田恵和の脚本を生かし切れていない。中谷美紀や戸田恵梨香、谷村美月らの女優陣は良かった。
2011/05/18(水)「ウルフマン ディレクターズカット版」
劇場公開時に見ていないのでどこがディレクターズカットなのか分からないが、16分長いとのこと。1941年のロン・チェイニー・ジュニア主演「狼男」のリメイクでベニチオ・デル・トロが狼男を演じる。その父親にアンソニー・ホプキンス。監督は「ジュラシックパークIII」のジョー・ジョンストン。デル・トロの相手役に「ヴィクトリア女王 世紀の愛」のエミリー・ブラント。監督もキャストも傑作になりそうな布陣だが、批評的にも興行的にも失敗した。
僕はそんなに悪くないと思ったが、話が古いのが欠点か。1941年の映画の単なるリメイクでは限界がある。何か現代的なアレンジを入れたいところだった。狼男の特殊メイクを担当したのはリック・ベイカー。変身シーンのリアルさはジョー・ダンテ「ハウリング」(1981年)をはじめとしてもはや、やり尽くされた観があり、ベイカー自身も「狼男アメリカン」(1981年)で経験がある。変身後の姿がそれほど狼っぽくないのは古典のリメイクを意識したためかもしれない。
2011/05/18(水)「9 ~9番目の奇妙な人形~」
3DCGアニメ。冒険活劇に徹しているのが素晴らしい。9と呼ばれる人形が目を覚ますと、そこは機械と人間の戦いが終わった未来。人間はすでに滅んでいた。9はふとしたことで邪悪なマシンを目覚めさせてしまう。復活したマシンは9の仲間の人形たちを次々に餌食にしていく。9はマシンとの戦いに挑む。
設定はファンタジーだが、中身はアクション。奇妙な人形たちは襲ってくる猫や翼手竜のような機械たちと戦う。戦いにスピード感があって良いが、設定の細部が今ひとつ分かりにくいのが惜しい。たとえば、人形たちはどうやって動いているのかとか、邪悪なマシンはなぜ人形たちの生気を吸うのかといった理由が説明されない。
シェーン・アッカーが自作短編アニメ(2005年アカデミー賞ノミネート)をティム・バートンの後押しを受けて長編化したもの。元の短編も見てみたいものだ。と思ったら、YouTubeにあった。なるほど、こちらは9と猫型マシンとの対決をメインに描いている。キャラクターの造形は長編版と同じ。9のキャラクターを他のキャラクターに分散して、物語の背景を拡充したのが長編版ということになる。短編は物語のワンシーンを描き、長編は全体像を描いているわけだ。IMDBの採点は短編が7.7、長編は7.0。
2011/05/16(月)「パリより愛をこめて」
ノンストップのアクション。ただし、この話、1時間を過ぎたあたりの展開を序盤に持って来た方が良かった。初めの方の展開はノンストップではあっても謎が物足りないのだ。情緒を描く暇もない。昨年、サイモン・カーニック「ノンストップ!」という小説が面白かったけれど、あれを見習って欲しい。ただ、アクションに関しては十分、水準は行っている。トラボルタは敵を殺しすぎだけど。監督は「96時間」のピエール・モレル。主演はジョナサン・リース=マイヤーズ。
2011/05/16(月)「トゥルー・グリット」
チャールズ・ポーティスの原作を半分ぐらいまで読んだところで見た。冒頭のナレーションは原作の書き出しと同じ。それにかぶせてマッティ・ロスの父親の死体と逃亡する馬を見せるのがうまい省略の仕方だ。冬の西部の風景が美しく、コーエン兄弟は的確な画面設計と描写でストーリーを語っていく。画面に格調の高さがあり、正統派の西部劇といった感じに仕上がっている。今年のアカデミー賞では無冠に終わったが、せめて撮影賞は人工的な「インセプション」ではなく、この映画の方が良かったと思う。
飲んだくれの連邦保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジスはセリフ回しなど、ちょっと作りすぎかなと思えるが、まず好演と言って良いだろう。ちなみに原作でアイパッチをしているのは左目だが、映画では右目になっている。主演のヘイリー・スタインフェルドはこれが映画デビューとは思えない。芯の強い少女をしっかりと演じている。トゥルー・グリット(本当の勇気)はこの少女を指しているのだろう。
ところで、主人公の父親が買った馬は原作ではポニーとなっているし、映画のセリフでもポニーと言っているが、字幕はマスタング。画面に出てきたのも普通の馬に見えた。僕はマスタングについては野生馬という訳しか知らなかったが、調べたら小型の野生馬のことだった。小型の馬だからポニーと言っていたのか?