2022/11/27(日)「よだかの片想い」ほか(11月第4週のレビュー)

「よだかの片想い」は顔の左側に大きな青いアザがある女性のラブストーリー。島本理生の原作を城定秀夫が脚本化し、「Dressing UP」(2012年)などの安川有果が監督しました。原作に惚れ込んで映画化を希望していたという松井玲奈が主演を務め、心に響く繊細な演技を見せています。松井玲奈こんなにうまかったのか……。

 大学院生の前田アイコは「顔にアザやけがを負った人」のルポルタージュの取材を受け、その本の表紙にもなったことで、引っ込み思案に生きてきた状況に変化が生まれる。本の映画化の話が進み、出版社に務める友人のまりえ(織田梨沙)の紹介で監督の飛坂逢太(中島歩)と出会う。アイコは飛坂の人柄に惹かれ、恋人関係になるが、飛坂の周囲には他の女の存在があった。

 アイコにとっては遅い初恋。中島歩が二枚目過ぎるので簡単にうまくいくはずはないと思えるのですが、アザに関する心ない言葉に傷つきながらも気丈に生きてきたヒロインだけに幸福になってほしいと思わずにはいられません。アイコはアザにコンプレックスを感じていますが、それ以上に他人から「アザがあってかわいそう」と思われることに耐えられません。自分は「かわいそうじゃない」と思っています。

 松井玲奈の演技とともに感心したのは城定秀夫の脚色のうまさで、100本以上のフィルモグラフィーがある人なのでまったく手慣れています。原作のエッセンスをすくい上げ、ヒロインの思いと変化に焦点を絞って、エピソードを取捨選択し、新たに追加して物語を構成し直しています。

 例えば、アイコが飛坂に初めて会う場面は原作では雑誌の対談となっていますが、映画では友人とともに居酒屋で会う場面に変更され、アイコが惹かれるきっかけになった飛坂のセリフも膨らませてあります。

 飛坂は居酒屋で初対面のアイコの顔を長く見つめてしまい、怪訝な表情をしたアイコにこう説明します。
 「あのー、僕大好きなんですよ、表紙のあの写真。実はあの撮影されていた時に偶然通りかかったんですよ」
 「で、そん時の前田さんの姿がずっと残っていて。強さと恥ずかしさみたいなものが入り交じった表情が葛藤しながらも、堂々と立っていて、きっと頑張っている人なんだろうなって」。
 「その後、偶然本屋で見かけてびっくりして読んでみて、前田さんの語り口が面白くてあっという間に引き込まれて」
 アイコは聞いているうちに感極まって泣き出してしまいます。アイコが飛坂に惹かれたのは、撮影時の自分の気持ちを理解し、「きっと頑張っている人なんだろう」と見抜かれたことが大きいのではないかと思います。

ここは本当に良い場面でYouTubeに本編映像が上がっています。


 飛坂が撮影現場を偶然通りかかったという設定は原作にはなく、これに続く場面も原作とは異なります。

 このほか、アイコの大学のミュウ先輩を演じる藤井美菜とアイコに密かに思いを寄せる後輩の青木柚も気持ちの良い好演でした。飛坂の元恋人の女優役に「猫は逃げた」「シコふんじゃった!」(ドラマ)の手島美優。1時間40分。
 ▼観客2人(公開日の午後)

「ミセス・ハリス、パリへ行く」

 「ポセイドン・アドベンチャー」の作家ポール・ギャリコの小説の映画化。家政婦として働く戦争未亡人のエイダ・ハリス(レスリー・マンヴィル)が働き先でクリスチャン・ディオールのドレスを見て、心を奪われる。500ポンド(パンフレットによると、今の価格で250万円~400万円)もするドレスを手に入れるため、エイダは節約して仕事を増やし、懸賞やドッグレース、亡き夫の年金一時金などでなんとかお金を集め、パリのディオール本店へ行く。威圧的なマネージャーのコルベール(イザベル・ユペール)から追い出されそうになるが、出会った人々に助けられ、夢の実現へ突き進む。

 昔はこういうハートウォーミングなドラマがよくありました。この原作が発表されたのは1958年だそうで、なるほどと思いました。しかし古くさいわけではなく、夢を諦めないエイダの姿勢は現代に通用するもので、観客をしっかり楽しませる佳作になっています。イザベル・ユペールを除いてディオールの人たちは親切な人ばかり。ディオールのPRにもなってるんじゃないですかね。当時のパリの街並みはストライキの影響でゴミだらけ。花の都ならぬゴミの都を再現してるのは芸が細かいです。

 1時間56分。IMDb7.1、メタスコア70点、ロッテントマト94%。
 ▼観客7人(公開7日目の午後)

