2002/03/24(日)「ワンピース 珍獣島のチョッパー王国」
王冠島に行ったルフィたちが、悪党3人組と対決する話。チョッパーは島を救う王様と間違われる羽目になる。いつものように、やられてやられてやられた後に、怒りを爆発させて悪をやっつけるパターン。こういう映画を東映が製作するのは本当にぴったりだと思う。かつての任侠映画のパターンなんですよね、これって。
友情や仲間の大切さを真正面から訴える「ワンピース」のようなアニメが受けるのは興味深い。普通のドラマで描いたら、ダサダサの話でしょう。にもかかわらずそれなりに感動させられ、しかも根強い支持があるのは、ルフィやサンジやゾロがカッコイイからか。特に際だった傑作ではないが、入場料分は楽しませてくれる。
併映は「デジモンテイマーズ 暴走デジモン特急」と「ワンピース 夢のサッカー王!」。デジモンは夏がメインで春は気楽に作った感じ。でも作画は「ワンピース」より上でしょう。
2002/03/20(水)「アメリカン・スウィートハート」
ビリー・クリスタル脚本・製作のシチュエーション・コメディ。美人でスターの姉とは対照的なマネージャーの妹(ジュリア・ロバーツ)が、姉と別居中の夫(ジョン・キューザック)に恋をして、という話かと思ったら、新作映画のマスコミ試写をめぐる話がトップに来る。それを企画するのが宣伝マンのビリー・クリスタル。というわけで映画は2つの話を交差させつつというか、あまり噛み合わずに進行していく。素直にロマンティック・コメディに仕上げれば良かったのに、クリスタルが出しゃばりすぎ。製作を兼ねるなら、もう少し謙虚な姿勢が欲しいところだ。
共演映画がヒットして実生活でも結婚し、アメリカの理想のカップルといわれるグウェン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とエディ(ジョン・キューザック)。しかし、グウェンの浮気を知ったエディは逆上して浮気の現場を襲い、2人は別居。共演しなくなってグウェンの人気にも陰りが見え始めた。そんな時、1年前に撮影した2人の共演映画が完成。しかし、伝説的な監督で変人のハル・ワイドマン(クリストファー・ウォーケン)はプロデューサーにも見せず、マスコミ試写で公開すると譲らない。本当に完成したのかどうかも分からない。やり手宣伝マンのリー(ビリー・クリスタル)はグウェンとエディを試写会に連れだし、話題作りで映画のヒットを狙う。というのが長い前ふり。ここからグウェンの妹でマネージャーのキキ(ジュリア・ロバーツ)の話が始まるのだが、どうも要領が良くない。
クリスタルの下ネタを入れた脚本はあまり上等とは言えず、ジョー・ロスの演出もタイトさを欠く。ほとんどテレビドラマのレベルなのだが、ゼタ=ジョーンズとロバーツが出ているので眺めている分には退屈はしないといったところ。実際には2歳年上のロバーツが妹役というのはちょっと無理がある。だいたい役の上で33歳(実際には今年35歳)になって、けなげで純粋な役というのはどうか。ゼタ=ジョーンズは明らかにロバーツよりは美人だが、役柄の意地の悪さは現実を反映したものか。でも好きですけどね。ウォーケンはすごいメーキャップでパンフを見るまで分からなかった。
2002/03/13(水)「エネミー・ライン」
ボスニアを舞台に繰り広げる戦争アクション。撃墜された偵察機のパイロットが敵のセルビア人勢力の支配地域(Behind Enemy Line)を必死に逃げ回る。それを上官(ジーン・ハックマン)が救出しようとする―という設定はまるで「スパイ・ゲーム」のよう。映画デューでCM、MTV出身の31歳ジョン・ムーア監督は的確な絵づくりができる。特に撃墜場面の圧倒的なカット割りとSFXはMTVで培った手腕なのだろう(樋口真嗣が「206秒に176カット 脅威のモンタージュ」とパンフレットで分析している)。このほか、アクション場面はどれも見応えがある。
単なるアクション映画としてみれば、(一部にデビュー作としての傷はあるが)よくできた映画である。ただ、ボスニアが舞台というのがどうも気にかかる。和平交渉の裏でセルビア人は民間人の虐殺を繰り返しているという設定が事実に基づくものかどうか知らないが、セルビア人を残虐な敵という風に単純化してとらえる視点は安易である。きっとハリウッドはアフガンを舞台にした映画もそのうち撮るだろう(「ランボー3 怒りのアフガン」は既にありますが)。
「プレデター」「プレデター2」「エグゼクティブ・デシジョン」のジェームズ・トーマス&ジョン・トーマスの原案をデヴィッド・ペローズ(ナチュラル・ボーンキラーズ」)とザック・ペン(「ラスト・アクション・ヒーロー」)が脚本化。冒険小説的ストーリーだが、決定的に違うのはクライマックスに騎兵隊よろしく援軍が駆けつけてくるところ。好みから言えば、ここは主人公が独力で敵を撃退して脱出する展開にしたかった。で、自分を見殺しにしようとした米海軍上層部に一撃を加えるとか、軍批判の視点まで入れてくれるとさらに良かった。
しかしその展開にすると、主人公を演じるオーウェン・ウィルソン(「ホーンティング」「シャンハイ・ヌーン」)では役不足。どうも甘さが残る顔立ちなので有能な兵士には見えない。もう一人のパイロットを簡単に処刑し、執拗に主人公を追撃するセルビア人ウラジミール・マシュコフの方が顔に凄みがあるので、ウィルソンがマシュコフに勝てるとはとても思えないのである。
