2015/12/08(火)「スター・ウォーズ フォースの覚醒」

 ディズニー配給になったため、オープニングに20世紀フォックスのファンファーレはない。その代わりにシンデレラ城が出てきたらどうしようかと思ったが、それはなかった。ルーカスフィルムのタイトルが出た後にいつものように物語の経緯が字幕で画面の奥に流れていく。そこで説明される内容がまず驚きで、そういうことになっていたのかと思う。海外の映画評サイトに第1作「エピソード4 新たなる希望」のリメイクという感想を書いている人がいたが、それに「エピソード5 帝国の逆襲」を加えた感じの物語である。

 J・J・エイブラムス監督の映画としては抜群に面白かった「スター・トレック 」(2009年、amazonプライムビデオ)には及ばず、「スター・ウォーズ」シリーズの中では「帝国の逆襲」「新たなる希望」の次、「エピソード3 シスの復讐」と同じぐらいの出来だと思う。「エピソード1 ファントム・メナス」の時のようなちょっとがっかりした気分はなく、新たな3部作開始の物語として申し分のない出来と言って良い。ライトセーバーが絡む2つの場面にはぐっときた。ハン・ソロなどの懐かしいキャラクターやスターデストロイヤー、Xウイング、タイファイターなどの再登場はファンにはたまらないだろう。エピソード1~3よりも、親近感が強いのはこれが「ジェダイの帰還」の後の物語だからだ。

 ミレニアム・ファルコンに乗り込んだハン・ソロは「Chewie ……,We're home」(チューイ、……我が家だ)とつぶやくが、リアルタイムで「スター・ウォーズ」を見てきた観客にもホームに戻ってきた感覚がある。「新たなる希望」以降の時の流れは自分の時の流れと重なってしまう。だから懐かしさと感慨を持たずにはいられない。そういう幸福な体験をもたらす映画はめったになく、映画の出来以上に、それがこの作品の大きな価値になっている。

 物語は「ジェダイの帰還」から30年後の設定。主人公のレイ(デイジー・リドリー)は砂漠の惑星ジャクーで廃品回収で生計を立てながら、ひとりぼっちで暮らしている。そこにレジスタンスのロボットBB-8とストームトルーパーズから逃げ出したフィン(ジョン・ボイエガ)がやって来て、レイの運命は大きく転換していく。あらすじで書いていいのはここまでだろう。

 予告編を見た時に感じたのはキャストの弱さだった。新人のデイジー・リドリーやジョン・ボイエガで果たして大丈夫なのかと思わざるを得ず、それを補強するのがハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、マーク・ハミルなのだろうと思えた。考えてみれば、「新たなる希望」の時にはこの3人は無名だったのだが、あの時には画期的なVFXという大きな強みがあった。VFXが普通になった今、キャストは重要だ。デイジー・リドリーはよくやっていると思う。ライトセーバーのアクション場面でも不足はない。今回はビリングが5番目だが、エピソード8ではもっと上に行くのではないか。

 ダースベイダーを思わせる新たな悪役カイロ・レンについて、エイブラムスは「いわゆる完璧な悪人ではなく、壊れた悪人として描きたかった。悪党になる過程の、いわば訓練中の悪党としてね」と語っている。ここは議論の分かれるところだろう。ダースベイダーを小粒にした感じが拭いきれないのだ。完璧な悪役として登場したダースベイダーは「ジェダイの帰還」で揺れ動いた。今回はその逆を行っているわけだ。

 今回、レイの出自は明らかにされなかった。それが明らかになるのは2017年に公開されるエピソード8においてなのだろう。大きな感慨と期待を抱かせるラストを見て、待ち遠しい思いを強くした。

2015/11/29(日)「フルートベール駅で」

 「クリード チャンプを継ぐ男」の監督・主演コンビの前作。フルートベール駅で警官に撃たれて死んだ黒人青年の実話を描いている。黒人青年の人となりはよく分かるが、組み伏せられて抵抗できない青年をなぜ白人警官は撃ったのか気になる。ティーザー銃と間違ったという説明はなされるが、本当だろうか。