「ザリガニの鳴くところ」

 ディーリア・オーエンズのベストセラーの映画化。枠組みはミステリーですが、原作は湿地にある家に一人取り残された少女カイアが生き抜いていく姿がメインです。

 原作は高い評価を得ていますが、映画はアメリカでは評論家から酷評されていて、確かにコクや深みに欠ける部分はあります。主演のデイジー・エドガー=ジョーンズの美しさは原作のカイアのイメージ通りで、僕は悪くないと思いました。

 監督のオリヴィア・ニューマンは主にテレビで活躍してきた人。ロッテントマトのユーザー評価は97%で、アメリカでも一般観客からは支持を集めているようです。

 2時間5分。IMDb7.1、メタスコア43点、ロッテントマト34%。
 ▼観客7人(公開4日目の午後)

「手」

 にっかつロマンポルノ50周年を記念した企画「ロマンポルノ・ナウ」の1本で、山崎ナオコーラの芥川賞候補作を松居大悟監督が映画化。脚本は舘そらみ。映画を見た後に原作を読みましたが、これははっきり映画の方が面白かったです。

 主人公のさわ子(福永朱梨)はおじさん趣味で、これまで付き合ってきた男はおじさんばかり。そんな時、転職を決めた同僚の森(金子大地)との距離が縮まっていく。

 福永朱梨は地味な印象ですが、映画が進むに連れて魅力的に見えてきます。ロマンポルノと称するからにはやはり女優が重要なので、起用は正解でした。キネ旬の金子大地とのインタビューによると、絡みのシーンは動作が細かく決まっていて、アクションシーンみたいだったとか。妹リカ役の大渕夏子も良かったです。

 原作は1時間ぐらいで読める分量(読んだのがKindle版だったのでページ数が分かりません)。映画にするには少し足りないので、いろいろと膨らませてあります。原作には高校時代のボーイフレンドは登場しません。1時間39分。
 ▼観客5人(公開5日目の午後)

「の方へ、流れる」

 全国7館で26日から公開中。クラウドファンディングの返礼でオンライン観賞しました。唐田えりかと遠藤雄弥の会話劇です。公式サイトのストーリーを引用すると、「会社を辞め、姉の雑貨店で店番をする主人公・里美。そこに現れた、恋人を待つ男・智徳。店を出て 東京の街を歩きながら語り合うふたり。『お互いのことを知らないから言えることもある』――――やがて彼らは互いに話していることが事実なのか分からないまま、惹かれあっていくのだが……」ということになります。

 復帰作となった唐田えりかの演技は悪くありませんが、脚本にもう少しメリハリと意外な展開が欲しいところ。監督・脚本・編集・プロデューサーは新鋭・竹馬靖具(ちくまやすとも)。エンドクレジットに「よだかの片想い」の安川有果監督の名前がありましたが、何の役なのかは分かりませんでした。1時間2分。

公開初日の舞台あいさつがYouTubeにあります。


 復帰に関して、きついことを言う人もいますが、唐田えりかは負けずに頑張って欲しいと思います。そう思ってるファンはきっと多いです。

 配信プラットフォームはVIMEOでした。Fire TV Sticなどのテレビアプリで見るためにはPCやスマホのブラウザで該当ページにアクセスし、ハートアイコン(いいねボタン)を押せば、テレビアプリにも反映されます。映画のクラウドファンディングはこういうオンライン観賞の返礼をやってくれると、地方のファンは参加しやすいです。劇場招待チケットだと、近くの劇場でやらない場合がありますからね。少額しか寄付できませんが、月に1本ぐらいは協力したいと思ってます。

2022/11/20(日)「ある男」ほか(11月第3週のレビュー)

 「ある男」は平野啓一郎の原作を石川慶監督が映画化。脚色は「愚行録」(2017年)でも組んだ向井康介。原作を200ページ余り読んだところで見ました。

 序盤、宮崎県内のある町(原作では西都市がモデルのS市)に離婚して帰郷し、母親とともに文房具店を営む里枝(安藤サクラ)と、町にやってきて林業会社に勤める谷口大祐(窪田正孝)が出会い、結婚するまでが原作以上に丁寧に描かれます。前作「Arc アーク」は失敗に終わりましたが、石川慶の描写の力は「LOVE LIFE」の深田晃司並みに充実しており、安藤サクラと窪田正孝の並外れた演技と相まって序盤は100点満点の出来。

 数年後、大祐は伐採中に倒木の下敷きとなって死亡しますが、焼香に来た兄(眞島秀和)は遺影を見て「これは大祐じゃない」と里枝に告げます。それでは夫は誰だったのか。普通のミステリーなら、松本清張「ゼロの焦点」のように妻が夫の過去を調べることになるのでしょうが、この作品は里枝の依頼を受けた弁護士の城戸(妻夫木聡)が主人公となり、里枝の夫がなぜ谷口大祐を名乗っていたのか、本当の大祐はどうなったのかを探ることになります。

 城戸は在日三世。既に日本国籍を取得していますが、妻(真木よう子)との結婚時に妻の両親から必ずしも歓迎されたわけではないなど差別を身近に感じています。折しも世間では外国人に対するヘイトデモが物議を醸しています。映画は出自に基づく差別をテーマにしていて、出自を変えて生きてきた里枝の夫と絡めてそれが描かれていきます。

