2013/03/20(水)「儲かる会社、つぶれる会社の法則」

 「日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。」を読んだ際、投資の本では珍しい熱さを持ってる本だなと思った。著者の藤野英人はレオス・キャピタルワークスのCIO(最高投資責任者)。熱さに惹かれて、ちょうどSBI証券が取り扱いを始めた日本株のアクティブ投資信託「ひふみプラス」の積み立てを始めた。本のPR効果というのはなかなかのものがあるのだ。

 「投資家が『お金』よりも大切にしていること」にも、一見普通のビジネス書のように見えるこの本にも根底に熱い部分がある。法則4に「夢を熱く語れる」社長の会社は投資に値する、というのがある。藤野英人の会社の評価基準も社長に熱さがあるかどうかがポイントになっているわけだ。そして、この本の熱さが僕にはとても好ましく思える。

 あとがきには投資家として生きるための条件として「未来を信じること」「成長を望むこと」「努力すること」「仲間を信じること」「理想と現実の間を生きること」などが挙げてある。これは投資家としてだけでなく、企業の経営者にも普通の会社員にも当てはめられることばかりだ。どんな経営者も創業時には夢と希望に燃えているだろう。それが会社が大きくなるにつれて、現実路線に向かい、創業時の気持ちを失いがちだ。それを失わない経営者の会社が伸びる会社なのだろうと思うし、藤野英人もそう考えているのではないかと思う。

2013/03/19(火)ショッピング感覚の寄付

 インデックス投資についての名著「敗者のゲーム」の中で著者のチャールズ・エリスはこう書いている。

 愛する家族などに適切な額の遺産を残し、なお余裕の残る人々は、社会のために貢献できるという、素晴らしい機会を見過ごすべきではない。「慈善のためにお金を寄付する」という表現は、事の本質をまったくとらえていない。そうではなくて、想像力を働かせて、積極的に自分のお金を使うというように考えてはどうか? あなたが自分の力で長年にわたり作り上げてきた価値を使って、あなたにとってかけがえのない人々や組織を通じ、社会に貢献するのだ。人々の人生向上のために、積極的に何らかの支援ができるということは、このうえない喜びであり、精神的な充足感をもたらすものである。

 昨年、この本を読んだ時、この部分は「自分には関係ない話」と思った。遺産なんて残せるかどうかも分からないし、もし残せたにしても、それは数十年先の話だ。しかし、と最近思うようになった。エリスが言っているのは、人生の晩年にまとまった金額の資産がある場合、それを社会貢献に使えということだが、これは日常的に社会貢献することを否定しているわけではない。むしろ、それが当然の前提としてあるのに違いない。アメリカの一般家庭では家計の3%を寄付しているのだから。

 「投資家が『お金』よりも大切にしていること」もそうだったが、投資と社会貢献をセットで語ることに違和感がないのは、どちらもお金を有効に使うという点で共通しているからだろう。銀行にお金を預けっぱなしにしていても、わずかな利子が付くだけで社会の役にはまったく立っていない。投資でお金を働かせ、社会貢献でお金を有効に使う。それがお金を生かすことになるのだろう。エリスが言っている「寄付は慈善ではない」ということの意味がようやく分かってきた。

 で、寄付をしようと思った。寄付の対象として何となく頭に浮かんだのは「国境なき医師団」(MSF)。ホームページを見てみると、「四の五の言わずに、さっさと寄付しろ」と言われているような気になってくる。3000円あれば170人の命が救えるという。居酒屋で2時間飲んだぐらいの代金で170人が救えるのなら、居酒屋に行くのを1回やめれば、自分も協力することができる。というか、昨年4月から職場が夜勤に代わって、飲みに行く機会は激減しているのだった。居酒屋3回分ぐらいの寄付は十分にできる。自分のお金を有効に使うという「素晴らしい機会を見過ごすべきではない」のだ。はい、します、すぐに寄付します。

 MSFに限らず、NPOやNGOなどボランティア(に近い体制)で組織を運営している団体のホームページにはクレジットカードや口座振り込みで寄付する仕組みが備わっている。クレジットカードの使用は財布からお金を出す場合に比べて、お金を使う実感があまり伴わない(実感するのは請求書を見た時だ)。だから、カード破産も起きるのだろうが、寄付する場合にこれは心理的障壁を軽減する有効な手段になっているなと思う。口座振り込みもネットバンキングをやっている人なら、金融機関に行く手間が省けて、自宅のパソコンやスマートフォンでいつでもどこでもできる簡便さがある(半面、金融機関以外の場所で振り込むのが普通になると、振り込め詐欺の歯止めがなくなる恐れもある)。

 これに加えてMSFのサイトで感心したのはMSF Warehouseというページがあること。これは毛布5000円、コレラ対策セット2500円などの支援物資を自分で選んでカートに入れて注文する仕組みだ。注文しても自宅に商品が届くわけではなく、困っている人に送られる形になるのだが、まるでネットショッピングを思わせる。注意書きには以下のようにある。

 このサイトに掲載されている支援物資は寄付を象徴化したものであり、選択された支援物資が活動地に送られるわけではありません。このサイトで選択された支援物資と同額を国境なき医師団(MSF)の医療・人道援助活動に寄付されることになります。皆様からいただいた寄付は、最も援助が必要とされる活動に充てられます。

