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2005年12月26日の記事

2005/12/26(月)「チキン・リトル」

 「チキン・リトル」パンフレットディズニーとしては初めての全編3DCGのアニメ。上映時間は1時間21分と短く、明らかに子供向けの作りである。アメリカでヒットしたのは子供を連れた親が映画館に詰めかけたからだろう。アメリカでも子供向け作品がヒットするのは日本と同じ理由があるのである。内容的にはディズニーが配給しているピクサーの3DCGアニメに比べると、物足りない部分が多く、ストーリー的にも技術的にもあまり見るべきところはない。昨年公開されたピクサーの「Mr.インクレディブル」と比べれば、その差はとても大きいと思う。それでも小学生の子供は喜んで見ていたから、ディズニーの狙いは間違ってはいないのだろう。監督は「ラマになった王様」のマーク・ディンダル。演出に大きな不備はないが、特に優れた部分も見あたらない。つまり平凡である。ディズニーが今後も3DCGアニメを作るつもりなら、脚本にもっと力を入れて、子供と一緒に見る親も楽しめる映画を目指した方がいいと思う。

 「狼少年」に「宇宙戦争」を加えて父と息子の相互理解をテーマにした話である。1年前、チキン・リトルは「空のかけらが落ちてきた」と警報の鐘を鳴らす。町中は大騒ぎになるが、確かに見たはずの六角形の空のかけらは消えていた。父親も信じてくれず、結局、ドングリと間違ったのだろうということになってしまう。それ以来、チキン・リトルは何をやっても失敗ばかり。体育の授業中、いじめられたアヒルのアビーをかばおうとしたチキン・リトルは火災報知器のスイッチを引いてしまい、スプリンクラーが動作して体育館は水浸し。父親はますますチキン・リトルの話を聞いてくれなくなる。チキン・リトルは野球選手として有名だった父親を見習って野球で名誉挽回を図ろうとする。

 ちょっとした計算違いではないかと思うのはベンチ・ウォーマーだったチキン・リトルが代打で出場してヒットを打ってしまうこと。これで少なくとも父親はチキン・リトルを見直すので、ここで終わってもいいなと思えるのである。これに続く空のかけらの真相が分かるシーンは明らかに「宇宙戦争」で、宇宙船からトライポッドのような機械が出てきたり、人を消滅させる光線を出すあたり、スピルバーグのリメイク作品とよく似ている。公開時期から考えて模倣ではないが、結果的に目新しさには欠けることになった。このシーンによって、チキン・リトルは町の住民たちからも見直されることになる。ただし、この展開、物語を派手にするための展開のような気がしないでもない。話自体にあまりオリジナリティーが感じられず、志は高くないと思う。ついでに言えば、ギャグのレベルも高くはない。

 みにくいアヒルの女の子アビーについては明らかに差別的な表現があり、少し気になった。チキン・リトルはアビーに好意を寄せるのだが、アビーの外見を超えた内面の魅力が描かれないので終盤のキスシーンが唐突に思える。チキン・リトル自体はかわいいキャラクターなのに、他のキャラクターはあまりかわいらしさのないデザインが多かった。