 調査を終えた城戸は里枝と結婚していた3年9カ月が夫にとって初めて幸福を知った時だったと思うと報告します。映画のラストは原作の中盤にある酒場での城戸のエピソードになっていますが、これはやはり原作通り、里枝が自分にとってもあの3年9カ月が幸福だったと述懐する場面で終わった方がテーマに沿っていたのではないかと思いました。

 向井康介はこの点について「あれで終わるということは、城戸が自分探しの迷宮に永遠にはまっていく感覚を大事にしたということです」とインタビューで説明しています。

 里枝が住んでいるのは宮崎県内の町というだけで具体的な地名は出てきません。地元の人たちが話す宮崎弁に違和感はありませんでしたが、風景はモデルとなった西都市とは異なります。エンドクレジットのロケーション協力に県内の自治体も企業もないのでロケはしていないのでしょう。1台だけですが、車が宮崎ナンバーであったり、役所にさりげなく「花旅みやざき」のポスターが張ってあるなど細かな配慮はなされていました。

 2時間1分。IMDb7.1。
 ▼観客50人ぐらい(公開日の午前)

「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」

 小さな広告代理店の社員全員が同じ1週間を繰り返すタイムループもの。繰り返しに気付いた社員が永久部長(マキタスポーツ)に原因があることを突き止め、他の社員に順次教えてループを抜けようとするというストーリー。

 前半は普通のタイムループであまり目新しい部分はありませんが、後半、大きな広告代理店への転職を考えている主人公の吉川朱海(円井わん)ら社員たちがチームプレイで団結し、一つの目標に向かって突き進む姿は感動的ですらあります。このあたり、他の仕事でも同様と思えますし、職場にループを設定したのもこうした部分を描くためなのでしょう。おかしくて、よくできた小品で好感度が高いです。

 ただし、ループの理由に説得力がありません。部長が時を進めたくない理由は分かるんですが、ループを引き起こす力の源になるものがありません。いや、最初はあったのに、それが間違いと分かり、なくなってしまいます。うーん、別のものを設定すれば良かったのに、なぜしなかったんだろう?

 企画・監督・脚本・編集は「14歳の栞」(2021年)の竹林亮。1時間22分。
 ▼観客10人(公開日の午後)

「人質 韓国トップスター誘拐事件」

 俳優ファン・ジョンミンが誘拐された自身の役を演じるサスペンス。中国映画「誘拐捜査」(2015年、ディン・シェン監督。日本では劇場未公開、WOWOW放映)のリメイクで長編監督デビューのピル・カムソンがメガホンを取りました。

 オリジナルの「誘拐捜査」(IMDb6.6)は実際に起きた俳優ウー・ルオプーの誘拐事件をモデルにした映画でアンディ・ラウが主演。IMDbによると、実際の事件が起きたのは2004年。ウーは北京のバーの外で警察の制服を着た3人の人物に誘拐されました。誘拐犯はウーが俳優であることを知らず、高級車を運転していたことが誘拐の理由でした。20時間以上の監禁の後、警察がウーを救助したため、誘拐犯は身代金を受け取ることはできなかったそうです。ウーは「誘拐捜査」に出演していて、警察官役を演じているとのこと。

 「人質」は俳優が誘拐されたという設定だけを借りて自由に創作した感じです。ファン・ジョンミンがファン・ジョンミンを演じることにはあまり必要性を感じませんが、映画自体はコンパクトな上映時間の中でサスペンスとアクションを詰め込んで飽きさせない展開になっています。ジョンミンはユーモアからシリアスまで芸の幅が広いので、いつものように好感の持てる演技を見せてます。誘拐グループの残虐なボスを演じるのはキム・ジェボム。サイコ野郎かと思えるような残虐性は韓国映画によくありますね。

 1時間34分。IMDb6.3。
 ▼観客6人(公開12日目の午後)

「西部戦線異状なし」(2022年)

 エーリヒ・マリア・レマルク原作の3度目の映画化で、Netflixオリジナル作品。1930年版はアメリカ映画(ルイス・マイルストン監督、アカデミー作品・監督賞)、1979年版はイギリスのテレビ映画(デルバート・マン監督、ゴールデングローブ作品賞)で、今回が初めてのドイツ映画となります。

 トロント映画祭などで上映されましたが、劇場では限定的な公開で、ドイツ本国でも劇場公開されていません。にもかかわらず、来年のアカデミー賞国際長編映画賞のドイツ代表作品に選出されたそうです。

 第一次大戦の西部戦線では300万人が戦死しました。映画で描かれるのは塹壕戦でバタバタ死んでいく兵士たちと、戦場の無残・悲惨な実態を知らない上層部の姿。その意味で強い反戦テーマを備えた作品だと思います。

