2011/07/07(木)「お引越し」

 1993年の相米慎二監督作品。@宮崎映画祭。田畑智子が今と同じ顔なのに驚く。桜田淳子が出ているのにも驚く。桜田淳子はこの前年に合同結婚式に参加しており、これが芸能活動最後の作品らしい。という感慨はあるにしても、映画としては田畑智子のうまさと、桜田淳子、惜しいという印象しか残らない。桜田淳子は20歳過ぎてからの方が良くなって、僕は女優として密かに期待していたのだが、惜しい。

 両親の離婚を11歳の少女の目から見た作品。終盤にある田畑智子がさまよう場面は普通の映画なら不要としか思えず、もっとテーマを突き詰めた方が良いのにと思うところだが、これはこれで魅力がある。作家の刻印みたいなものか。キネ旬ベストテン2位。

 とはいっても、この年のキネ旬ベストテン(http://cinema1987.org/kinejun/kinejun1993.html)はたいした作品はありませんね。この作品が去年の16位だった「春との旅」より素晴らしいかと言えば、全然そんなことはなく、むしろ「春との旅」の方が映画の出来は上だろう。年単位のベストテンは相対的な評価でしかないものなのだ。

2011/07/07(木)「シェルター」

 ジュリアン・ムーア主演のホラー。というよりは遅れてきたオカルト映画という感じ。ちょっと今風の映画としては物足りない。主人公の精神分析医が多重人格の青年(ジョナサン・リス・マイヤーズ)を診察しているうちに恐ろしい領域に足を踏み入れることになる。監督はスウェーデンのマンス・マーリンドとビョルン・ステイン。IMDBの評価は5.9。

2011/07/07(木)「奇跡」

 九州新幹線開業に合わせたお仕着せ企画をここまでの映画にするのは立派。あと30分ほど短かったら、文句なしの傑作になっていたのではあるまいか。九州新幹線の一番列車がすれ違う時に願いを言うと奇跡が起きる。それを信じた鹿児島と福岡に離れて暮らす小学生の兄弟を巡る話。

 奇跡を縦糸とするなら横糸は自分が住む地域への愛着だ。桜島の降灰に「意味分からん」とうんざりしていた兄の航一(前田航基)は桜島が大爆発して住めなくなり、また家族4人で暮らせたらと思っているが、ラストでは風向きを見て、「今日は灰は降らへんな」と考えを変える。是枝裕和は安易な奇跡を描くことよりも子供たちの成長にスポットを当てている。まいるのは描写の隅々がいちいちうまいこと。凝ったストーリーでなくても、生き生きとした細部の描写で映画はここまで素敵になれるのだ。

2011/07/07(木)「春との旅」

 左半身が少し不自由で、明らかに脳梗塞の後遺症と思える姿で仲代達矢演じる忠男が家を出る。その後を孫娘の春(徳永えり)が追う。春が給食の仕事で勤める学校が休校となり、春は東京へ出て行くことに決めた。一人娘は5年前に自殺して、忠男は春と2人暮らし。春が出て行けば、忠男は一人では生きていかねばならない。それに自信がない忠男は疎遠の兄弟たちを訪ね、居候を決め込もうと思ったのだ。忠男は春と一緒に兄弟たちを訪ねていく。

 兄弟たちにはそれぞれに事情があり、自分勝手に生きてきた忠男を引き取ることを拒否する。その中で浮かび上がってくるのは家族の絆だ。春は別れた父親と会いたいと思うようになる。大滝秀治や淡島千景、香川照之、小林薫、田中裕子らが出てきては印象に残る演技を見せる。こうした俳優たちがそろったのは脚本が良かったからだろう。キネ旬ベストテン16位。監督は小林政広。

2011/06/22(水)「縞模様のパジャマの少年」

 8歳の少年ブルーノは軍人である父親の仕事の都合でベルリンから田舎に引っ越す。庭付きの大きな家だったが、周囲には子供は一人もいない。家の窓から外を見たブルーノは遠くに“農場”があるのを見つける。そこにいる人たちは昼間なのにみんな縞模様のパジャマを着ていた。ブルーノは農場のそばに行き、同じく8歳の少年シュム-ルと有刺鉄線越しに交流するようになる。

 子供の目から見たホロコースト政策を描いた佳作。ラストの展開を見て、こういう話はどこかで見た記憶があると思った。「パリの灯は遠く」や「ぼくの神さま」あたりがそうか。監督は「ブラス!」のマーク・ハーマン。IMDBの評価は7.8。母親役で「マイレージ、マイライフ」のヴェラ・ファーミガが出ている。