2013/05/06(月)「人狼村 史上最悪の田舎」

 2011年のスペイン映画だが、60年代のハマー・プロの作品を思わせる作り。シチェス映画祭作品賞ノミネートだそうだ。シチェスならでは。本筋に入るまで30分ほどかかるのが難だが、それからのブラックなユーモアがいい。主人公が指2本を失う展開が笑えた。

 今時珍しい着ぐるみの狼男も慣れてくれば、気にならない。出だしはムムムと思ったが、結局、好感をもって見終えることができた。脚本もそれなりに工夫している。

2013/05/05(日)「セイビング・フェイス 魂の救済」

 信じられないことにパキスタンでは夫や恋人から顔に硫酸をかけられる被害が年間100件以上あるそうだ。「セイビング・フェイス 魂の救済」は被害者の女性たちとそれを助ける医師、弁護士、議員らの活動を描き、昨年のアカデミー賞で短編ドキュメンタリー賞を受賞した。

 顔の半分に硫酸をかけられ、失明どころか眼球をも失った女性が登場するなど痛切きわまりない映像がいくつもある。夫たちのほとんどが無罪放免となってきたのも信じられない。パキスタンは徹底した男尊女卑の国なのだろう。

 それだけで終わっていたら、やりきれないところだが、映画のラストには大きな希望と喜びがある。被害を受けてきた女性たちがこれで救われるわけではないけれど、こうした卑劣な犯罪は今後、抑止されていくに違いない。

2013/04/29(月)「愛、アムール」

 カンヌ映画祭パルムドールとアカデミー外国語映画賞受賞。老いと老老介護と人間の尊厳を織り込みつつ、映画は普通に進行するが、最後でミヒャエル・ハネケらしさが出たと言うべきか。納得のいくラストだ。これは途中にある夢(悪夢)のシーンと呼応していて、悪夢で叫び声をあげた主人公はラストでは穏やかに(知らずに)運命を受け入れる。

 83歳のジャン=ルイ・トランティニャンと86歳のエマニュエル・リヴァが老夫婦を演じる。劇中、若い頃のアルバムが出てくるが、そこに写っているトランティニャンは精悍な顔つきをしている。僕にとってのトランティニャンは「男と女」の男ではなく、アラン・ドロンと共演した「フリック・ストーリー」の犯罪者役だ。若い頃の姿を知っているからこそ、この映画はリアルに迫ってくる。

 ある朝、食事中に突然、妻は反応しなくなる。病院で手術を受けるが、うまくいかず、右半身が麻痺してしまう。妻は家に帰って、「もう病院には入れないで」と懇願する。そこから夫の自宅での介護が始まる。妻は一向に良くならず、病状は進んでいく。老いが絡んでいるから、回復する見込みはない。車いすから、ついには寝たきりになる。自分の寝たきりの姿を他人には見せたくない妻と、言うことを聞かない妻への苛立ちを持ちながらも懸命に介護する夫。ハネケは2人の姿を淡々と描いていく。

 同じくパルムドールを受賞したハネケの前作「白いリボン」とはまるで題材が異なるが、不思議なことに冷たい感触は共通する。「愛」というタイトルだからといって、決してこの映画、温かな映画ではない。介護の現実はそんなに生やさしくはなく、きれい事では済まないことをハネケはわきまえている。

 幸福感を持たせて締めくくったのは70歳のハネケにとっても老いは他人事ではないからだろう。元々、この映画、ハネケの家族に起こった同じようなことを題材にしているのだという。

2013/04/28(日)「アイアンマン3」

 このシリーズ、好きなのだが、2作目はうーん、と思い、今回も少し物足りなかった。ロバート・ダウニー・ジュニアは相変わらずおかしいし、パルトロウもいいのだけれど、イマイチ演出に切れ味がない。監督は2作目までのジョン・ファブローに代わってシェーン・ブラック。この人、脚本家としてはなかなかだと思うが、監督としてはどうなんだろう。ちなみにIMDBでは8.1、ロッテン・トマトでも7.7なので多くの人は評価してます。

 映画が始まる前にこれから「マイティ・ソー」「ハルク」などの続編が公開され、2015年に「アベンジャーズ2」が公開されることが紹介された。またやるんですか。今回はエンド・クレジットの後にサミュエル・L・ジャクソンは出てこなかったけど。

2013/04/20(土)「相棒シリーズ X-DAY」

 恐らく脚本家はパソコンの知識にも金融市場の知識にも乏しいのだろう。この程度の脚本で映画を撮ろうとするのは無茶だ。

 X DAYとは国が金融封鎖をする日を言う。そのX DAYを知ったところで国債の空売りには何ら関係がない。国債の暴落を当て込んで空売りするわけだから、金融封鎖の日を知っても、その時には既に国債が暴落しており、空売りするには遅いのだ。だから犯人がX DAYを教えろと迫ることに説得力がない。この犯人、勘違いしている(脚本家も勘違いしている)。これ、根本的な欠陥。

 国債暴落時のシミュレーションを考えてみよう。国債が暴落すると、国債を大量に購入している金融機関の中には破綻するところが出てくる。ここで脚本家は取り付け騒ぎが起きると思ったのだろう。ところが、預金保険機構によって元本1000万円とその利子までは保護されることになっている。もちろん、そそっかしい預金者は銀行に駆けつけるかもしれないし、1000万円以上の預金がある人も慌てるだろうが、国が金融封鎖をするほどのことはない。

 金融封鎖のシミュレーションで銀行にシステム障害を起こすこと自体がバカバカしいが、これは立派な犯罪であり、こういうアホなことを画策した政府高官の方を逮捕すべきだろう。そこに話が向かわないのが不思議すぎる。

 このほか、動画投稿サイトにテキストデータをアップするというあり得ない設定やクライマックスに大量に舞う1万円札の無理な描写(あのトランクの1万円札に帯封はなかったのか、あれだけ舞うには相当の強風が必要だが、そんな描写もない)、犯人の逮捕容疑が殺人なのも大いに疑問(せいぜい過失致死)。これほど穴の多い脚本も珍しく、見ていて開いた口がふさがらない。