2025/12/28(日)「世界一不運なお針子の人生最悪な1日」ほか(12月第4週のレビュー)
「世界一不運なお針子の人生最悪な1日」

スイスの山中にある小さな町。お針子のバーバラ(イヴ・コノリー)は母を亡くし、譲り受けた“喋る刺繍”の店は倒産寸前だったが、相談できる友人も恋人もいなかった。ある日、常連客との約束に遅刻した上に、ボタンを落としてなくすミスをして激怒させてしまう。愛車のフィアット500(チンクエチェント)でボタンを取りに店に戻る途中、バーバラは麻薬取引の現場に遭遇。売人の男2人が血まみれで倒れ、道には白い粉入りの紙袋、拳銃と大金の入ったトランクがあった。バーバラは「完全犯罪(横取り)」「(警察に)通報」「直進(見て見ぬふり)」の三つの選択肢を思い浮かべる。
元になった短編はYouTubeで公開されています。
ジョエル・コーエンに言われてマクドナルド監督は長編化しようとしますが、脚本を22回書き直してもダメだしをされたそうです。そこで原点に立ち返って、3つの選択肢のアイデアを思いついたとのこと。この経験は映画に活かされていて、3つの選択肢のどれでもないハッピーで含蓄のある結末へと向かいます。人間、追い詰められると視野が狭くなってしまいがちですが、実はもっと別の方法があったりするわけです。そんなことを考えさせるうまいラストだと思いました。
IMDb6.0、ロッテントマト95%(アメリカでは映画祭で上映)。
▼観客20人ぐらい(公開2日目の午後)
「劇場版 緊急取調室 THE FINAL」

超大型台風が連続発生する中、内閣総理大臣・長内洋次郎(石丸幹二)は災害対策会議に10分遅れて到着する。長内総理はその「空白の10分」を糾弾する暴漢に襲撃された。警視庁は総理を襲った森下弘道(佐々木蔵之介)を取り調べるため、キントリを緊急招集する。真壁有希子(天海祐希)らキントリチームは取調べを始めるが、森下は犯行動機を語らないどころか、取調室に総理大臣を連れて来いと無謀な要求を繰り返す。総理と森下の関係を調べるうちに35年前のヨット遭難事件が関係していることが分かる。
間延びした部分はありませんが、この事件だけで2時間持たせるのは少し苦しくも感じます。警察が舞台でも複数の事件が並行して起こるモジュラー型にしにくいのが難しいところです。
Finalと銘打っているようにキントリチームは解散しましたが、以前も解散してましたし、いつでも再招集はできるので復活しても良いんじゃないでしょうかね。監督はテレビシリーズも担当した常廣丈太。
▼観客多数(公開初日の午前)2時間1分。
「映画ラストマン FIRST LOVE」

テレビシリーズも担当した黒岩勉の脚本は面白くなりそうな要素と物語展開を備えていますが、演出に少し問題があるようです。詳細は避けますが、月島琉衣の役柄は本来なら20代半ばぐらいの女優の方が説得力があったと思います。クライマックスにしても、あの2人がどうやって助かったのかの説明は必要でしょう。
とはいっても、福山雅治と大泉洋のコンビのおかしさに女性客は笑ってましたし、それなりに満足度はあったんじゃないでしょうか。監督は平野俊一。
▼観客15人ぐらい(公開初日の午後)2時間7分。
「火の華」

パンフレットにそう書いてあるので「クーデター」と書きましたが、映画の描写からは単なる人質事件としか思えないのが残念なところ。人質2人を別々の場所に監禁し、どちらを助けるかを迫るこのクライマックスは恐らく「ダークナイト」(2008年、クリストファー・ノーラン監督)のクライマックスを参考にしたのでしょう。「ダークナイト」の場合、バットマンは1人なのでどちらを助けるか選ぶ必要がありましたが、この映画、警察が手分けして両方助ければ良いだけことなので、設定が意味をなしていません。どうも脚本の詰めの甘さが気になりました。
本当なら「パトレイバー2」が描いたようなスケールの大きなクーデター(TOKYOウォーズ)を描きたかったはず。それにはもっと製作費が必要で、それができないなら、説得力のある別の物語を考える必要があったと思います。
監督は「ジョイント」(2020年)の小島央大。主演は同じく「ジョイント」主演の山本一賢。脚本はこの2人の共同となっています。ハードな内容なのに観客はなぜか女性客が多かったです。タイトルからロマンティックな映画と誤解したのか、あるいは冨永愛の第二子妊娠で名前が出た山本一賢が目当てだったのか(それはないか)。
▼観客10人ぐらい(公開5日目の午後)2時間4分。
「モンテ・クリスト伯」

エデという女性が途中から出てきてダンテスに協力するんですが、どういう素性なのか説明されるのは終盤。これは分からないでもないんですけど、演じるアナマリア・ヴァルトロメイ(「あのこと」「ミッキー17」「タンゴの後で」)がとても魅力的なので気になりました。
このエデは原作とは設定が異なるようです。原作未読なので詳しく分かりません。というわけで光文社の新訳版の1巻を読み始めました。2巻の刊行は来年1月。半年に1度のペースで刊行していくようです。
IMDb7.6、メタスコア75点、ロッテントマト97%。
▼観客5人(公開21日目の午後)2時間58分。
















