2007/04/14(土)「セレニティー」

 最後まで見た。面白く見たが、見終わってもB級スペースオペラという印象は変わらない。なぜこの映画が支持を集めたのかというのは特典映像を見ると、よく分かる。

 元々、この映画、テレビシリーズ「Firefly」が途中で打ち切られたことに端を発する。監督のジョス・ウェドンにとってはショックな出来事で、この続きを撮りたいという思いがあった。それを後押ししたのが熱狂的なファンの存在で、ファンサイトもできて盛り上がっていたのだ。だからDVDの中でもっとも感動的なのはコミコン(コミック・コンベンション?)で監督が5000人のファンからスタンディングオーベイションで迎えられるシーンだったりする。「スター・トレック」のような位置づけと思うといいのかもしれない。

 簡単に物語の設定を説明しておくと、西暦2500年、地球の人口が多くなりすぎた未来、人類は宇宙に出て、惑星をテラフォーミング(地球化)することで、さまざまな惑星に移住していた。宇宙を統括するのはアメリカと中国の同盟。だから米中が入り交じった文明となっている。しかし文明に反発する野蛮な食人族リーヴァーズとの間で戦争が起こり、泥沼化している。物語は辺境の惑星を舞台に同盟とリーヴァーズと宇宙船セレニティーで海賊稼業を行っているマル(ネイサン・フィリオン)が絡んだ展開となる。

 マルは未知の超能力を秘めた少女リバー(サマー・グレー)、その兄サイモン(ショーン・メイハー)と出会う。予知能力とともにとんでもない破壊力を持つリバーは「ミランダ」という言葉を口にする。その惑星ミランダでマルとセレニティーの乗組員たちは同盟のある秘密を知る。それを全宇宙に知らせようと、宇宙中継を行っているミスター・ユニバースの元へ向かおうとする。阻止しようとする同盟にリーヴァーズも加わり、三つどもえの戦いが展開される。

 監督自身が説明しているように低予算だったためか、VFXも劇場用映画のクオリティには届かない。テレビシリーズの延長だから仕方がないのだが、スターが出ていれば、もっと面白くなっていたかも知れないと思う。まあそれでも、とりあえず見ておく価値はあるだろう。できれば、打ち切りになったテレビシリーズのDVDも出して欲しいものだ。

2007/04/10(火) パソコンにコーヒー

 こぼした。夜の間はなんとか起動していたが、翌朝、電源は入るのにWindowsが起動しない。デスクトップならキーボードを交換するだけだが、ノートパソコンの場合は基盤にまで液体が達すると、お陀仏。5年近く使っていたパソコンでそろそろ買い換えを検討していたので、いさぎよくあきらめる。

 代わりのパソコンはVAIOのtype F。VAIOストアに注文した。メモリーは念のために2GB積んだ。パソコン5台めだが、これでVAIOは3台目。別にVAIOにこだわっているわけではない。ロケーションフリーのソフトが無料でダウンロードできるのはポイントか。SonicStageも使いたいし。しかし、一番の理由は価格。エプソンダイレクトでもカスタマイズしてみたが、VAIOの方が安かった。

 新しいパソコンが届いたら、古いパソコンからハードディスクを取り出してデータを救出しておこう。

2007/03/31(土)「リトル・ミス・サンシャイン」

 「リトル・ミス・サンシャイン」パンフレット負け組家族がカリフォルニアへの旅を通して再生する物語。ゴールは「夢のカリフォルニア」かと思わせておいて、クライマックスの美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」に出てくる女の子たちは醜悪だ。変に大人ぶっていて、子供らしさがない。気味が悪いほど。こうしたコンテストに対して監督のジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスの夫婦監督は批判を込め、勝ち組、負け組の二分法のバカバカしさを批判する。一家は結局、この虚飾に満ちたコンテストをぶち壊すことになる。クラッチが壊れたバスを走らせるために家族が一緒にバスを押し、走りながらバスに飛び乗る。バラバラだった家族はこの共同作業を何度も繰り返すことで一つになるのだ。絆を取り戻した家族が笑いものになろうとしていた娘を助けるためにコンテストを壊すのはそうした共同作業の帰結にほかならない。この映画、図式が分かりやすすぎて物足りない部分も残るけれど、笑いを散りばめた中にあるその真っ当さがいい。アカデミー助演男優賞(アラン・アーキン)とオリジナル脚本賞を受賞した。

