2006/07/24(月)「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」

 「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」パンフレット3年ぶりの続編。ビジュアルな部分と笑いに関して言えば、退屈はしなかったが、この内容で2時間31分はどう考えても長い。2時間以内にはまとめるべき作品だろう。前作の感想を読み返してみたら、「話に広がりがないし、展開がもたもたしているし、2時間23分もつ話でもない。展開が難しくないのはやはりお子様を意識したからだろう」と僕は書いている。今回もこれは当てはまり、ドラマ部分が盛り上がりに欠ける。話はお宝(デッドマンズ・チェスト=死者の宝箱)を巡る争奪戦で前作と同じような趣向なのだが、登場人物がすべて私利私欲だけで行動しているのでどうでもいい話に思えてくる。死者の宝箱に世界の運命を左右するような重要さがあると良かったかもしれない。前作に続いての監督ゴア・ヴァービンスキーの演出はいつものように緩みがちで、もっとスピーディーにコンパクトにできないものかと思う。キーラ・ナイトレイに大した見せ場がないのも残念。

 ウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)とエリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)が結婚式を目前にして逮捕され、死刑を言い渡される。容疑は死刑囚のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)を逃がしたこと。東インド会社のベケット卿(トム・ホランダー)からスパロウの持つコンパスを持ってくれば、放免すると言われたウィルはスパロウを探して旅立つ。その頃、スパロウはウィルの父親で深海の悪霊デイヴィ・ジョーンズにと捕らわれているビル・ターナー(ステラン・スカルゲールド)からジョーンズとの契約が迫ったことを知らされる。スパロウはブラックパール号の船長として13年間過ごした後はデイヴィ・ジョーンズの船フライング・ダッチマン号で永久に働くという契約を交わしていたのだ。スパロウはそれから逃れようと、ジョーンズの心臓を収めた死者の宝箱の鍵を探し始める。

 序盤のブラックパール号が漂泊した島の原住民とスパロウ、ウィルらとのエピソードは本筋の物語からはほとんど不要。ただアクションを見せるためのものでしかない。もっともそれは映画全体にも言え、ストーリーを語るよりもアクションを見せることで終わった観がある。この映画、元々、ディズニーランドのアトラクションを基に生まれたものだが、何も考えずに見ていれば話が分かるというのはアトラクション的な映画を目指したためなのかもしれない。それにしても本来ならドラマを盛り上げるべきスパロウとエリザベスとウィルの三角関係などはほとんど手を抜いているとしか思えないほど情感に欠ける。こういう部分をきちんと描かないと、ドラマに深みが生まれてこないのだ。2作目と3作目は同時に撮影したそうで、ラストはいかにも続くという感じで終わる。2作目なりの決着をうまくつけてほしかったところではある。何かもう一つサイドストーリーを設定しておくべきだったのではないか。作りが単純なのである。

 デイヴィ・ジョーンズはタコを貼り付けたような顔。部下たちはフジツボが体全体にあったりしていかにも海に呪われたという感じだが、これも仮面ライダーの怪人と変わりないレベルの発想と思う(仮面ライダーの方がもっと高度かもしれない)。ジョーンズが操る海の怪獣クラーケンは良くできていた。

2006/07/22(土) ErrorSafe

 子供が使っていた後でパソコン画面を見たら、何やらダイアログが表示されている。

 「注意:レジストリデータベース、システムファイルにあるエラーによってコンピューターは機能が正しくなくて、フリーズ、クラッシュの恐れもあります。エラーを修正するとコンピュータパフォーマンスが向上してデータ損失ができなくなります。無料でコンピュータをスキャンするようにErrorSafeをインストールしますか?(推奨)」

 Windowsの警告ダイアログかと思ってしまうが、マイクロソフトが無料でソフトをインストールさせるならWindows Updateから行うはず。これはおかしいとErrorSafeを調べてみたら、スパイウェアとのこと。ダイアログでOKボタンを押すと、ソフトをダウンロード&インストールしてしまうらしい。

 シマンテックのサイトによると、「ErrorSafe は、コンピューター上で誇張した脅威の報告を提示する可能性がある、セキュリティリスクです。このプログラムは次に、報告された脅威を駆除するためにソフトウェアの登録されたバージョンを購入するようにユーザーに促します」という。

 訪れたページにプログラムが仕込まれていて、ダイアログを出すか、別のページをIEで開いているようだ。そういうページが国内のページにもあるかどうか知らないが、外国製のスパイウェアなので、外国のページ行くと危険性は増すかもしれない。危ない危ない。しかし、これ、引っかかる人も多いような気がする。子供には外国のページには行かないようにきつく言っておいた。ゲームを探していろいろなページに行っているようだ。

2006/07/21(金)「フォーラム@nifty」は、2007年 3月31日をもって終了します。

 パソコン通信時代からの長い歴史を持つフォーラムもついに終了。僕がniftyに入ったころに既に下火になりつつあった。一時はいろんなフォーラムに入ったが、ここ数年は閑古鳥が大量に鳴く状態。2ちゃんねるの影響が大きかったような気がする。閉鎖的な空間はこういう運命をたどることになる。

