2013/10/20(日)「おしん」
30年前のテレビドラマのダイジェスト版、あるいは名場面集。そんな感想を抱かざるを得ないのは1時間49分の上映時間の中にエピソードを詰め込みすぎだからだ。一つ一つの場面は悪くない。「おねげえするっす」と山形弁を駆使する主演の濱田ここねをはじめ、上戸彩や泉ピン子や岸本加世子やガッツ石松など出演者はそれぞれに好演しているし、冨樫森監督は雪の山形の風景を効果的に取り入れ、しっかりと画面を構成して撮っている。「おしんの“しん”はなあ、信じるの“しん”だ、真実の“しん”だ。辛抱するのも“しん”だが、神様だって“しん”だ」。おしんにそう話す脱走兵役の満島真之介もいい。問題はメリハリがなく、単にエピソードを並べただけで、物語にうねりが感じられない点にある。
全体の構成に難があるのだ。だから、最も盛り上がるべきラストシーンはなんだか拍子抜けで物足りない思いがしてしまう。テレビドラマの省略すべきところは省略し、力を入れるところと抜くところの強弱を付けた方が良かったと思う。良い題材なのに惜しい。
山形の貧しい小作農家に生まれた7歳のおしんが奉公に出る。奉公先の材木屋で子守や洗濯、炊事など小さな体で懸命に働くが、盗みの疑いをかけられて、いたたまれずに逃げ出す。吹雪の山の中で行き倒れになったところを脱走兵に助けられる。隠れて住む脱走兵から字を教わって平穏な日々を過ごすが、春の訪れと共に実家に帰ることになる。家に帰ったところで状況は何も変わっていず、むしろおしんが奉公先から逃げたことで代金のコメ一俵を取り上げられた上に悪い評判まで立っている。おしんは再び加賀屋という店に奉公に出ることになる。