2013/04/14(日)「舟を編む」
本屋大賞受賞の三浦しおんの原作を石井裕也監督が映画化。主人公の馬締(まじめ=松田龍平)をはじめ、辞書作りに打ち込む人たちを描いている。映画の白眉は馬締からの草書体の達筆の手紙を受け取った香具矢(かぐや=宮崎あおい)が「学がない私が悪いんですけどね」と馬締をなじる場面だ。手紙の文字をまったく読めなかった香具矢は勤め先である料亭の大将に読んでもらったのだ。
「でも、恥ずかしかった。こういうのは自分だけで読みたいもんじゃない。誰にも見て貰いたくないと思うんだよね。大将が、良いのか、って何度も聞いたけど、内容知りたいし、それしか方法無かったから……そういうとこ、みっちゃんってデリカシー欠けるよね」
「すみませんでした」
「手紙じゃなくて言葉で聞きたい」
「はい?」
「みっちゃんの口から聞きたい。今」
「今って、今ですか?」
ここから映画は馬締と香具矢のラブストーリーになるのかと思ったら、そうはならず、言葉とコミュニケーションという問題を掘り下げるメタフィクションの方に行くのかと思ったら、そうもならず、やっぱり辞書作りの本筋に戻っていく。メタフィクション的な展開も小説ならいいのだけれど、映画にするのには向かないから、これは当たり前だと思うが、少し残念な気持ちもある。原作はどうなのだろう。
渡辺美佐子や小林薫、加藤剛、オダギリジョー、池脇千鶴らが適役適所の好演をしていて、映画はうまくまとまった佳作に仕上がったと思う。ちなみに、かなり変わったキャラクターの主人公はアスペルガー症候群ではないかと思う。他人の気持ちが分からない、自分の気持ちをうまく伝えられない、特定の物事に集中する、というのはアスペルガー症候群の患者の特徴にぴったりだ。
2013/04/13(土)甘利越え
甘利明経済再生相が「3月末までに日経平均は1万3000円」と言ったのは2月初め。それより少し遅れて日経平均株価は1万3000円を越えたので“甘利越え”と言われるようになった。もちろん、石川さゆりの「天城越え」のもじりだが、ユーモアのある人が替え歌を作った。一番だけ引用させていただく。
隠しきれない デフレ香が
いつしか日本に しみついた
誰かに盗られる くらいなら
バブルを起こして いいですか
値乱れて サプライズ
九十九折り 常連の買い
株上がり 円落ちる 肩の向こうに
あなた…… 兜町(しま)が燃える
何があっても もういいの
くろだと燃える 火をくぐり
あなたと越えたい 甘利越え
これ、思わず笑ってしまう。「隠しきれない デフレ香が」という歌い出しからクスクスだ。フルコーラスはかんべえの不規則発言にある。かんべえさんとは双日総合研究所の副所長・吉崎達彦さんとのこと。
驚いたのはこのページの作り、今時珍しくCSSを使っていず、HTMLだけで作ってある。インターネット普及初期のころはこういうページ多かったですね。ソースを見てみたら、なんと作成ソフトはMicrosoft FrontPage Express 2.0だった。これ、Windows98にインストールされていた無料のHTML作成ソフトで、僕も何度か使った。しかし10数年前のソフトなので、今では手に入れるのも難しいだろう(マイクロソフトの配布はとっくに終了しているが、探したら、ダウンロードできるページはあった)。かんべえさん、古いパソコンを使っているのだろうか。それとも、わざわざ新しいパソコンにインストールしたんだろうか。それがとても気になる。
2013/04/07(日)Viewsourcewithが動かない場合
64ビット版の秀丸のパスはC:\Program Files\Hidemaru\Hidemaru.exeになる。32ビット版の秀丸をアンインストールして64ビット版を入れ、設定しなおしたら動作するようになった。ただ、32ビット版の秀丸でも動くことがある。だから今まで32ビット版を使っていたのだ。Firefoxのバージョンによっては動かなくなるらしい。
2013/04/06(土)「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」
橘玲の本を5冊続けて読んだ。順番に(1)「不愉快なことには理由がある」(2)「日本人というリスク」(3)「「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計 」(4)「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」(5)「(日本人)」(リンク先はいずれもamazon)。(1)は単行本、(2)は文庫本、残り3冊は電子書籍で読んだ。電子書籍の方がすらすら読める気がするのは気のせいか。電子書籍の場合、外出先でもスマホで読めるので読み終えるのが早くなるメリットはあるなと思う。
面白かった順番で並べれば、(2)→(5)→(1)→(4)→(3)ということになる。(2)と(5)は東日本大震災を経た日本の社会と日本人についての考察という点で共通している。(1)は週刊誌の連載をまとめたもので、進化心理学について説明したプロローグが一番面白い。連載部分は文章が短いのでどうしても食い足りない思いが残るのだ。(4)は2004年の本だが、本質的なことは今も変わっていないだろう。(3)は取り扱い注意の本で、資産防衛マニュアルと言いながら、レバレッジを用いたFXや先物取引についても書いてある。こうした投機は資産を減らす(なくす)リスクが大きいことを注意して読んだ方がいい。以下、この本について書く。
まえがきの中で橘玲はアベノミクスによって次の3つのシナリオが想定されると書いている。
(A)楽観シナリオ アベノミクスが成功して高度経済成長がふたたび始まる
(B)悲観シナリオ 金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
(C)破滅シナリオ 国債価格の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る
このうち、一番起こって欲しくないのは言うまでもなく破滅シナリオだが、日銀の新たな金融緩和策(ロイターは「黒田日銀のバズーカ砲炸裂」と書いた)によって国債価格の暴落は短期的には起きにくくなったとみていいだろう。何しろ、毎月7兆円の国債を日銀が買い入れるのだ。これは日銀が国債価格の下落を防ぐために買い支えるということだ。日経電子版だったか、「池の中のクジラ」と評していたが、これが続いている限りは国債価格が暴落する可能性は低く、ということは金利の高騰も予想しにくい。一方で通貨供給量を2倍に増やせば、金利が低いままインフレになる可能性が大きい。もちろん、日銀もそれを狙ってやったことなのだ。
国債価格の暴落を想定しているこの本は破滅シナリオの途中までは「普通預金が最強の資産運用法」と書いているが、前提が崩れた以上、普通預金最強説も崩れたことになる。金利が低いままインフレが起きれば、預金は目減りする。となれば、資産バブル一直線のように思えるが、何が起こるか分からない。5日の長期国債の先物市場がサーキットブレーカーを2回発動するという歴史的な乱高下をしたのは市場もこの緩和策をどう受け止めて良いか分からなかったからだろう。異次元の金融緩和策は異次元の事態を引き起こす可能性がある。従来の破滅シナリオは通用しなくなったが、別の破滅シナリオが起きることも考えられるのだ。
というわけで積極的にこの本を読む必要はなくなったという結論になる。気になったことを一つだけ書いておくと、これまで海外投資を勧めてきた橘玲は本書で「海外投資はしなくていい」と結論づけている。それは金融機関の利益を追求しただけの投資信託が多くなってきたからで、こういう商品を使っての海外投資はむしろ有害ということだろう。ただし、海外投資するなら、ネット銀行の外貨預金で十分と書いていることには大きな疑問がある。預金保険機構の対象にならず、銀行が倒れたら何も救済策がない外貨預金が国家破産の際に何のリスクヘッジになるのか。ヘッジになるどころかリスクを拡大するであろうことは投資初心者でも分かることだろう。