 閉鎖的なサイトでもmixiの利用者が増えているのは自分でホームページを簡単に持てることと無関係ではないだろう。ただし、やはり閉鎖的であることの限界はあると思う。

2006/07/17(月)「日本沈没」

 「日本沈没」パンフレット映画を見た某SF作家が「小松左京原作とはまったくの別物」という趣旨のことを書いていたのが気になっていた。映画を見てみると、なるほど、原作の大きな改変がある。某アクションスターが主演したアメリカ映画を思わせる展開である(パンフレットでは小松左京原作の「さよならジュピター」を指摘している)。これが安易な改変なら口を極めて罵るところだが、樋口真嗣監督、映画をうまくまとめている。改変には興行上の計算もあったのかもしれないが、阪神大震災後の映画として何よりも映画のラストに希望が欲しかったのだろう。こういう改変をしつつ成功したことは褒められていい。樋口真嗣のこのまとめ方と通俗性はハリウッド映画を目指しているように思える。正攻法に徹した岩代太郎の音楽が映画に風格を与えている。

 主演2人の好演も映画を支えている。特に柴咲コウ、「東京消防庁ハイパーレスキュー隊阿部玲子、皆さんを救出に来ました」というラストのセリフは、ヘリからカッコ良く登場する冒頭のシーンと呼応していてとてもいい。草なぎ剛も役柄に真摯に取り組んだ姿勢がかいま見えて僕は好感を持った。残念なのは庶民の視線で未曾有の大災害を描きながら、庶民のエピソードが少ないこと。これをもっともっと描けば、映画はより充実したのではないか。脚本にそういう部分での厚みが足りないのである。

 太平洋プレートの沈み込みで蓄積されたマントル(メガリス)が崩壊することによって、太平洋プレートの沈み込みが加速、それに引きずられて日本は沈没する。というのが映画の最初の方でアメリカの科学者が提示する仮説。これは30年後に起きるとされていた。しかし、田所博士(豊川悦司)は独自の調査によってマントル内のバクテリアの増殖でプレートの沈み込みが加速し、日本は1年以内に沈没することを発見する。そして日本各地で火山が噴火、大地震が発生し、日本列島は崩壊していく。

 映画はこの骨格に深海潜水艇のパイロット小野寺(草なぎ剛)と東京消防庁のハイパーレスキュー隊員阿部玲子(柴咲コウ)のエピソードを絡めて描く。冒頭、静岡を襲った大地震で両親を失った少女美咲(福田麻由子)が火に巻き込まれそうになるのを小野寺は見つける。間一髪のところで、レスキュー隊のヘリが来て、ロープで下りた隊員が少女を救う。この呼吸がとてもよろしい。隊員はもちろん玲子で、このことで2人は親しくなる。政府側の対応を代表するのが文部科学大臣で危機管理担当大臣に指名された鷹森沙織(大地真央)。沙織は田所博士と20年前に離婚したという設定。首相(石坂浩二)が阿蘇の噴火で死に、首相代行となった内閣官房長官(國村隼)と対立しながら、国民を救出しようと奔走する。

 映画は後半、次々に起きる大災害と、まるで「ドラゴンヘッド」のような火山灰が降る中で逃げまどう人々を描きながら、イギリスに脱出しようと誘う小野寺と玲子の関係に焦点を絞っていく。玲子は阪神大震災で両親を亡くし、自分だけレスキュー隊員に助けられた過去を持つ。今は東京の叔母(吉田日出子)の世話になっている。だから美咲の姿に自分を重ねており、「一人でも多くの人を助けたい」と思っている。愛する者を失う悲しみに耐えられなかった玲子は「もう誰も愛さない」と誓ったが、小野寺を愛してしまう。終盤の小野寺と玲子の関係が切ない。

 樋口真嗣は73年版「日本沈没」の影響を大きく受けているそうだ。73年版は名作でも傑作でもないが、それなりのインパクトは持っていた。パニック映画流行の中で封切られた旧作と樋口版「日本沈没」の違いは時代背景の違いとも重なっているのだろう。映画の出来としては今回の方が良いと思う。

2006/07/16(日)「寝ずの番」

 中島らもの原作をマキノ雅彦監督が映画化。「ほな、師匠、行かせてもらいます」という木村佳乃がすごくいい。色っぽくていい。ポルターガイストみたいな嫁はんという形容もおかしい。落語の師匠が死んで、通夜に集まった弟子たちが艶笑談を繰り広げる。何てことはない話だが、笹野高史、岸部一徳、長門裕之、木下ほうからが芸達者なので、大人向けの喜劇に仕上がっている。一番の儲け役は笹野高史か。

 中井貴一はこうした喜劇には向かないかなと思ったが、健闘していると言うべきか。ちょっとだけ出てくる高岡早紀も良かった。