2001/03/21(水)「プルーフ・オブ・ライフ」
南米の某国でアメリカの技術者(デヴィッド・モース)が反政府ゲリラから誘拐される。その妻メグ・ライアンとプロの交渉人ラッセル・クロウが誘拐交渉に当たる。クロウは会社から派遣されたのだが、会社は保険料を払っていなかったことが分かり、途中で帰国。しかし、再び戻り、仲間とともにゲリラの本拠地を襲撃。見事、夫を救い出す。
いったん交渉をやめたクロウがなぜ帰ってくるのか、あいまいである。メグ・ライアンに同情したのだろうが、これは人間的には納得してもプロとしてはあるまじき行為だろう。そういう男が優秀な交渉人であるはずはない。プロはビジネスで動くのが本筋。この誘拐交渉に成功してもなんら報酬はないのに命をかけますか。
物語の根幹にかかわる部分だけに気になる。こんなことなら途中で帰国する設定などない方が良かった。人道的な理由からであるなら、もっとそこを重点的に描く必要があった。テイラー・ハックフォード、何をやっておるのか。
導入部のチェチェンでのスピーディーな展開を見て、期待できるかと思ったが、全体的にどうも演出が緩い。クロウと息子との場面など後に少しも生きてこず、不要である。メグ・ライアンとラッセル・クロウはいいんですけどね。
2001/03/19(月)「サトラレ」
「踊る大捜査線 The Movie」の本広克行監督の快作。周囲に思念波を放射するサトラレの青年(安藤政信)とそれを保護する特能保全委員会から派遣された精神科医(鈴木京香)の交流がスラップスティック調を交えながらさわやかに描かれる。
冒頭の飛行機墜落→自衛隊出動→サトラレ発見の場面は導入部として優れた迫力とスピード感(SFXは白組が担当)。周囲の人間も協力し、24時間の厳戒態勢でサトラレが保護されているという突飛な設定を無理なく嫌みなく描いている。鈴木京香は主人公より年上の設定を逆手にとって(初対面の主人公から「けっこう年いってるな」と思念を放射されて、ムッとする)、コミカルな味を見せ、好感が持てる。安藤政信も「バトル・ロワイアル」とは打って変わって素直な好青年を演じている。
物語は医者としての主人公の生き方をクライマックスに持ってくる。一般的にはこれが当然だろうが、SFとしては肝心のサトラレの能力があまり生かされないし、クライマックスのくどさにはちょっと辟易させられる。しかし、全体としてはよく出来ているといっていい。本広克行は昨年の「スペーストラベラーズ」の汚名を返上したようだ。エンタテインメントに徹した姿勢がいい。
2001/03/15(木)「スナッチ」
ガイ・リッチーの前作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」は見ていないが、映画のタッチは同じようなものらしい。ロンドンを舞台にしたダイヤモンドを巡る争奪戦。主要登場人物だけで14人もいる。それを細かいカット割りと編集でスピーディーに描写していく。いちおう主人公はいるが、狂言回し的役柄であまり大きな比重は置かれていない。
この編集はさてはと思ったら、やはりガイ・リッチー、CMとミュージック・ビデオの監督の経験がある。短いカットをポンポン入れていくのがいかにもミュージック・ビデオ風である。登場人物のキャラと行動がどれもおかしく、楽しく見させてもらったが、内容もミュージック・ビデオそのままに軽く、印象が薄くなる。利点と欠点が同居している作風である。
役者はブラッド・ピットを除くと、地味なメンバー。ブラッド・ピットが薄汚れた感じのボクサー(発音が悪く、言葉がよく聞き取れないというキャラ)を演じており、「ファイト・クラブ」を彷彿させる。
2001/03/11(日)「ワンピース ねじまき島の冒険」
ビデオクリップのような「ジャンゴのダンスカーニバル」、昨年春の劇場版の続編「デジモン・アドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲」との3本立て。もちろんメインは「ワンピース」で、東京でも興行収益1位となっている。
「ワンピース」のストーリーというのは以前にも書いたが、正義、友情、義理、人情の世界である。積もり積もった怒りが最後に爆発し、悪を倒すというパターン。今回はトランプ兄弟という海賊に支配されたねじまき島でルフィ、サンジ、ゾロ、ナミ、ウソップらの面々がいつも通りの活躍をする。安心して見ていられる仕上がりで、作画もテレビより丁寧。映画だから、テレビより面白いものを作ろうという肩肘張った部分はなく、テレビの延長として素直に楽しむ映画だろう。
2001/03/07(水)「バガー・ヴァンスの伝説」
映画を見る前にざっとあらすじを読んで、ああ、これは「ナチュラル」(1984年)だな、と想像した。バリー・レビンソン監督、ロバート・レッドフォード主演のこの映画は野球の天才打者が不運な事故に見舞われ、そこから奇跡的な再起を果たす話だった。キム・ベイシンガーが主人公を堕落させる悪女、主人公を支え続ける幼なじみをグレン・クローズが演じた。ファンタスティックな雰囲気が素敵な映画だった。
「バガー・ヴァンスの伝説」は戦争で精神的ショックを受けたゴルファーのジュナ(マット・デイモン)が酔いどれ生活から再起を果たす話。不思議なアドバイスをするキャディーのバガー・ヴァンスに出会い、恋人アデル(シャーリズ・セロン)の支えも得て、エキシビジョン・マッチでトッププロ2人に挑む。
プロットは「ナチュラル」とほとんど同じ趣向である。古き良き時代を背景にしているのも同じ。レッドフォード監督はこういう話が好きなのだろう。かつて自分が演じた役をデイモンに演じさせているわけだ。ただし、出来の方は「ナチュラル」の方が上回る。
「ナチュラル」は善と悪の力に翻弄されながらも自分の道を迷わず突き進む主人公がよく描けていたし、映画に透明で郷愁を誘う雰囲気があった。ラスト、主人公が特大のホームランを放ち、ライトが砕けて花火のように飛び散る描写も素晴らしかった。
「バガー・ヴァンスの伝説」はエキシビジョン・マッチの模様が中心になり、構成としてはやや単調であまりうまくないのである。ラストの処理も「ナチュラル」に比べると地味だ。バガー・ヴァンスの役回りは守護天使のようなニュアンスをもっと出した方が良かったと思う。
断然いいのはシャーリズ・セロン。勝ち気で快活な富豪の娘役を演じ、魅力が弾けていますね。