2003/11/06(木)「マトリックス レボリューションズ」
これまでの経緯を一切説明せず、いきなり本編が始まる。今回はマトリックス内よりもリアルワールドの描写が中心である。マシンシティの中枢に向かうネオ(キアヌ・リーブス)とトリニティ(キャリー=アン・モス)、センティネルの無数の大群をロボット兵器で迎え撃つザイオンの兵士たち、ザイオンに向かうため補助パイプラインの中を突っ走るナイオビ(ジャダ・ピンケット・スミス)とモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)のホバークラフト―の3つのエピソードが描かれていく。
細かい背景説明は前作でしてあるので、スペクタクルな描写に徹しており、それが前作よりも面白くなった理由だと思う。マトリックス内の描写は最初の方の意識を失ったネオを助けるためにトリニティーたちが活躍する場面とクライマックスのネオとエージェント・スミス(ヒューゴ・ウィービング)の戦いの場面(ここは「スーパーマン2」を思わせる)だけ。これでマトリックス・シリーズの完結編と言えるのかという思いも頭をかすめるが、マトリックス内が中心だった「リローデッド」と合わせて4時間27分の映画と思えば、納得はいく。ただし、2作目と3作目を合わせても1作目の革新性には大きく及ばない。これだけの長さでも、まだまだ描写が足りないと思える部分もある。
2作目で印象的だったザ・ツインズが出てこないのは残念だし、メロビンジアン(ランバート・ウィルソン)とパーセフォニー(モニカ・ベルッチ)の登場場面も少ない。ならば、2作目の展開は何だったのさ、という感じがある。話の細部は相変わらず分かりにくいが、今回は描写で押し切った観がある。無数の、本当にあきれるぐらい数が多いセンティネルとの戦いの場面はクライマックスのネオとスミスの戦いよりも良くできており、面白い。面白いけれど、従来のマトリックスの面白さとは異なる面白さである。何か大きな脇道に入ったような感じがつきまとう。それが評価を躊躇わせる理由にもなっている。
一応の完結編ではあるけれど、この決着の付け方では根本的な解決になっていないような気もする。機械と人間の戦争は終わったが、これで眠らされ、エネルギー源となっている人間たちは解放されるのか。エネルギー源を失えば、機械側は存続できないだろう。ラストに予言者とアーキテクトがマトリックスの世界で会う場面があるのを見ると、マトリックスはまだ存続しているわけだ。マトリックスの仮想現実は眠らされた人間たちのためのものなのだから、マトリックスが存続している以上、事態は何ら変わっていないことになる。
2作目と3作目の本当の敵はマシンそのものではなく、スミスだった。スミスはマシンにとっても人間にとっても脅威の存在ということになっているけれど、この設定が話の本筋をずらすことになったのだと思う。マシンの本体を殲滅しなければ、本当の解決にはならないだろう。2作目と3作目は結局のところ、大いなる番外編なのではないか。