2002/03/05(火)「ロード・オブ・ザ・リング」
2時間58分の長編だが、その長さが必要なぐらいの分量が詰まっている。いや、長い原作からすると、これでも駆け足なのだが、脚本は要所を押さえている。中盤からは見せ場の連続で、怒濤のアクションが最後まで持続する。同時に主人公フロド(イライジャ・ウッド)と旅の仲間たちの友情と団結が描かれ、見事なくらいに正攻法の映画である。
SFオンラインの映画評によると、ジョン・ブアマン「エクスカリバー」とロン・ハワード「ウィロー」はともに「指輪物語」の映画化を目指して果たせず、その代わりに撮った映画なのだという。「ウィロー」の主人公が「指輪物語」のホビットのように小さな種族であったのはそういう事情があったわけだ。「エクスカリバー」の剣と魔法の物語もまた、「ロード・オブ・ザ・リング」の雰囲気とよく似ている。
冒頭、暗くくすんだ映像で3000年前の人間と暗黒の怪物軍団との戦いが描かれる。暗黒の国モルドールの冥王サウロンは世界を支配するため強力な力を持つ指輪を作る。しかし、戦闘中に指を切り落とされて敗れ、指輪も持ち主を転々とする。という発端は「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」のアビヌス軍団と人間の戦いのようにスケールの大きなSFXである。指輪は人間より小さな種族ホビットのビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)の手によって、中つ国のホビット庄(シャイア)に持ち帰られる。バギンズは111歳の誕生日に再び旅に出ることを決意。魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)に命じられ、指輪を養子のフロドに託す。ガンダルフはサウロンが再び勢力を盛り返し、指輪を手に入れようと画策していることを知る。指輪がサウロンの手に渡ったら、世界は暗黒。フロドは指輪を破壊するため、モルドールの火の山まで行くことになる。
原作は「旅の仲間」(文庫で4巻)「二つの塔」(3巻)「王の帰還」(2巻)の3部作。美しく色彩鮮やかなタッチで綴られるホビット庄の描写は原作のゆったりとしたペースを踏襲しているが(それでもかなり端折ってある)、その後はハイテンポでフロドらホビット族とエルフ族、ドワーフ族、人間の9人の旅の仲間の行程が描かれていく。ビジュアルな描写は申し分なく、「スリーピー・ホロウ」の首なし騎士を思わせる黒の乗手(ブラック・ライダー)の姿は原作を超えるイメージ。「ハリー・ポッターと賢者の石」にも登場した北欧の怪物トロルが出てくるが、ずっと凶暴である。これが象徴するように「ハリー・ポッター」が子ども向けのファンタジーであるなら、こちらは大人向け、男性向けの力強い話なのである。
特にブラック・ライダーとの戦い→エルフの王女アルウェンの疾走→無数のオーク(ゴブリン)が攻めてくる洞窟→終盤の戦いへと至る描写はどれも完成度が高い。普通の映画のクライマックスが何個も入っている感じ。トロルのほかに大きな触手を持つ怪物や火の鞭を操るバルログなども登場するが、SFXだけが全面で出るのではなく、物語の補強としての使い方に好感を持つ。撮影の舞台となったニュージーランドの風景も魅力的である。
スプラッターに笑いを散りばめた「ブレインデッド」のタッチを僕は嫌いではないが、あの映画の監督ピーター・ジャクソンがこういう立派な映画を撮るとは思わなかった。1961年生まれのジャクソンは「指輪物語」の熱烈なファンという。原作を知り尽くしたファンでなければ作れない映画なのだなと思う。
フロドとサム(ショーン・アスティン)がモルドールにたどり着くところで終わるラストを見て、一刻も早く続きを見たい気持ちになった。
2002/02/26(火)「ソウル」
引き続きアクション映画。監督はやはり2作目の長澤雅彦(「ココニイルコト」)だが、こちらは十分な予算がかかっているようだ。
韓国を舞台に日本の刑事(長瀬智也)と韓国の刑事(チェ・ミンス)が反発しあいながら、頻発する現金輸送車強奪事件とアジア首脳会議開催阻止を予告するテロリストグループを追う。
殴られ続けて「またグーかよー」と愚痴をこぼすTOKIOの長瀬は意外な好演。韓国の大スター、チェ・ミンスはやや類型的な役柄ながら貫禄の演技を見せる。加えて通訳役のキム・ジヨンも清潔感があっていい。問題は脚本で、あまりにも「ダイ・ハード」の影響を受けすぎている。テロリストグループと現金強奪犯がクロスしてくるぐらいはまあ仕方がないにしても、チェ・ミンスが部下を誤射した過去があるという設定は何かほかに変えられなかったのか。長谷川康夫は「ホワイトアウト」の脚本にも参加していたというが、引き出しの少ない脚本家なのだな。
この脚本のせいで長澤雅彦の演出にも大味な部分を感じてしまう。スタッフは日本と韓国から参加しており、合作映画の趣。日本人俳優も長瀬智也しか出ていないが、予算のほとんどは多分日本側の出資ではないか。ビリングのトップに長瀬が来るのを見てもそんな感じ。「日韓国民交流年記念映画」との字幕はちょと恥ずかしい。
それにしても「修羅雪姫」も「ソウル」も観客はまばら。アイドルを主演にしても興行的にはあまり効果がないらしい。