2000/12/19(火)「オーロラの彼方へ」

 この映画にはタイムトラベルは登場しないが、過去を操作したことによる現在への影響が描かれ、時間テーマSFの一種と言える。ニューヨークにオーロラが現れた日、主人公は30年前の父親と無線通信を果たす。父は翌日、消火活動の途中で死ぬところだったが、息子の忠告によって死を免れる。ところが父を救った代わりに母親が連続殺人犯の犠牲になってしまう。それ助けるため、現代の息子と30年前の父親が無線通信で協力し、犯人を捕まえようとする。後半はこの犯人探しのサスペンスになってしまうのが、SFファンとしてはちょっと残念。

 前半の息子と父親の交流が泣かせる。大林宣彦「異人たちとの夏」を思わせる描写なのである。ここをもっとふくらませていたら、文句なしに傑作の太鼓判を押すところだ。

 過去を変えると、当然のことながら主人公の現在の環境も変わる。本当であれば、記憶もすっかり変わってしまうはずだが、両方の記憶を保持したままというのがポイント。これをご都合主義と言ってしまってはこの映画は成立しない。監督は「真実の行方」「悪魔を憐れむ歌」のグレゴリー・ホブリット。

 過去への通信を扱ったSFとしてはグレゴリー・ベンフォード「タイムスケープ」が有名。これは超高速微粒子タキオンを使って未来から現在へ通信を行い、未来の危機を回避する話だった。「オーロラの彼方へ」は通信の設定をオーロラの影響とだけ説明している。このアイデアだけでストーリーにSF的な発展はない。あまりマニアックにすると、一般受けはしないかもしれない。