2004/07/31(土)「『秀丸』を100倍生かす強力マクロの使い方」

 「『秀丸』を100倍生かす強力マクロの使い方」の表紙楽天ブックスから届いた。マクロを使う意味や文法解説、便利なマクロがいくつか解説してある。初心者向けの解説書なので、あまり目新しい部分はないが、リファレンス的に使えるので、手元に一冊あっても良いと思う。254ページで1,380円。この内容でこの価格なら安い。

 秀丸マクロの特徴で「マクロの規模は中型辞典並み」との指摘はもっとも。命令や関数が少ないからだ。秀丸マクロはこれが少ないから、覚えやすいというメリットがある半面、したいことをするのに回りくどい表現をしなくてはいけない場合もある。個人的にはもう少し命令が多いといいと思う。

 秀丸ホームページのマクロライブラリで登録マクロの参照数が表示できるのは知らなかった。拙作の秀丸でFTPするマクロ(ftp.mac)は479人、ハイパー日記システム支援マクロ(hnf.mac)は157人が参照している(これアクセス数で、ダウンロード数ではないんですよね)。しかし、ライブラリに登録してあるのはどちらも、古いバージョンなのでご注意くださいませ。この2つの新しいバージョンはハイパー日記システムでpnamazuを使おうに置いてあります。ライブラリは登録したものを修正する作業が若干面倒だったし、大したマクロでもないのにバージョンアップの際、サイトー企画の人を煩わせるのは悪いので、登録するのはやめました。

edithelper.rb

 tDiaryの更新画面でタグ挿入を簡単にするプラグイン。挿入できるのはem,strong,del,p,pre,br,ul,ol,liとimg、リンク。僕がよく使うタグはpreとblockquoteなので、ちょっと改造してblockquoteも挿入できるようにしたいところ。  リンクと画像挿入に関しては、普段は秀丸マクロを使っている。リンク挿入マクロは以前、斉藤秀夫さん作のUrlRef.mac(IEで開いているページのURLを挿入するマクロ)に少し手を加えたものでこんな感じ。
//link.mac
ddeinitiate "iexplore", "WWW_GetWindowInfo";
   if(!result){ddeinitiate "firefox", "WWW_GetWindowInfo";
     if(!result){ddeinitiate "sleipnir", "WWW_GetWindowInfo";
        if(!result){ddeinitiate "mozilla", "WWW_GetWindowInfo";
           if(!result){message "ブラウザが起動していません。";
           endmacro;}
        }
    }
 }
    $url = dderequest( "0xFFFFFFFF" );
    $url2 = $url;
    ddeterminate;
        if( leftstr($url, 1) == "\"" ) {
        $url = midstr($url, 1, 1024);
        #x = strstr($url, "\"");
        if( #x >= 0 ) {
            $url = leftstr($url, #x);
        }
    }
    $url2 = midstr($url2, #x, 1024);
    $url2 = midstr($url2, 4, 1024);
    #y = strstr($url2, ",");
    #y = #y-1;
    $url2 = leftstr($url2, #y);
    insert "<a href=\"";
    insert $url;
    insert "\">";
    insert $url2;
    insert "</a>";
    endmacro;
 ただし、うまくページタイトルが取れるのはSleipnirだけ。IEではタイトルが入らず、MozillaとFirefoxでは日本語が文字化けする。

2004/07/22(木)「妻に捧げた1778話」

 沖縄行きの飛行機の中で読む。ガンにかかった奥さんのために1日1話のショートショートを書いたという眉村卓作品。その経緯といくつかの作品が収めてある。ショートショートの第一人者だった星新一が1000編を達成するのにはかなりの年月がかかったが、眉村卓は5年足らずの間にそれを軽く越えた。もちろん商業誌に発表したわけではないので数だけで単純な比較はできないし、本人もそんなことは気にしていないだろう。