 塹壕から身を乗り出してチョウに手を伸ばした主人公が撃たれる1930年版のラストは有名ですが、今回は休戦協定の発効直前に上官が無意味な出撃を命じ、主人公は塹壕で敵兵と泥だらけになりながら戦って死んでいきます。

 エドワード・ベルガー監督、2時間28分。IMDb7.9、メタスコア76点、ロッテントマト92%。

2022/11/06(日)「時代革命」ほか(11月第1週のレビュー)

 「時代革命」は2019年、逃亡犯条例の改定を巡って大規模デモが起きた香港の半年間を描くドキュメンタリー。見ていて沸々と怒りがこみ上げてくる映画です。香港政府と背後にいる中国当局は徹底した暴力で市民運動を封じ込めようとします。この映画は民主化要求運動の敗北の記録ですが、同時に中国政府による残虐な暴力と激しい弾圧の記録になっています。

 デモへの警察の暴力が徐々に激しくなるのはウクライナの公民権運動を描いたドキュメンタリー「ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い」(2015年、エフゲニー・アフィネフスキー監督)でも同じでした。警棒や鉄の棒による滅多打ちから催涙弾、実弾による銃撃と警察の暴力はエスカレートしていきます。映画の中では警官が近くにいた若い男性を撃つシーンも撮影されています。デモ参加者を容赦なく滅多打ちにする白シャツ集団のニュースは日本のテレビでも流れましたが、この集団は警察に雇われたマフィアと言われています。

 100万人も200万人もデモ参加者がいるのなら、こうした暴力に抵抗することもできそうに思えますが、デモの参加者は非暴力の市民が多く、対抗できる武器を持っていません。そうした弱い市民に対する一方的な暴力は近代国家として恥ずべき行為以外の何ものでもありません。

 タイトルは運動のスローガンとなった「光復香港、時代革命」(香港を取り戻せ、革命の時だ)に由来するそうです。デモ後の2020年6月に制定された国家安全維持法により、この言葉は「香港独立」を意味するものとして法律違反となり、このスローガンを唱えたり、印刷物を所持しているだけで逮捕されます。ですから、この映画は中国では上映できません。

 住民の言動を制限する制度が出来上がってしまった以上、香港の人たちだけで現状を変えていくことは難しいと思えます。しかし、今も苦しんでいる香港の人たちに「香港人、加油!」と言わずにはいられない気持ちになります。

 公式サイトとパンフレットには「自由とアイデンティティーをめぐる、絶望と希望の物語。スクリーンでしか観られない、衝撃の158分」とありますが、IMDbやKinenoteなどでは上映時間は152分。エンドクレジットの後にキウィ・チョウ監督の日本での公開に関するメッセージがあり、これを含めて158分なのでしょうか。
IMDb8.7、ロッテントマトユーザー93%(アメリカでは限定公開)。
▼観客1人(公開2日目の午後)

「犯罪都市 THE ROUNDUP」

 「犯罪都市」(2017年、カン・ユンソン監督)の5年ぶりの続編。主演のマ・ドンソクをはじめ衿川(クムチョン)署強力班の面々など登場人物は共通していますが、話は独立していて前作を見ていなくても支障ありません(見ていた方が笑いどころはよく分かります。前作はNetflix、Hulu、U-NEXTで見放題配信中)。

 「逃亡した容疑者を引き取るためにベトナムへ赴いた刑事が、残忍な犯罪を繰り返す男を相手に壮絶なバトルを繰り広げる」という物語ですが、話のパターンは前作を踏襲していて、というかほぼ同じパターンの話です。前作では凶暴な犯人が斧を振るいましたが、今回はナタを振るいます。凶器が拳銃ではなく、ナイフなどの刃物がほとんどなのはメインのアクションがマ・ドンソクの肉弾戦だからでしょう。

 このアクションを構成したのは前作に続いて武術監督のホ・ミョンヘン。相手を強力なパンチで吹っ飛ばすだけでなく、狭いバスの中での豪快な投げなどさまざまなバリエーションが工夫されています。マ・ドンソクのターミネーター並みの強さ・頑丈さは痛快さを生み、笑いの場面も全編に散りばめられた一級の娯楽作品。監督はイ・サンヨンに代わりましたが、内容的には前作を上回っていて、韓国で観客動員1200万人を記録したのも納得できます。

 今週見た他の3本の映画はいずれも2時間半前後の作品で、この映画の上映時間1時間46分は実に好ましく感じました。このシリーズ、8作ぐらい作る計画があり、日本でもリメイクが予定されているそうです。「西部警察」など日本の刑事アクションに似たタッチなので本来ならリメイクも大丈夫そうですが、誰がマ・ドンソク役をやるかが大きな問題ですね。代わりはいないと思うんだけど。
IMDb7.1、ロッテントマト96%(アメリカでは限定公開)。
▼観客8人(公開2日目の午後)