 選んだ支援物資がすぐに送られないのなら、なぜこんな仕組みが必要なのか。それは寄付したお金がどう使われるのかをイメージしやすくするためだろう。まともな団体なら、寄付金全体の使途報告書をホームページに掲載するだろうが、自分が寄付したお金が具体的にどう使われたかを知るすべはない。MSF Warehouseの仕組みはその代わりになるものだ。自分が選んだ支援物資はすぐには送られなくても、MSFの倉庫にある限り、いつかは困っている人に届くだろう。だから、自分がこれを送ったと思ってもかまわないはずだ。

 東洋経済新報によれば、MSFの活動資金の9割は個人からの寄付だが、日本での寄付集めには苦労しているという(国境なき医師団、日本での寄付集めに苦戦中)。年間の寄付金額が家計の0.08%という先進国では最もケチな民族の国なのだから、寄付集めの苦労は容易に想像できる。1回限りの寄付ではなく、協力していきたいと思う。

2013/03/17(日)「バトルシップ」

 宇宙からの物体がハワイ沖に落下するまで30分余り。DVD OR ブルーレイで見る場合はここまで早送りにして何らかまわない。そこからは戦闘シーンのみ。VFXはまずまずなので、見ていて退屈はしない。しかし、話にオリジナリティーが乏しいのは減点対象だ。1時間半ぐらいで描ける内容。

2013/03/10(日)リバランス

 カン・チュンドさんの日経電子版の連載「コレだけ読めば大丈夫! はじめての投資信託」を毎週楽しみに読んでいる。今週は「定年退職後の資産管理 守るべき3つのルール」と題し、資産の取り崩し方について書いてある。定年後に預金を取り崩して生活費に充てていくと、いずれ預金は底をつく。投資信託などで資産のポートフォリオを組んで、利回り3.6%で運用し、そこから年間3.6%を現金化すれば、資産は減ることはない、という趣旨。

 この記事ではポートフォリオを5000万円としていて、3.6%ならば毎年180万円が現金化できる。しかし普通の会社員が5000万円まで資産を増やしていくのはなかなか大変だ。資産の額を一般的な投資関係の本で目標となっている3000万円にすると、180万円引き出すには毎年6%の運用利回りを目指すことになる。もちろん、うまくいかない年もあるだろうが、これは実現できない数字ではないだろう。現金化するのは毎月ではなく、年2回のリバランスの時が良いそうだ。

 リバランスと言えば、個別の株式をポートフォリオに組み入れると、リバランスが難しくなる。今のように株価がガンガン上昇している時には、まだ上がるのではと思ってしまい、なかなか売る踏ん切りがつかないのだ。株の売買は依存症になる人もいるほど面白いのだけれど、ポートフォリオは個別銘柄を組み入れず、投資信託とETFで構成した方が良いようだ。

寄付の文化

藤野英人「投資家が『お金』よりも大切にしていること」によれば、アメリカの成人一人当たりの年間寄付金額は約13万円。これに対して日本は2500円だそうだ。「ほとんどの先進国では家計の2~3%くらいの寄附をします。アメリカは3%です。ところが日本人は、家計のたった0.08%しか寄附しないのです」。アメリカでは年収2万5000ドル(240万円)以下の人が年収の4.2%を寄附しており、決して富裕層だけが寄附をしているわけではない。寄付の文化があるのだろう。

募金目標を1億1700万円としているみらいちゃんを救う会には現在、3700万円足らずしか集まっていない。病状は進行しており、時間的な余裕はあまりないそうだ。

宮崎県民が1人100円の寄付をすれば、1億1000万円余りが集まる。子供も含まれているので全員ができるわけではないが、1000円寄付すれば10人分、1万円なら100人分になるという計算はしても良いだろう。寄付は強要するものではないが、みらいちゃんへの支援に限らず、寄付は日常的にするものなのだと思う。アメリカの寄付の多さを見習いたい。

藤野英人はこう書いている。「あえて断言しますが、日本人ほどケチな民族はいません。困っている人のために寄附もしないし、社会にお金を回すための投資もしない。じゃあ、他の先進国の人たちに比べて、公共のためのお金である税金を多く払っているのかといえば、そんなこともない。日本の税率はむしろ低いくらいです」。

2013/03/03(日)「ふがいない僕は空を見た」

 「恋の罪」がR18+なのはよく分かるが、これのどこがR18+なのだろう。これでR18+の判定になるのなら、描写を少しソフトにして高校生でも見られる映画にした方が良かったような気がする。昨年は「ヒミズ」「桐島、部活やめるってよ」と青春映画の傑作があったが、この映画もそれに連なる、そして少しも劣らない厳しい傑作だと思う。キネマ旬報ベストテン7位。

 問題は何も解決しない。しかし、登場人物達は受けたダメージから、厳しすぎる現状から、なんとか立ち上がろうとする。スキャンダルに巻き込まれ、不登校だった主人公は学校に行くようになり、その親友は大学を目指して図書館で辞書をめくる。

 「俺にはとんでもない部分があるから、とんでもなく人に優しくしなくちゃいけないんだ」。

 「バカな恋愛したことないやつなんて、この世にいるんすかねえ」というセリフを吐くみっちゃん先生(梶原阿貴)のがらっパチなたくましさが良く、主人公の母親で助産師の原田美枝子の包容力がいい。