 どういう精神状態だったのか、なぜそこに追い込まれたのかを描けば、映画はさらに充実していたのではないかと思う。

2015/11/29(日)「007 スペクター」

 ダニエル・クレイグ版ボンドの特徴は絵空事を廃した物語とハードなアクションだが、ショーン・コネリー版以来久しぶりに国際犯罪組織のスペクターを出してしまうと、今の時代にはそぐわない観がある。砂漠の中の秘密基地が出てきた時にはどうなることかと思った。そのあたりは製作者も分かっていて、秘密基地のシーンは短く、その後に本当のクライマックスを用意している。しかし、敵のボスにボンドの個人的なつながりを設定したのはどう考えてもマイナスだ。いくら絵空事をやめるためであっても、ボンドと敵のボスにこういう関係があるのはリアリティーを欠く。リアリティーを出そうとして逆に失敗したと言うべきだろう。

 僕は前作「スカイフォール」でも同じような疑問を感じた。個人的な話がしたいなら、007である必要はない。監督は「スカイフォール」に続いてサム・メンデス。演出に破綻はないが、脚本にもう少しコミットした方が良かったと思う。

 総じて、007シリーズの立ち位置は難しいところに来ているというのが実感。「裏切りのサーカス」や「誰よりも狙われた男」などジョン・ル・カレ原作の地味なスパイ映画(でも面白い)と007シリーズは対極的な位置にあり、1人のヒーローが活躍する内容にリアリティーを持ち込むのは容易ではないのだ。前作でボンド以外の主要キャストを一新したばかりだが、今回の終わり方を見ると、クレイグ版はこれでいったん終わりのような感じが伝わってくる。シリーズをリセットして出直すつもりなのかもしれない。

 MI6でM(レイフ・ファインズ)の上司Cを演じるのはテレビドラマ「シャーロック」でホームズの宿敵モリーティを演じたアンドリュー・スコット。こいつ絶対怪しいと思ったら、やはりそういう展開だった。

2015/11/17(火)ハチミツと睡眠

 先日、寝る前にハチミツをお湯に溶かして飲んでいたら、急に眠気が来た。昨日、同じように飲んで寝たら、いつもより熟睡できた。ハチミツには睡眠に作用する効果があるらしい。と思って調べたら、そういうページがたくさん出てくる。ハチミツには必須アミノ酸のトリプトファンが含まれ、これが体内でセロトニンに変化するそうだ。「1杯のハチミツが睡眠の質を上げる!」に詳しい。

 Wikipediaによると、セロトニンは「serum(血清)とtone(トーン)に由来し、血管の緊張を調節する物質として発見・名付けられた。ヒトでは主に生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与する」。なるほど。それでよく眠れるわけか。

 寝る前にハチミツを摂取すると、脂肪燃焼が進んでダイエット効果があると書いているページもある。元々、寝ている間には脂肪が燃焼されるのだけれど、ハチミツにはそれを促進する効果があるそうだ。ま、ハチミツ食べるだけで痩せられると思ったら、大きな間違いですけどね。やはり食生活の管理と適度な運動が基本で、それに加えてハチミツ、ということだろう。

 ハチミツには成長ホルモンの分泌促進効果もあるそうなので、筋トレやっている人にも良いかもしれない。ハチミツって万能だな、と思う。

2015/11/12(木)「ラスト・タウン 神の怒り」

 「パインズ 美しい地獄」「ウェイワード 背反者たち」に続く完結編。ミステリマガジン11月号に絶賛のレビューがあったので、あわてて読んだ。3冊とも退屈はしなかったが、B級3部作という印象が抜けきれない。中身が薄いのだ。簡単なプロットに肉付けして作った感じ。キャラクターと描写にもっと書き込みがほしい。展開が単調に感じるのはアイデアが足りないからだ。

 希望が見えないラストなので取って付けたような笑ってしまうエピローグがある。エピローグの続きを期待する人もいるようだが、SFの知識とアイデアに乏しいこの作者には書けないだろう。このエピローグ、ほとんどジョーク、あるいははったりみたいなものだ。まさかまじめに書いてはいないだろうな、ブレイク・クラウチ。

 「駄作」や「プリムローズ・レーンの男」と同様にSFとミステリを組み合わせた作品で、そういうのがアメリカのエンタテインメント小説では受けているのだろう。