「窓辺にて」

 今泉力哉監督がオリジナル脚本で描くドラマ。編集者をしている妻・紗衣(中村ゆり)が若い作家・荒川(佐々木詩音)と浮気しているのを知って、何のショックもなかったことにショックを感じている元作家でフリーライターの夫・市川茂巳を稲垣吾郎が好演しています。

 全編会話劇なのでホン・サンス監督の作品を連想しましたが、パンフレットで映画評論家の石津文子さんも「どこか韓国のホン・サンスの映画を彷彿する」と書いてました。まあ、そうでしょう。どういう話か知らずに映画を見ていると、登場人物の会話から徐々に状況がのみ込めてきます。

 市川は友人の有坂(若葉竜也)・ゆきの(志田未来)夫婦に相談しますが、ゆきのは怒って市川を追い返します。実は有坂はモデルの藤沢(穂志もえか)と浮気しており、ゆきのはそれに気づいていることが分かります。その相談に今度はゆきのが市川の家を訪ねるという展開が微妙におかしくて良いです。

 全編のハイライトは浮気に気づいていることを市川が紗衣に話すワンカットのシーン。緊張感があり、今泉力哉監督の会話のうまさが光った名場面だと思いました。ただ、この題材なら1時間30分前後にまとめるのが望ましく、2時間23分はちょっと長く感じます。ポイントを絞り込むのなら、高校生作家を演じる玉城ティナのパートをもっと簡潔に描けた気がします。

 いずれも魅力的な女優陣(今泉監督はホントに女優を美しく魅力的に撮りますね)の中では、中村ゆりと並んで、出番は少ないものの、穂志もえかが良いです。もっと映画に出て欲しいです。
▼観客3人(公開日の午前)

「天間荘の三姉妹」

 高橋ツトムのコミック「天間荘の三姉妹 スカイハイ」を北村龍平監督が映画化。天上界と地上の間にある三ツ瀬の旅館「天間荘」を舞台に描くファンタジーです。

 のんにとっては「Ribbon」「さかなのこ」に続く今年3本目の主演映画。主人公のたまえは交通事故で臨死状態になり、死んで天へと旅立つか、生き返るかを決めるまで天間荘で過ごすことになります。そこには腹違いの姉2人、のぞみ(大島優子)とかなえ(門脇麦)、その母親(寺島しのぶ)がいて、たまえは旅館を手伝い始めます。たまえはそこでさまざまな人と出会い、家族の温かさを初めて知ることになる、という物語。

 のぞみ、かなえ、たまえというと「欽ちゃんのどこまでやるの」(テレ朝、1976年~1986年)のわらべを思い出しますが、原作者は1965年生まれなのでわらべを当然知っているでしょう。

 この作品も2時間30分という上映時間の長さが大きなマイナス。終盤盛り返し、感動的な展開になるだけに、中盤までの冗長な描写が惜しいです。
▼観客10人(公開6日目の午後)

2022/10/30(日)「線は、僕を描く」ほか(10月第5週のレビュー)

 「線は、僕を描く」は「ちはやふる」三部作の小泉徳宏監督が砥上裕將の原作を映画化。「ちはやふる」が優れた青春映画だったように、この映画もまた水墨画に打ち込む若者を描いた青春映画として非常にうまくまとまっています。

 カラフルだった「ちはやふる」のタイトルバックとは対照的に白地に墨字のシンプルなタイトル。大学生の青山霜介(横浜流星)はアルバイトの展示会場設営で水墨画と出会い、その美しさに魅了される。水墨画の巨匠・篠田湖山(三浦友和)から声をかけられ、霜介は水墨画を学び始める。心に深い傷を負った過去を持つ霜介は湖山の孫娘・千瑛(清原果耶)、弟子の西濱湖峰(江口洋介)とともに水墨画に打ち込み、再生を果たしていく。

 霜介が水墨画に出会って喜び、悩み、立ち止まり、歩き出す姿を描いているからこそ、これは優れた青春映画なわけです。原作は「青春芸術小説」と銘打っていますが、映画は「芸術」の部分を減らして「青春」に注力したことが良かったと思います。

 霜介と同じ大学に通い、水墨画クラブを立ち上げる友人役を河合優実と細田佳央太が演じていますが、小泉監督はこうした若い役者の魅力を引き出すのがうまいです。

 清原果耶は水墨画の筆を持つ姿勢やたたずまいから清楚さが漂い、極めて好印象。初めて見た水墨画の前で涙を流す横浜流星とともに純粋さとすがすがしさを感じさせます。この二人がお互いに相手の絵が好きだと言うのは「荒野の決闘」(1946年、ジョン・フォード監督)でワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)がクレメンタインに言うセリフ「私はクレメンタインという名前が大好きです」と同じ意味合いなのでしょう。

 「ちはやふる」と同じく横山克の音楽が素晴らしく効果を上げています。
 ▼観客13人(公開4日目の午後)

