2011/06/07(火)「わたしの渡世日記」

 文筆家としての高峰秀子を僕はまったく知らなかった。この本は北海道で生まれて、養女にもらわれ、養母との凄絶な愛憎を経て松山善三と幸福な結婚をするまでの半生を綴ったもの。結婚後20年ぐらいを経た時点で書いている。第一章の「雪ふる町」でその文体と内容に強く引き込まれる。映画ファンはいっそう楽しめるが、そうでなくても面白く読める一級の読み物だと思う。高峰秀子は5歳から女優の仕事を始め、ろくに学校にも行っていない。なのに、これほど面白い文章が書けるというのは、やはり生まれ持った才能によるものと、文章に人柄がにじみ出ているからだろう。