2013/10/27(日)「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」

 物語が希望・祈りというテーマと感動的にリンクした完璧な前作からどう話を続けるのかに興味があった。一つの作品として見れば、出来は決して悪くはないが、無理に話を続ける必要はなかったように思える。完璧な物語の続編を作ることは容易ではないのだ。

 前作ですべての魔法少女の悲劇的な運命を断ち切るため、円環の理(ことわり)となった鹿目まどかが平然と登場する。これにどういう風に説明を付けるのかと思ったら、そんなに意外なネタではなかった。物語の中心になるのは、というか、語りの視点はまどかではなく暁美ほむらの方だ。転校してきたほむらは、同じ魔法少女であるまどか、さやか、マミらとチームを組み、ナイトメアと戦うが、次第にどかこおかしいと感じ始める。隣の町に行こうとしても、たどり着けない。ほむらは次第に記憶を取り戻す。まどかは円環の理になったはずではなかったのか。いったい誰がこの世界を操作しているのか。

 序盤の展開がやや平板で、ここをもう少し刈り込んで、話が発展していく後半につないだ方が良かっただろう。前作は外に開いたSFらしい物語、今回はミステリ的な閉じた物語(アイデアはSF)ということになると思う。

 アニメーション作家ユニットの劇団イヌカレーが担当した前衛的な背景描写は前作より多くなり、観念的なSFのアイデアと相まって、映画全体がかつての手塚治虫のアニメ(「悲しみのベラドンナ」とか)のように前衛的かつ観念的な印象になっている。前衛的なのはかまわないが、観念的なのは残念で、劇中で語られる世界の仕組みを言葉で説明するより描写で描いていけば、これは抑えられたのではないか。この映画、コアなファンは満足するかもしれないが、前作のような一般的な広がりには欠けるだろう。

 昨年、前作公開時に流れた予告編では魔女の代わりに魔獣が登場したが、本編での敵はナイトメアであり、魔獣はセリフにしか出てこない。今春公開の予定が半年延びたことを考えると、途中で物語の軌道修正があったのだろう。

2013/10/20(日)「おしん」

 30年前のテレビドラマのダイジェスト版、あるいは名場面集。そんな感想を抱かざるを得ないのは1時間49分の上映時間の中にエピソードを詰め込みすぎだからだ。一つ一つの場面は悪くない。「おねげえするっす」と山形弁を駆使する主演の濱田ここねをはじめ、上戸彩や泉ピン子や岸本加世子やガッツ石松など出演者はそれぞれに好演しているし、冨樫森監督は雪の山形の風景を効果的に取り入れ、しっかりと画面を構成して撮っている。「おしんの“しん”はなあ、信じるの“しん”だ、真実の“しん”だ。辛抱するのも“しん”だが、神様だって“しん”だ」。おしんにそう話す脱走兵役の満島真之介もいい。問題はメリハリがなく、単にエピソードを並べただけで、物語にうねりが感じられない点にある。

 全体の構成に難があるのだ。だから、最も盛り上がるべきラストシーンはなんだか拍子抜けで物足りない思いがしてしまう。テレビドラマの省略すべきところは省略し、力を入れるところと抜くところの強弱を付けた方が良かったと思う。良い題材なのに惜しい。

 山形の貧しい小作農家に生まれた7歳のおしんが奉公に出る。奉公先の材木屋で子守や洗濯、炊事など小さな体で懸命に働くが、盗みの疑いをかけられて、いたたまれずに逃げ出す。吹雪の山の中で行き倒れになったところを脱走兵に助けられる。隠れて住む脱走兵から字を教わって平穏な日々を過ごすが、春の訪れと共に実家に帰ることになる。家に帰ったところで状況は何も変わっていず、むしろおしんが奉公先から逃げたことで代金のコメ一俵を取り上げられた上に悪い評判まで立っている。おしんは再び加賀屋という店に奉公に出ることになる。

