2005/09/18(日)「サマータイムマシン・ブルース」
「踊る大捜査線」の本広克行監督のタイムマシンを巡るスラップスティック。元は京都の劇団ヨーロッパ企画の舞台で、劇団の脚本家・上田誠が映画の脚本も手がけている。セリフが多いのはいかにも舞台劇らしい。内容はタイトル通りの時間テーマSFで、大学のSF研が壊れたエアコンのリモコンを元に戻そうと、昨日と今日を行ったり来たりする(タイムトラベル18回だそうだ)。それに25年後の未来から来た大学生が絡んでくる。時間テーマSFの常でタイムマシンが登場するまでがほとんど伏線になっている。話はよく考えてあるが、アイデアとしては初歩的。つじつま合わせに終わった観があり、センス・オブ・ワンダーは感じられない。その代わり、瑛太や上野樹里など大学生たちのドタバタぶりはおかしくて好感が持てる。もちろん、映画もそこを狙ったのだろう。ワンアイデアの小品として面白い。
夏休みの暑い日、ある大学のSF研究会の部室が舞台。映画は最初の1日をスケッチする15分ほどが伏線のための描写である。部室の古いエアコンのリモコンがコーラをこぼしたために壊れてしまう。暑さにうだる部員たちの前に翌日、マッシュルームカットの男が現れる。男が去った後、部室の中に不思議な機械があるのが分かる。それはタイムマシンだった。部員たちはどの時代へ行こうかと盛り上がるが、マシンのダイヤルは最大99年前。あまり遠い過去に行くのも危険なので、部員たちはエアコンのリモコンを昨日から持ってこようと計画する。このあたり、微妙にリアリティがある。3人が過去へ行くが、その間に相対性理論を研究している大学助手が「過去を変えると、現在が消える」とパラドックスを説明する。慌てた部員たちは昨日へ行った部員の行動を止めようと、タイムマシンに乗り込む。そこから次から次へと騒動が巻き起こる。
SF研なのにSFの意味も知らず、部員たちは野球に興じている。ただただ遊びが目的のクラブというのがいかにもありそうな設定。部員を演じるのは瑛太のほか与座嘉秋、小泉俊介、ムロツヨシにヨーロッパ企画の永野宗典、マッシュルームカットの男に同企画の本多力。部室の奥には部員が激減したカメラクラブの暗室があり、上野樹里と真木よう子がいる。上野樹里は「スウィングガールズ」と違って、素の溌剌とした部分はないが、好演している。
本広克行はキネ旬の特集で「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」の要素を入れたと語っている。大学の校舎の雰囲気が友引高校に似ているほか、所々に顔を出す神様役・升毅は夢邪鬼に重ね合わせているとのこと。街の名画座に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のポスターがあるのは当然としても、恐怖映画のカルト「マタンゴ」のポスターがSF研の部室にあるのにはにんまり。本広克行も影響を受けているのだろう。この映画、映画と演劇をコラボレーションする「プレイ・バイ・ムービー」の第1弾。10本作る予定だそうで、なかなか楽しみな企画だと思う。