2003/04/11(金)「デアデビル」

 派手さがない。話がありきたり。雰囲気が暗い。アメリカン・コミックの盲目のヒーローをベン・アフレック主演で映画化したこの作品、先行する「バットマン」や「スパイダーマン」に比べて大いに地味だ。地味が悪いわけではないが、話の展開もいつかどこかで見たようなものでは面白くなりようがない。禿げ頭のブルズアイを演じるコリン・ファレルには見どころがあるが、もう一人の悪役キングピン(マイケル・クラーク・ダンカン)も含めて生かしておくのは続編を考えての措置であることが見え見えだ。それ以上にエレクトラ(ジェニファー・ガーナー)をあまり活躍もさせずに殺してしまうとは、監督のマーク・スティーブン・ジョンソン(「サイモン・バーチ」に続く2作目)、いったい何を考えているのか。続編が作られるとしたら、きっとエレクトラは死んでいなかったことにするのだろう(エレクトラをスピンオフした作品の計画もあるらしい)。

 といっても、ジェニファー・ガーナー、それほど魅力的ではない。スラリと伸びた足はアクションに向いた体型ではあるが、今ひとつ輝くものがないし、やや、とうが立っている。ベン・アフレックはいつものような演技で、俳優人生のプラスになる役柄とは思えないから、続編には出ないのではないか。

 主人公のマット・マードックは子どものころ、有毒産廃を浴びて失明するが、視覚以外の感覚が超人的に発達する。ボクサーだった父親を暗黒街の組織に殺されたマットは悪を正すため、昼は弁護士、夜はデアデビルとして悪人たちを倒していく。デアデビルの活動範囲はヘルズキッチンで、世界各地で活躍するスーパーマンなどとは土台スケールが違う。小さな街のヒーローといったところ。超人ではなく、単に体を鍛えているだけだから(バットマンもそうだが、さまざまな秘密兵器がある)、あんなコスチュームは不要なのではないかと思えてくる。普通のヤクザ映画でも通る話なのである。

 ダークな雰囲気は悪くはないけれど、もう少しオリジナルなものが欲しいところだ。原作自体、当初は人気がなかったという。二番煎じの感が拭えないのは、映画にもそのまま当てはまる。

 回想でデアデビルの少年時代からを描く脚本にも工夫が足りない。ヒューマンな感動作「サイモン・バーチ」から5年。マーク・スティーブン・ジョンソンは映画作りの勘を取り戻せなかったようだ。