2013/10/14(月)XOOPSの自動登録bot対策

 XOOPSで最近、新規登録がたびたびある。見てみると、どう考えても検索ロボット(bot)の自動登録。アクセスログを調べて不要なbotは.htaccessでアクセス拒否するようにしたが、Googleのbotも自動登録するようだ。これはアクセス拒否するわけにはいかない。うちのサイトの場合、登録しても管理者の許可がなければ、書き込みはできないし、ログインしても変わったコンテンツがあるわけでもないのだが、登録お知らせメールはいちいち来るのでうっとうしい。アカウント削除の手間もかかる。
 なんとか登録できないようにする手立てはないかと調べたら、PEAK XOOPS - 自動ユーザ登録ボット対策に書いてあった。Protectorのプラグインを有効にすれば良いらしい。JavaScriptで登録フォームを生成するプラグインで、botにはJavaScriptが理解できないので登録はできなくなるというわけ。この日記(tDiary)のコメントフォームもその方式になっている。
 Protectorのような有用なモジュールやプラグインはGIJOEさんの手によるものが多い。GIJOEさんがXOOPSのハックから手を引いたのは痛いなとつくづく思う。

2013/10/07(月)「薬をやめれば病気は治る」

 薬は化学物質なので体にとっては毒、というのが著者の基本的スタンス。少し極端にも思えるが、素人考えでも高血圧や糖尿病など常用しなければならない薬が体に良いとは思えない。

 著者が飲まない方がいい薬として挙げているのは高血圧、コレステロール、糖尿病、睡眠薬・精神安定剤、胃薬、鎮痛剤、抗生物質、骨粗鬆症、風邪薬、逆流性食道炎などの薬。すべての薬を否定しているわけではなく、短期的に効果的に服用する方法を推奨している。驚くのは牛乳も毎日飲まない方がいいとしていることで、牛乳に含まれるカゼインが「最も強力な化学的発がん物質だ」とするコリン・キャンベル博士の説を紹介している。

 西洋薬が症状を緩和する対症療法であるのに対して漢方薬は体全体の調子を整えることを目指す。対症療法では根本的原因を取り除くことはできないのでこれは理にかなった方法だ。著者が進めるのは薬食同源の考え方で、これはもっともだと思う。サラッと読める本なので何らかの薬を毎日飲んでいる人は読んで見た方がいい。

2013/10/01(火)「共震」

 東日本大震災の傷がまだ癒えない被災地の現状を伝えるミステリー。著者の相場英雄が書きたかったのは被災地の現状の方で、ミステリーではない。本来ならノンフィクションとして書いた方が良かった題材だろう。なぜノンフィクションにしなかったのか。著者はビジネスジャーナルのインタビューでその理由について「ノンフィクションの本は本当に売れないです。どんなに大事なメッセージを込めても、ノンフィクションというだけで、世間はそれほど注目してくれない」と話している。

 より多くの人に被災地の現状を伝えるには読者の多い小説にした方が良いという理由は一面でうなずけるが、読んでいて、やはりこれはノンフィクションで読みたかったと思わずにはいられない。作品の説得力が弱いのだ。どこまでが被災地の現状か、読者には分からない。それが著しく説得力を欠いている。

 被災地の復興に力を尽くした県職員が殺されるというミステリー部分には特に評価すべき点がない。しかもこれが終盤、物語の中心に居座ってくると、どうも居心地が悪くなってくる。300ページ余りで被災地の現状が伝えられたとも思えない。微に入り細にわたった描写でこの倍ぐらいの分量で書いた方が良かったと思う。すぐに読めるページ数で収めたのは、ページ数が多くなると、本の価格が高くなり、より多くの人に手にとってもらえなくなるからだろうか。著者の真意はそんなところにはないだろうし、被災地に何度も足を運んだことには頭が下がるが、この本の完成度では被災地を舞台にしたお手軽な本と受け取られかねない。小説の長さはその質とは関係ないが、長さが必要な小説もあるのだ。