2023/05/07(日)「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」ほか(5月第1週のレビュー)
公開までストーリーが伏せられていましたが、今回はガーディアンズのメンバーでアライグマのロケットをフィーチャーした内容。なぜアライグマが言葉を話せるのか、ロケットという名前の由来まで含めてその過去が詳細に描かれ、現在の話につながってきます。
これまでの凶暴な振る舞いからは想像できませんが、ロケットはなかなかに厳しくかわいそうな身の上でした。冒頭、檻の中にいる多数のアライグマの子供のうち1匹が人の手によって取り上げられる場面があり、それがロケットだと分かります。ロケットは天才的な遺伝学者ハイ・エボリューショナリー(チュークディ・イウジ。チャック・イウジの表記もあり)に改造され、言葉をしゃべれるようになったわけです。
ハイ・エボリューショナリーはカウンターアースという完全社会の構築を目指しており、ロケットは擬人化の改造を施した実験動物の中で唯一の成功例でした。逃走したロケットを取り戻すため、ハイ・エボリューショナリーは超能力を持つアダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)にガーディアンズの本部を急襲させます。その戦闘中にロケットは瀕死の重傷を負ってしまいます。治療しようとすると、技術漏洩防止のキルスイッチが入って治療ができず、ガーディアンズは装置を解除するチップを手に入れるため、ハイ・エボリューショナリーの本部に行く、という展開。
元々はロケットと樹木型ヒューマノイド・グルートのスピンオフとして企画された内容だったそうです。グルートとネビュラ(カレン・ギラン)がこれまで見せなかった能力を発揮するほか、相変わらずおかしいドラックス(デイヴ・バウティスタ)と天然系エスパーのマンティス(ポム・クレメンティエフ)にもそれぞれ見せ場が用意されています。
分かりにくいのは死んだはずのガモーラ(ゾーイ・サルダナ)が再登場すること(映画の序盤、クイルはガモーラの死を悲しんで飲んだくれてます)。ガモーラは「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(2018年)で養父のサノスによってソウルストーンを手に入れるための犠牲にされました。今回、登場するのはガーディアンズに参加する前の、「アベンジャーズ エンドゲーム」(2019年)でサノスとともに登場した2014年のガモーラということになっています。「エンドゲーム」では行方不明になっていました。
エンド・クレジットの後に「スター・ロードは帰ってくる」と字幕が出ますが、ジェームズ・ガン監督はマーベルのライバルであるDCスタジオの共同会長兼CEOになったため、今後このシリーズを監督するのは難しいでしょう。ゾーイ・サルダナとデイヴ・バウティスタもシリーズからの離脱を表明しているそうです。2時間30分。
IMDb8.4、メタスコア65点、ロッテントマト81%。
▼観客多数(公開初日の午前)
「銀河鉄道の父」
宮沢賢治の父・政次郎を描いた門井慶喜の直木賞受賞作を成島出監督が映画化。政次郎を役所広司、賢治を菅田将暉、その妹トシを森七菜が演じています。ラスト近く、政次郎が結核で死の床にある賢治の前で「雨ニモマケズ」を音読する場面が素晴らしいのですが、全体としてはエピソードの羅列でドラマの焦点を絞り込めていない印象を受けました。やっぱり父親よりも賢治本人の方が魅力的なんですよね。2時間8分。
ネットのレビューを読むと、「宮沢賢治をよく知らない」と書いている人が何人もいて驚きます。個人的には中学生のころだったかに読んだ「グスコーブドリの伝記」に感銘を受けました。宮沢賢治と言えば、「風の又三郎」よりも「銀河鉄道の夜」よりもこの作品の印象が強いです。
▼観客多数(公開初日の午前)
「マッシブ・タレント」
「ザ・ロック」や「リービング・ラスベガス」などの大作・傑作に出演した大スターなのに、近年はB・C級映画でも何でも出ているニコラス・ケイジがその現実を織り交ぜながら描いたコメディ・アクション。設定は面白いんですが、笑いのセンスがイマイチ。ニコラス・ケイジの主演作としては昨年公開の「PIG ピッグ」の方が良い出来だと思いました。トム・ゴーミカン監督、1時間47分。IMDb7.0、メタスコア66点、ロッテントマト87%。
▼観客13人(公開4日目の午後)