2021/08/07(土)「1秒先の彼女」ほか(8月合評会コメント)

 シネマ1987の8月の合評会は「ゴジラvsコング」「竜とそばかすの姫」「1秒先の彼女」の3本について感想を話した。以下は僕のコメントの要約(「竜とそばかすの姫」については既に感想を書いているので省略)。

「ゴジラvsコング」

「ゴジラvsコング」パンフレット
 「ゴジラ」シリーズは僕の映画鑑賞の原点みたいなものなので、作品評価に関して心が広いです。モンスターバースの中ではゴジラもキングコングも地球生態系の守護神として描かれてきたので、戦う理由をどう設定したのか興味がありましたが、それに関しては肩透かしでした。ストーリーはどうでもよくてゴジラとコングを闘わせるだけの映画ですね。その見せ方に関しては迫力があって悪くなかったと思います。

 小栗旬は序盤はセリフがありましたが、後半は白目むいてただけの印象でした。かなりカットされたようで、本人としては不本意でしょうね。

 モンスターバースの作品で一番面白いのは「キングコング 髑髏島の巨神」(2017年)だと思います。監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツは現在、ガンダム実写版に関わってるそうです。

「1秒先の彼女」

 アホかと思いました。おかしな点がたくさんありすぎて挙げるのが面倒なんですが、いくつか挙げます。

 1秒遅れが蓄積した結果、時が止まって彼が追いつくという展開なんですが、ずーっと1秒遅れなら全然蓄積してないですよね。1秒遅れが2秒、3秒、4秒と遅れていくのなら話は分かりますが、全然そうはならない。それなら修正する必要もないです。しかも時が止まったという表現ながら、全然止まってないです。なぜ昼だったのが夜になるのかと。つまり、時は止まってなくて、世界の動きが止まったんです。ただ、そうなると、時間の修正もできないです。もうね、妄想レベルの話で、あきれてきます。論理が破綻してますね、この脚本。

 彼女だけが「バレンタインデーがなくなった」と騒ぎますが、世界全体が止まったのなら、世界全体からバレンタインデーがなくなったはず。つまり彼女だけが他の人より丸1日余計に止まってたんですね。これは映画で詳しく描いてないですけど、1秒先が蓄積していったので修正したということなら分かります。そこまで考えてないですけどね、この映画。

 何よりもダメなのは女性が気を失っている間に、あんなことやこんなことを勝手にやるこの男の気持ち悪さです。ストーカー男の犯罪行為、変態行為にほかなりません。本人の同意も取らずにこんなことをして許されると思ってるんでしょうか。口へのキスじゃなくて、額へのキスだから許されると思ってるのでしょうね。

 この映画を肯定することはそうした変態行為を肯定することと同じです。さらにあきれたことに、彼女は男がこうしたことをしたのを知っても、彼を好きになるんですね。この映画、完全に壊れてます。世界が止まってる間に彼女を命を救った、その結果、自分は大けがをした、というような展開にすれば良かったのにと思います。交通事故による大けがじゃ、ダメなんです。

【今月の1本】

「プラットフォーム」
 各映画祭で受賞しているスペインのSFスリラー。たぶん刑務所なんですけど、各部屋に2人が入れられていて、それが縦に長く並んだ建物が舞台。部屋の真ん中に大きな四角い穴があって、上からテーブルに乗った料理が降りてくる。上の人の食べ残しを下の人は食べるわけです。主人公は最初、47階層で目覚めるので、そこはまずまず料理が残ってるんですが、次に目覚めたのは171階層で、同房の男からベッドに縛られている。なぜかというと、この階層では料理にありつくことなんてできないので、同房の男は食べるために主人公を縛った、という展開。

 4月にキネマ館で公開された時には、どういう映画かよく分からなかったのと、それほど評価は高くなかったのでスルーしました。Netflixで配信が始まったので見たら、話の設定がユニークで面白かったです。少し「CUBE」(1997年、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督)を思い起こさせるところがありますが、よくこんな設定を思いつくなと感心しました。人間性をあらわにした残酷なところもあるんですけど、階級社会の風刺になっているし、最後は宗教的だったりします。