2003/05/06(火)「アトランティスのこころ」
スティーブン・キングの原作を「シャイン」のスコット・ヒックス監督が映画化。というのは正確ではなくて、上下2巻の原作の上巻部分だけを映画化してある。小説「アトランティスのこころ」は中編と短編の組み合わせだから、こういう映画化も可能なのだが、あまり誉められた姿勢ではないだろう。加えて脚本のウィリアム・ゴールドマンは原作の表面的な部分をなぞっただけで、映画の印象は極めて平板なものになってしまった。ポイントがないのである。
大人になった主人公ボビー・ガーフィールド(デヴィッド・モース)がかつての親友の死を知り、故郷に帰り、少年時代を回想するという構成。「スタンド・バイ・ミー」のようなこの構成がもう安易というほかない。主人公は2階に越してきた初老の男テッド・ブローティガン(アンソニー・ホプキンス)と親しくなる。テッドには不思議な能力があって、ある組織から狙われているらしい。原作ではこのテッドが「ダーク・タワー」シリーズと重なるのだが、映画ではSFにするのを嫌ったためか、別の設定にしてある。それはいいのだが、それならば主人公と母親(ホープ・デイヴィス)との確執をもっと描き込む必要があっただろう。クライマックス、主人公が母親と口論するシーンはなかなかよく、どうせ原作を離れるのなら、映画はここを中心に母親を見限る子どもの話として映画化しても良かったのではないか。
子役3人にあまり魅力がないのも致命的。うまくいかない時は様々な要素が重なってうまくいかないものなのである。