2004/07/07(水)「スキャンダル」
ヨン様人気と女性の日が重なって、映画館は満員で整理券を発行していた。しかも男は僕ひとりだけだったような気が。オバさまパワーに恐れ入りました。
ラクロの「危険な関係」を18世紀の朝鮮に翻案した作品。監督のイ・ジェヨンはスティーブン・フリアーズ版「危険な関係」を見て、映画化を決めたという。数ある「危険な関係」の映画化のうち、僕はフリアーズ版しか見ていないが、この「スキャンダル」はそれに劣らない出来だ。危険な恋愛ゲームの首謀者チョ夫人がラストに見せる深い後悔と喪失感は秀逸。人の心を弄ぶゲームによって、当事者さえも傷つき、破滅していく様子を象徴的に見せた。チョ夫人を演じるイ・ミスクが映画を引き締めている。
李朝末期の朝鮮。政府高官の妻チョ夫人(イ・ミスク)は子どもに恵まれず、夫は16歳の側室ソオク(イ・ソヨン)を迎え入れることにする。内心穏やかでないチョ夫人は従兄弟のチョ・ウォン(ペ・ヨンジュン)にソオクを妊娠させるよう持ちかけるが、プレイボーイのチョ・ウォンは簡単すぎてつまらないと断る。その代わりに提案したのが婚約者の死後9年間も貞節を守り続けているチョン・ヒョン(チョン・ドヨン)を落とすこと。それに成功すれば、褒美として初恋の人でもあったチョ夫人と関係を持つとの条件つきだった。チョ・ウォンはあの手この手でチョン・ヒョンにアタックをかける。チョン・ヒョンが参加している天主教の組織に多額の寄付をしたり、暴漢に襲わせたチョン・ヒョンを助けたり、何通も手紙を出したり。次第に心を開いたチョン・ヒョンは突然チョ・ウォンに熱烈なキスをされて、すべてを投げ出す決意をする。そしてチョ・ウォンも本気でチョン・ヒョンを好きになっていく。それを知ったチョ夫人は嫉妬からチョン・ヒョンを陥れようと画策する。
ペ・ヨンジュンは「冬のソナタ」のイメージを一掃して好演しているが、惜しいのは貞淑なチョン・ドヨンが普通の女優でありすぎること。フリアーズ版のミシェル・ファイファーのような美人じゃないので、プレイボーイが本気で好きになる対象としてあまり説得力がない。やはり恋愛ゲームの犠牲者である側室役イ・ソヨンの方が美人だった。エンドクレジットの途中でぞろぞろ席を立ったオバさま方には分からないでしょうが、イ・ソヨンが最後の最後に出てくる。この恋愛ゲームの犠牲者の一人でありながら、溌剌としていてちっとも犠牲者という感じがしないイ・ソヨンのたくましさ(若さ)がいい。
イ・ジェヨン監督の演出は端正かつ情感のこもったものだが、前半は話の展開が分かっているためかメリハリに欠けると感じた部分もあった。朝鮮の貴族社会を詳しく再現した美術と衣装はよい仕事をしている。バロック調の音楽もいい。