2009/12/24(木)「わたし出すわ」

できるだけ儲けて

できるだけ貯めて

できるだけ与えなさい

 冒頭に出るエピグラフのような在り方の主人公(小雪)が、かつての同級生にお金をあげる話。大金をもらって不幸になる人もいれば、幸福になる人もいる。事件に巻き込まれる人もいる。分不相応な大金は不幸の元と分かって、処分する人もいる。しかし、庶民的に一番共感できるのは、もらったお金でタイ旅行して奥さんを見つけて仕事でも出世した青年だ。青年がもらったのは大金ではなかったけれど、それでも十分、幸福は手にできるのだ。

 森田芳光監督は終盤に心地よい2つのエピソードを用意して、映画の後味を良いものにしている。エピソードはどれも常識的なもので、この着地のさせ方も常識的ではある。他の監督なら、最後の青年のエピソードを前面に出して人情的な側面を強調した物語を組み立てたかもしれない。

 だが、この映画の在り方も嫌いではない。主人公がなぜ大金を持っているのか、なぜ同級生にあげるのかは終盤に明らかになる。淡々とした描写は森田芳光らしいし、何より小雪が良い。真意の分からない不思議な役柄を静かに好演している。小池栄子も役柄にピッタリだった。