2011/05/03(火)「若者たち」
BSプレミアム「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編」の枠で放映された。歌は有名でも映画を見るのは初めて。甘い内容を想像していたら、全く違い、時代に深くかかわったさまざまな問題を提起していて、胸を揺さぶられるような作品だった。
親を亡くした5人きょうだい(田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二)が時に激しく対立しながらも、助け合って生きていく姿を描く。1967年の作品。昭和40年代といっても、まだ貧しいのが普通の時代だったのだなと思う。ご飯を一生懸命食べる姿はそのまま一生懸命な生き方を表している。登場人物たちのまっすぐな姿勢がとても気持ちよい。
長男の田中邦衛は中学2年までしか学校に行かず、工事現場で働いて弟妹たちを食わせてきた。好きになった女(小川眞由美)から学歴がないことを理由に「(出世に)10年、15年回り道をすることになる」と交際を断られる。その晩、大学受験に失敗した末弟に「何年かかっても大学に行け、ボン」と声を荒げる姿に胸を打たれる。これ、田中邦衛の代表作ではないかと思ったら、毎日映画コンクールの男優主演賞を受賞したのだそうだ。
元はフジテレビのドラマだが、宮崎はまだ民放1局の頃なので、当然のことながら僕は見ていない。映画について日本映画作品全集には「広範な若者たちの深い共感を得た。学歴による差別、被爆者の苦悩、出稼ぎ農家の苦しみ、働きつつ学ぶものの厳しさ、学園紛争の中で揺れ動く若者の心、現代における生きがいなど、多くの切実な問題が組み込まれ、見る者を考えさせる」とある。キネ旬ベストテン15位。3部作になっており、第2作「若者は行く 続若者たち」(1969年)は12位、第3作「若者の旗」(1970年)は25位にランクされている。山内久脚本、森川時久監督。
2011/05/02(月)「コララインとボタンの魔女」
3DCGかと思ったら、人形を使ったストップモーション・アニメーションだった。ニール・ゲイマンの児童文学を「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のヘンリー・セリックが映画化したダークなファンタジー。
コララインは引っ越してきた山間の家、ピンク・パレスで小さなドアを見つける。入っていくと、そこには現実世界より優しいママとパパがいた。ただ、ママとパパの目はボタンだった。何度もこの世界に入っていくうちにボタンのママはずっとここにいるようにコララインを誘う。それには簡単な処置が必要だった。コララインの目をボタンにすることだ。実はボタンのママは邪悪なボタンの魔女で、現実世界のママとパパも魔女に消されてしまう。コララインはママとパパ、そして魔女に封じ込められた子供たちを助けるため、魔女と対決する。
小さな子供には怖い場面もあるだろうが、それだけに少しだけ不満がある現実世界の素晴らしさを強く再認識することになるだろう。こういう映画を見て育った子供は幸せだと思う。大人が見ても面白い作品。僕は「ナイトメア…」よりこちらの方が好きだ。
2011/05/02(月)「運命のボタン」
リチャード・マシスンの原作を映画化。といっても、原作に基づいているのは最初の30分で、あとは映画のオリジナルである。そしてこの部分が三流SFといった感じにしかなっていない。この話なら1時間のドラマで十分じゃないかと思えてくる。結局、途中に描いてあることが消化不十分なまま終わっているのである。キャメロン・ディアス主演。監督は「ドニー・ダーコ」のリチャード・ケリー。
2011/05/02(月)「フランケンシュタイン 野望」
ディーン・クーンツの小説。天才科学者ビクター・フランケンシュタインが200年後の今も生きていて、新人種を多数作り出しているという設定。新人種は社会の至る所に送り込まれ、旧人種(つまり今の人間)を絶滅させる日に備えている。臓器など体の一部を切り取る凄惨な連続殺人事件の捜査をしていた女性刑事カースンとマイケルはフランケンシュタインの存在にたどりつく。フランケンシュタインが最初に創造したモンスターはデュカリオンと名乗り、やはりフランケンシュタインの野望を阻止しようとしていた。
シリーズの第一弾。連続殺人事件だけで話が終わるのはいかにも導入部という感じだが、物足りないことこの上ない。話の密度が薄いのだ。元々、マーティン・スコセッシも企画に加わったテレビシリーズ用に書いた原作だが、制作者と意見が合わず、クーンツもスコセッシも降板した。テレビシリーズ自体もパイロット版(2004年、マーカス・ニスペル監督)だけで頓挫したとのこと。同じクーンツのオッド・トーマスシリーズは1作目が素晴らしかったので、4作目まで読んだが、そのシリーズを中断してこれにとりかかる必要があったとは思えない。といっても水準はクリアしている。パイロット版は「デュカリオン」としてDVDが出ている。新たに映画化の話があるそうだ。
2011/05/02(月)「誰がため」
2008年のデンマーク映画(チェコ、ドイツ合作)。ナチス・ドイツ占領下のデンマークで、 レジスタンスの闘士フラメンとシトロンは 上司のヴィンターから指令を受け、対独協力者を暗殺していた。だが次第に2人には自分たちの行動は誰のためになっているのか、との疑念が芽生え始める。
実話の映画化には珍しく、陰謀と裏切りが渦巻くギャング映画のような作りになっている。それがとても魅力的だ。社会派というよりエンタテインメントの要素が大きい。原題はFlammen & Citronen(フラメンとシトロン)。フラメン役のトゥーレ・リントハートは初めて見る役者だが、クールな雰囲気が良い。シトロンを演じるのは「007 カジノ・ロワイヤル」などのマッツ・ミケルセン。監督はオーレ・クリスチャン・マセン。2008年度のデンマーク・アカデミー賞で5部門を受賞したそうだ。