「秘密の森の、その向こう」

 見ながら童話みたいな話だなと思っていました。「燃ゆる女の肖像」「トムボーイ」のセリーヌ・シアマ監督なので見る前はジェンダーや同性愛に絡んだ話かと想像しましたが、全然違って子供向け、特に女の子向けのファンタジーですね。

 監督自身、インタビューで「映画制作のあらゆる段階で、子供の観客を念頭に置いていました」と話しています。72分という上映時間の短さも子供が見ることを想定したからでしょう。念のために上映時間を調べてみると、デビュー作の「水の中のつぼみ」(2007年)85分、「トムボーイ」(2011年)82分、「ガールフッド」(2014年)112分、「燃ゆる女の肖像」(2019年)が一番長くて122分でした。

 8歳の主人公ネリーが森の中で8歳の頃のママであるマリオンに出会うというストーリーはそこからそれほど発展するわけではありません。一緒に遊んだり、食事したりするだけ。8歳のママに会うというシチュエーションを思いついたことが映画作りの発端だそうで、テーマありきの作品ではないです。ただ、母親の側から見ると、これけっこうなSFだと思いました。31歳の母親にとっては23年前の出来事で、まだ生まれていない自分の娘に会ったことを完全に覚えているはずです。

 監督は宮崎駿の影響を受けていて、制作過程で行き詰まった時は「宮崎駿ならどうする?」と考えたそうです。だから話の発展のさせ方もジブリ作品を参考にしたのだとか。具体的にこの映画に影響した作品は「となりのトトロ」(1988年)、細田守監督「おおかみこどもの雨と雪」(2012年)、ロバート・ゼメキス監督「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)、トム・ハンクス主演「ビッグ」(1988年)だそうです。

 シアマ監督は「ぼくの名前はズッキーニ」(2016年)というストップモーションアニメの脚本を書いています。これと「トムボーイ」は子供が主人公でありながら、テーマ的に重たいものを含んでいます。「燃ゆる女の肖像」には「秘密の森の、その向こう」ほどではありませんが、ファンタジー的な要素が含まれていました。

 僕らは映画監督に対して一面的なレッテルを貼りがちですが、そう単純ではなく、いろんな考え・主義主張・嗜好から成り立っているのだということをあらためて痛感させる映画でした。
 IMDb7.4、メタスコア93点、ロッテントマト97%。
 ▼観客5人(公開5日目の午後)

「千夜、一夜」

 佐渡島を舞台に30年前に失踪した夫を待ち続ける妻(田中裕子)を描くドラマで、監督は「家路」(2014年)でも田中裕子と組んだ久保田直。

 基本設定に引っかかります。親や子供など肉親なら何年たっても待つしかないわけですが、夫婦の片方が失踪してそんなに何年も待ち続けるものなのか。30年たっても帰ってこないなら、50年たっても60年たっても帰ってこないでしょう。

 2年前に夫(安藤政信)が失踪した尾野真千子は求められて同僚の男(山中崇)と付き合うようになりますが、それが自然。田中裕子にしても言い寄ってくるのが甲斐性なしのダンカンじゃなかったら再婚していたかもしれません。周囲がダンカンを勧めてくるのが非常にうざいのはよく分かります。

 田中裕子の演技は良いですが、特別に持ち上げるほどではありません。最も見応えがあったのは離婚して再スタートを切ろうとしていた尾野真千子と、そこに帰ってきた安藤政信との修羅場でした。尾野真千子の怒りの演技、さすがです。
 ▼観客8人(公開日の午前)

「ONE PIECE FILM RED」

 ようやく見ました。23日現在で興収173億6000万円を上げ、歴代9位にランクイン。「トップガン マーヴェリック」が133億円なので、大差を付けて今年トップの興収になる公算が大きいです(11月11日公開の「すずめの戸締まり」も大ヒット間違いなしでしょうが、2カ月足らずでこれを抜くのは難しいかも)。

 このシリーズのこれまでの最高は「ONE PIECE FILM Z」(2012年)で68億4000万円。歴代興収トップ100にも入っていません。「FILM RED」はなぜこんなにヒットしたのか詳しい分析が欲しいところですが、素人目にも分かるのはオープニングの「新時代」(中田ヤスタカ作詞・作曲)をはじめパワフルなAdoの歌の力が一つの要因であること。これがあるから普段「ワンピース」を見ない人も劇場に呼べたことは間違いないと思います。

 映画は東映のマークが出た途端、明らかに音響の違いが分かりました。音響にはドルビーアトモス方式を採用していて、これに対応していない劇場でも一定の効果を上げているのだと思います(単に音量を大きくしただけかもしれません)。

 内容的にはAdoのMVみたいという批判もあるようですが、僕はもっとAdoの歌を増やしても良いぐらいと思いました。ただ、歌とストーリーの融合はイマイチうまく行っていない印象。クライマックスの戦闘シーンの描き方もうまくありません。物語自体は悪くないんですが、なんというか、映像化する時点で画面構成の整理がついていないんじゃないですかね。監督は「コードギアス」シリーズの谷口悟朗。
 IMDb7.1、ロッテントマト100%(アメリカでは11月4日公開)。
 ▼観客6人(公開82日目の午後)

