2000/12/16(土)「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」

 平成ゴジラシリーズの設定をすべてなかったことにして、一から始める発想はいいのだが、肝心のメガギラスとの対決となるクライマックスが極めて退屈。工夫も何もない戦い方である。ここがダメなので映画全体もダメな感じを受けてしまう。

 メガギラスは「ラドン」に出てきた古代のヤゴ怪獣メガヌロンの進化系である。ヤゴがトンボになってメガニューラになり、その中の一匹が仲間から養分をもらって巨大化したのが、メガギラスというわけ。「ガメラ2 レギオン襲来」の影響がありありで、多数のメガニューラが群舞し(ここは素晴らしい出来)、ゴジラに張り付く様はレギオンそのものだった。自衛隊の隊長役で永島敏行が出てくるのもガメラの影響だろう。永島敏行はすぐにゴジラの犠牲になり、その部下の田中美里がゴジラへの復讐を誓うというのはなかなか良い設定。この導入部分を見たときは期待通りの出来かなと思ったんですけどね。科学者役で星由里子というのは何かの冗談でしょう。

 メガニューラの出来はいいのだから、これにもっと活躍させてほしかった。人間をもっと襲わないとダメでしょう。小学生のころ、「ラドン」のメガヌロンを見たときは人間を次々に襲う様子がとても怖かったが、この映画の中では犠牲になるのは2人だけ。やはり子供向けを意識したのだろうか。

2000/12/13(水)「ホワット・ライズ・ビニース」

 ミシェル・ファイファーがこれを最後に長期休暇に入ると聞かされたら、ファンとしては一番に見に行かなくてはならない。それにネタをバラされるおそれもありますからね。予告編では心霊ホラーのような感じだったが、それだけでなく、前半の「裏窓」的描写がなかなか怖い。あまり夫婦仲の良くない隣の家の夫が妻を殺したのではないかという疑問を持つファイファーのサスペンスが見どころ。ロバート・ゼメキス監督はヒッチコックを目指したそうで、じりじりとサスペンスを盛り上げていく。

 しかし、その一方で単なるショッカー的描写が入り、これはドキっとさせられるのだけれど、暗闇で後ろから「ワッ」と言うようなあまり上等ではない演出。後半もこういう描写が多く、心臓の弱い僕には向かなかった。延々と続くクライマックスはもっと潔く終わった方が良かったような気がする。ヒッチコックだけでなく、「悪魔のような女」的シチュエーションもある。ゼメキスはこういうスリラーが好きなのだろう。純粋にサスペンスに徹してくれたら良かったのにね。

 ファイファーは頬骨が目立つようになって魅力が薄れたが、しっかり休暇を取って復帰してほしい。キャット・ウーマンのような役がまたできるといいと思う。

2000/12/10(日)「ダイナソー」

 CGの技術には感心するが、物語は明らかに子供向け。主人公はキツネザルに育てられたイグアノドンのアラダー。「ターザン」のような設定だ。ある日、大きな隕石が落下し、大地は荒れ果てる。このため恐竜たちは新天地を求めて移動を始める。道のりは長く険しい。しかも後から肉食のカルノタウルスやヴェロキラプトルが追いかけてくる。過酷なサバイバルの様子が描かれるわけだ。

 言葉をしゃべる恐竜にはなんだかがっかりする。上映時間も1時間22分と子どもがあきない程度の時間に設定してある。この技術があるのにこんなストーリーではもったいない。これなら普通のアニメでも十分だもの。「トイ・ストーリー」シリーズを見習って欲しいところだ。長男(5歳)は怖いらしく所々で目を伏せていた。長女(7歳)は平気だった様子。個人的には昨年の「ターザン」の方がはるかに面白かった。

2000/12/07(木)「遠い空の向こうに」

 NASAの技術者が書いた原作「ロケットボーイズ」をSF映画のみ発表し続けているジョー・ジョンストンが監督した。実にウエルメイドな作りで、ラストのどこまでもどこまでも空高く上っていくロケットを見て、胸が強く揺さぶられた。原作よりも話は単純化してあるようだが、父と子の相克、決して夢を捨てない主人公の生き方、古い時代(炭坑)と新しい時代(ロケット)を対比させた構成が素晴らしい青春映画と言える。主人公が選んだのはロケットだったが、子どもが父親とは別の道を選び、自分の夢を実現していく話として普遍性がある。

 主人公を理解し、支援する女性教師役で久しぶりのローラ・ダーン、主人公の父親は「アメリカン・ビューティー」の隣人クリス・クーパーが演じている。

 ジョンストンは「スター・ウォーズ」「ハワード・ザ・ダック」などのスタッフを経て「ミクロキッズ」で監督デビュー。その後「ロケッティア」「ジュマンジ」ときて、「遠い空の向こうに」は劇場映画では監督4作目に当たる(来年、「ジュラシック・パーク3」の公開が控えている)。だから主人公が映画の中で「縮みゆく人間」(「ミクロキッズ」の元ネタ)を見るのも当然なのだった。紛れもないSF人間なのですね。

2000/12/06(水)「タイタス」

 シェイクスピアの初期の残酷な戯曲を映画化したもの。IMDbでチェックしたら、一般観客の評価は10点満点の7.8点。いい評価だったのである。

 監督は舞台の方の「ライオン・キング」で評判を集めたジュリー・テイモア。予告編は気味の悪い場面が強調されていたので不安だったが、本編を通してみると、そうでもなかった。といっても両腕を切断し、枯れ枝を代わりに刺し、舌を切り取られた女の姿はやはり悲惨。だいたい、ヤクザ映画の指を詰めるシーンでさえ、拒否反応を起こすくらいなのでこういうシーンは嫌いである。

 快、不快で言えば、不快なシーンの多い映画だ。映像的にはローマ時代の話なのにナチスの扮装をした軍人が出てきたり、ゲームセンターがあったり、ネクタイを締めている人物が出てきたり、自動車やバイクが出てきたりする。もちろん、ジュリー・テイモアは承知の上で演劇的な手法を採っているのだが、効果的かどうかは別にして映画のリアリズムからは遠い手法と言わねばならない。

 復讐に次ぐ復讐が血で血を洗う闘争として2時間42分にわたって描かれ、見応えはあるものの、ややうんざり。そんなに時間をかけてその程度のことしか描けないのか、という気もする。フェリーニやヴィスコンティ的映像もあるが、主人公のタイタス(アンソニー・ホプキンス)が基本的にバカなのであまり共感を持てない(皇帝候補の兄弟のうち、どう見てもアホな兄の方を皇帝にすることからしてバカである。その後の不幸は自業自得だ)。

 それにしてもこのねちっこい映像は西洋的な感覚だろう。それとも女性独特のものか。「ボーイズ・ドント・クライ」のキンバリー・ピアースも映像的にはどぎつかった。僕はもっと淡泊な映画がいい。