2003/05/26(月)「アバウト・シュミット」
保険会社を定年退職したウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)の話。ニコルソンはこれでアカデミー主演男優賞にノミネートされた。シュミットが退職後に会社に行っても相手にされず、家ですることもなくボーっとしていたり、42年連れ添った妻を内心では苦々しく思っている(「なぜ、こんな婆さんが自分の家にいるのだろう」とシュミットは思う)とかの序盤の描写はまあ、よくあるパターンでそれほど新鮮ではない。ある日、テレビを見ていたシュミットは「チャイルドリーチ」というプログラムに関心を持つ。発展途上国の恵まれない子どもに毎月22ドルを寄付する事業。子どもの養父として認められ、金と同時に手紙も送ることになる。その手紙が映画ではナレーション代わりとなっている。
退職後しばらくして妻は掃除中に脳血栓で死ぬ。結婚を控えた娘(「アトランティスのこころ」の母親を演じたホープ・デイビス)が葬儀のために帰ってくるが、シュミットの世話をすることもなくさっさと帰ってしまう。シュミットは婚約者(ウォーターベッドのセールスマンでネズミ講まがいの投資話をシュミットにもちかける)が嫌いで、なんとか結婚を中止させようとするが、かえって娘の反発を買ってしまう。妻が買ったキャンピング・カーで思い出の地を訪ねたり、娘の婚約者の家庭で騒動が持ち上がったりと、小さなエピソードがユーモラスに綴られていく。
初老の男性が主人公の映画というと、「ハリーとトント」などを思い出すのだが、こういう作品でも商売になるのがアメリカ映画の幅の広さと言える。かつてこういうジャンルは日本映画でもあったが、今やすっかりなくなってしまった。客が呼べないのだろう。
「チャイルドリーチ」は「フォスター・プラン協会」という実在の組織(日本にも
LINK http://www.plan-japan.org/ 支部
がある)。映画はこれのPRっぽくなっているのが難だが、全体として良くできた大衆小説のような味わいがある。シュミットという男は独善的で、そばにはいてほしくないキャラクター。ニコルソンはこの嫌なキャラクターをユーモラスに演じている。かつてならウォルター・マッソーあたりが得意としていた役柄か。マッソーやジャック・レモンなら、ペーソスも感じさせただろうが、ニコルソンの凄みのある顔つきはペーソスとは無縁のように思う。