「シコふんじゃった!」

 映画「シコふんじゃった。」(1991年、周防正行監督、キネ旬ベストテン1位)の30年後を描くドラマ。ディズニープラスで始まりました。全10話のうち2話まで配信されていますが、予想を大きく上回る面白さです。爆笑を誘う展開ながら、きちんとスポーツ青春ドラマになってます。

 100年以上の伝統を持つ教立大学相撲部は女子部員一人だけとなり、またもや廃部寸前。そこに卒業単位を交換条件に主人公・森山亮太(葉山奨之)が入部し、OBらと協力して相撲部を立て直していくというストーリー。

 なんといっても女子部員・大庭穂香を演じる伊原六花が素晴らしすぎます。足がピンと伸びた四股がきれいですし、股割りも完璧。身体が柔軟なのは4歳から習ったバレエの成果なのでしょうが、同時に高校時代にダンス部キャプテンを務めた経験から意志の強さと責任感の強さを感じさせる眼差しを持っています。青森弁で「わぁは2年のぉ大庭穂香です」と自己紹介しますが、「いとみち」(2021年、横浜聡子監督)の駒井蓮もそうだったように、若い女性が「わぁ」と自称するのは好感度が高いです。

 本木雅弘は出ないようですが、清水美砂は大学の教授で相撲部監督役。竹中直人も2話から登場しました。このほか映画と同じ役で田口浩正、六平直政、柄本明(まだ写真だけ)が出演。周防正行は原作・総監督でクレジットされています。

 1、2話の監督は周防監督の「カツベン!」(2019年)で脚本と監督補を務めた片島章三。助監督歴が長く、監督作としては「ハッピーウエディング」(2015年)がありますが、不評だったあの映画の悪いイメージを払拭する確かな演出だと思います。

2022/10/23(日)「RRR」ほか(10月第4週のレビュー)

「RRR」は「バーフバリ」のS・S・ラージャマウリ監督作品で、インド映画最大の7200万ドル(1ドル150円だと108億円)の製作費をかけた超大作。途中で「インターバル」の字幕が出ますが、休憩時間はありませんでした。2時間58分なので休憩なくてもまあ大丈夫でしょう。

長さは感じませんでしたが、個人的には時間を忘れるほど面白かったわけでもなく、前半はそれなりの面白さ。後半がすごいのはエモーション(主に怒り)全開の爆発状態になるからで、アクションにはやっぱり裏付けとなるエモーションが必要なわけです。前半にも少女を英国人に連れ去られた怒りはありますが、後半明らかになる怒りの大きさにはとてもかないません。

1920年、インドはまだイギリスの植民地で、人権を無視した英国人たちによる横暴な行為がまかり通っていた。英国人の総督スコット・バクストン(レイ・スティーヴンソン)の妻キャサリン(アリソン・ドゥーディ)はゴーンド族の村で幼い娘マッリを気に入り、強引にデリーの公邸に連れ去ってしまう。一方、デリー郊外では反英活動家の釈放を求めて群衆が警察署を取り囲んでいた。インド人の警察官ラーマ(ラーム・チャラン)は1人で群衆のリーダーを逮捕したが、上司からは功績を認められなかった。ゴーンド族のリーダー、ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア、パンフレットの表記はNTR JR.)はマッリを奪還するため、仲間と計画を練っていた。やがてラーマとビームは運命的な出会いを果たす。

ラーマがなぜ、英国人の手先になっているのかは後半に分かり、ビームはラーマの危機を救って英国軍と戦うことになります。インド映画らしく歌と踊りも魅力的。ラージャマウリ監督の作品には良い意味での楽天的なところがあり、明るく終わるのが好感度高いです。

パンフレットによると、主人公2人のモデルは実在の人物で独立運動の英雄だそうですが、実際に2人が出会うことはなかったとか。「RRR」の意味は映画の企画が当初、監督と主役2人の名前にある「R」を3つ重ねた仮タイトルでスタートしたことに由来。英語では蜂起(Rise)、咆哮(Roar)、反乱(Revolt)の頭文字ということになっています。

この内容だとイギリスではあまりヒットしないのではと余計な心配をしてしまいますが、日本人が悪役の「ドラゴン怒りの鉄拳」(1971年、ブルース・リー主演、ロー・ウェイ監督)は日本でヒットしましたね。
IMDb8.0、メタスコア83点、ロッテントマト92%。
▼観客3人(公開日午前)←平日初回とはいえ、いくらなんでも少なすぎ。映画の力がないのではなく、映画館の営業努力が足りないのでは。