 ショートショートを読むのは久しぶりだったが、どれも面白く読めた。その経緯も創作の仕方を含めて説明され、面白い。奥さんへの愛情も感動的である。僕は眉村卓の良い読者ではなかったが、映像化された作品はかなり見ている。また作品を発表して欲しいと思う。

2003/12/05(金)「影踏み」

 「半落ち」ほど綿密につながってはいないが、これも連作短編。主人公はノビ師。夜中に民家に忍び込んで物を盗む泥棒である。主人公の真壁修一は15年前の火事で双子の弟啓二と両親を亡くした。一流大学の法学部を出て、将来は弁護士にと期待されていた主人公はその事件がきっかけで法を捨て、ノビ師になった。双子の弟はその時から頭の中に住み着いている。

 7つの短編が収録されていて、どれも完成度が高いが、クリスマスにプレゼントを届けるよう頼まれた約束を果たす「使徒」がオー・ヘンリーの短編を思わせていい話である。プレゼントを贈るよう頼まれた少女は目の前で父親が死に、叔父夫婦に預けられたが、納戸のような部屋を与えられ、冷たい仕打ちを受けている。5年前、父親が死んだときから続くクリスマスのプレゼントだけが心の支えなのである。主人公はそのプレゼントを届け、意外な依頼主が明らかになる。

 帯にハードサスペンスとあるので、誤解を与えるが横山秀夫の本質は人情話。タッチはハードボイルドだが、ハードボイルドも本質は人情話だろう。具体的な描写をするか、外見描写だけにとどめるかの違いがあるにすぎない。

 今夏に出た横山秀夫の初長編「クライマーズ・ハイ」はミステリーではないので、「このミス」などでは入らないかもしれないが、これまでの代表作と言える傑作だった。それに比べれば、見劣りはするものの、「影踏み」も買って損のない本だ。

2003/05/05(月)「ドリームキャッチャー」(小説)

 ようやく読み終わる。スティーブン・キングの作品としては水準作で、可もなく不可もなしといったレベル。エイリアンの侵略もの+「IT」という感じだが、文庫で4巻の長さが必要かどうか疑問。キングの作品は目で見るような描写ばかりなのでこれほど長くなるのだろう。

 僕はキングの小説を読んでいてSFを読んでいる気がしない。よくあるパターンを圧倒的な筆力で描ききるのがキングという作家の持ち味。そこには新しいビジョン、アイデアはあまり見当たらない(エイリアンに乗っ取られた体の中で残った意志が抵抗するというのは新しいか)。かといって退屈かといえば、そうではないんですがね。

 登場人物が痛みに耐える描写が多いのはキング自身が交通事故に遭って、生死の境をさまよった経験が反映されているのだろうか。

2002/01/25(金)小説「山の郵便配達」

 短編で42ページしかないのですぐに読める。これを読むと、映画がいかに良くできているか分かる。まず、老婆に手紙を読んでやる場面が小説にはないし、村の娘と息子との交流もほんの少しだけ。父親が息子を案内して最後の配達に出かけるというプロットだけが同じで、ス・ウの脚本は小説を驚くほど豊かに膨らませている。細部を具体的に語り、父子の関係に的確なエピソードを付け加え、小説を見事に語り直している。その手法に感心させられた。映画は小説以上の出来と言っていい。

 ただし、映画には父親の足を痛めつけた川の水の冷たさが少し欠けている。具体的な描写を織り込んだ結果、父親のキャラクターが先日書いたような生真面目すぎるものになったのも残念。もちろん、小説でも生真面目な男なのだが、それ以上に感じるのは老いを迎えた男の切なさなのである。映画はもっと父親の視点で統一した方が良かったのかもしれない。

 細部を膨らませすぎることで余計な要素が交じる場合もあるのだ。しかし、これは小さな傷で、この短い小説からあの映画を作り上げたスタッフの手腕は褒められるべきだろう。

 小説では天秤棒を担いで郵便袋を運ぶ。映画のリュックサックより、これは大変だと思う。犬に“次男坊”という名前もなかった。