 アリゾナ州に住む少女オリーブ(アビゲイル・ブレスリン)の家族の壊れ方は多分にデフォルメされている。祖父(アラン・アーキン)はヘロイン吸引で老人ホームを追い出され、叔父フランク(スティーブ・カレル)は同性愛者で恋人に去られて自殺未遂、父親リチャード(グレッグ・キニア)は勝ち組に入ることしか興味がなく、ハウツー本の出版をエージェントに働きかけている。兄ドウェーン(ポール・ダノ)はパイロットの夢がかなうまで誰とも話さないと決めている。まともなのはいつも夕食にチキンを出す母親シェリル(トニ・コレット)ぐらいだ。オリーブは「リトル・ミス・サンシャイン」の地区予選で繰り上がって全国大会出場が決まる。1位の子がダイエット薬を使用していたためだ。金のない一家はオンボロのミニバスでコンテストのある1000キロ以上離れたカリフォルニアを目指す。旅の途中でミニバスが壊れるなど、さまざまな問題が巻き起こるのはこうしたロードムービーの常套的な手法だ。

 家族の壊れ方がマイク・リー「人生は、時々晴れ」ほど深刻に描かれないのはエンタテインメントに描写が振ってあるからで、アメリカ映画らしい作りである。冗談とも思える描写の中で「本当の負け犬は負けることを怖がって挑戦しない人間のことだ」という祖父のセリフが光ってくる。本の出版ができずに意気消沈する息子を励ます場面などアラン・アーキンは好演だけれど、早々にいなくなるので助演賞受賞に値するかには疑問もある。

 これが脚本第1作のマイケル・アーントはアーノルド・シュワルツェネッガーの負け犬を否定する発言からこのストーリーを書き上げたという。勝ち負けで分類すれば、勝ち組はほんの一握り、世の中の多くは負け組なので、こうした姿勢は共感を得られやすい。ただ、脚本自体はそれほど際だって優れているわけではないと思う。それでもメジャー配給の作品にはこうした身近な家族の問題を取り上げた作品は少ないので、相対的に評価が上がったのだろう。作品賞にノミネートされたものの受賞を逸したのはそういう部分があるからかもしれない。

2007/03/26(月)「氷の微笑2」

 14年ぶりの続編。といっても何も話はつながっていない。何しろラジー賞作品賞と主演女優賞など4部門受賞なので、つまらないだろうなあと思いつつ見始めてやはりつまらなかった。監督はマイケル・ケイトン・ジョーンズ(「メンフィス・ベル」)なのに、この脚本ではどうしようもなかったのだろう。

 シャロン・ストーンは前作の翌年ぐらいにこの映画を撮るべきだった。14年の年月は残酷で、いくら色っぽい格好をしても前作には到底及ばない。スタイルがそれほど崩れていない(というか、同年代の女性に比べれば素晴らしいスタイル)なのだが、48歳(撮影当時)ではこの役柄には無理がある。それ以上に主人公の精神分析医(デヴィッド・モリセイ)がバカにしか見えないのが致命的か。

 シャーロット・ランプリング(60歳)を出したのはストーンを引き立てるためなのかと勘ぐりたくなってくる。ランプリングに比べれば、ストーンははるかに若く見える。

 ストーンが本当にきれいだったのは「氷の微笑」の前後の時期だった。この頃にアカデミー賞の授賞式でプレゼンターとして登場した時、「光り輝いてるな」と思ったものだ。その後、良い作品がなかったのは作品選択を誤ったのだろう。最初にストーンを見たのは「キング・ソロモンの秘宝2」でこの時は人形みたいな女優だなと思った。これは褒め言葉ではなく、演技が全然できていないということ。それがポール・バーホーベン「トータル・リコール」でシュワルツェネッガーの妻役を演じて、その悪女ぶりにクラクラした。バーホーベンは女優を撮るのがうまいなと思う。

2007/03/24(土)「SAW 3」

 序盤は全身につながれた鎖を無理矢理引きちぎったり、酸の中にある鍵を取ろうとして手がドロドロになったりのグロい場面の連続だが、後半は1作目の種明かしが中心。1作目は驚愕のラストのトリックについて「絶対にあんなことは無理」と言われたが、そうできる理由を入れている。やはりそういう指摘が多かったからか。

 映画としては普通の出来。特に感心する部分もなかったが、ひどい部分もなかった。ただ、終盤のひねりを見ると、グロいシーンはなくてもいいような気がする。いくらなんでもシリーズはこれで終わりだろうと思ったら、4月から第4作の撮影に入り、10月に公開されるとのこと。監督は2作目から担当しているダーレン・リン・バウズマン。