「セイント・フランシス」

34歳の独身女性ブリジットを主人公に、生理、妊娠、中絶、子育て、同性婚、人種差別など多くの女性の問題を、ユーモアを交えて描いたドラマ。長編映画の脚本を初めて書いたケリー・オサリヴァンが主演も務め、監督デビューのアレックス・トンプソンが手堅くまとめています。タイトルの「フランシス」はブリジットがナニー(子守り)を務める6歳の女の子の名前。

パーティーで26歳のジェイス(マックス・リプシッツ)と出会い、意気投合したブリジットは一夜をともにすることに。その後の性交渉でも避妊していなかった(膣外射精だけ)ため妊娠しますが、産むつもりはありません。妊娠初期だったので、医師から処方された中絶薬を自宅で服用し、豆粒のような胎児(かどうかは、はっきりしません)が排出されたのを確認します。

レストランのウエイトレスとして働くブリジットは子守りの募集を見つけて、マヤ(チャリン・アルヴァレス)とアニー(リリー・モジェク)のレズビアンカップルの子供フランシス(ラモーナ・エディス・ウィリアムズ)の子守りを務め、さまざまな出来事に直面します。

僕以外の観客はすべて女性でした。やはり女性の方が共感できる部分の多い映画だと思います。
中絶薬は日本では未承認ですが、最近の映画では「海辺の彼女たち」(2020年、藤元明緒監督)で、技能実習生として来日したベトナム人女性が闇医者から手に入れて使うシーンがありました。
IMDb7.1、メタスコア83点、ロッテントマト99%。
▼観客5人(公開6日目の午後)

「バッドガイズ」

ドリームワークスの3DCGアニメ。内容的に悪いところはないんですが、平凡としか言いようがないレベル。日本では褒めてる人がいるのが不思議で、アメリカではIMDb6.8、メタスコア64点、ロッテントマト88%と決して良くはありません。

3DCGのアニメの技術は水準で、話もそれなりにまとまっていますが、それだけのこと。メッセージは当たり前のことでしかなく、新しい部分は皆無。怪盗集団バッドガイズのメンバーなど登場人物の一部だけが動物キャラであることの説明もありません。

予告編で流れたビリー・アイリッシュの大ヒット曲「バッド・ガイ」は本編では流れませんでした。
▼観客11人(公開14日目の午後)

「もっと超越した所へ。」

劇作家・演出家の根本宗子の同名舞台作品を根本自身が映画用に脚色し、山岸聖太(さんた)が監督。いずれもクズ男と付き合っている4人の女性を描き、男女の本音とリアルな様相が面白いです。中盤で意外な事実が明らかになり、終盤に向かって勢いと緊張感を増すドラマ構成も見事。問題は最終盤の演出で、舞台もこのままだったかどうかは知りませんが、ここが評価の分かれ目と思いました。

もっと映画的な工夫があれば良かったのに、惜しいです。見ていて今村昌平「人間蒸発」(1967年、キネ旬ベストテン2位)を思い出しました。あの傑作映画のクライマックスがドキュメンタリー世界を一瞬にしてフィクションに変貌させる衝撃を備えていたのに比べると、この映画の場合は舞台の(斬新な)手法以上のものではありません。

クズ男と言いますが、前田敦子、趣里、伊藤万理華、黒川芽以の4人が演じるのも相当なダメ女ではあり、そういう「割れ鍋に綴じ蓋」的関係が案外男女関係の真実を突いていたりします。

4組の中では黒川芽以が演じたシングルマザーの風俗嬢・北川七瀬が男にとっては最高の女性でしょう。なじみの客で売れない役者の飯島慎太郎(三浦貴大)がエキストラとして出ている作品を見て
「見たよ、すごいよかったよ、慎太郎が一番面白い役者だったよ」
と本心から言う七瀬。客観的評価と主観的評価が異なるのはつまりその相手への思いを表しているわけで、特別だから好きなのではなく、好きだから特別に見えるということです。
「旦那がいるって聞いた時すげーショックなくらい好きだったよ」
そう言う慎太郎と七瀬のカップルが個人的には最も幸せになってほしいと思えた2人でした。物語上の大きな仕掛けよりも、こうした細かな描写の方が観客の心をつかむんじゃないかと思います。
▼観客3人(公開4日目の午後)

「血ぃともだち」

押井守監督の実写映画で唐田えりか主演。Huluで配信されていたので見ました。高校の献血部(!)の女子生徒たちが人間を襲えない落ちこぼれ吸血鬼の少女に出会い、自分たちの血で世話をするという話。映画の実験レーベル「シネマラボ」の1本で、低予算であることを考えれば、悪くはない出来でした。

お蔵入り寸前だったのが今年2月に1日だけ劇場公開されたのだとか。唐田えりかの名前で客は呼べないでしょうけど、NiziUのニナ(牧野仁菜、NINA)がヴァンパイア役なのでそれなりに需要はあるんじゃないでしょうか。配信は19日からだったようで、amazonなどでは有料で見られます。

【amazon】「血ぃともだち」 Prime Video