2002/08/23(金)「ピンポン」
期待値よりはやや低かったが、良い出来だと思う。主演の窪塚洋介をはじめ、中村獅童、ARATA、サム・リー、大倉孝二、夏木マリ、竹中直人らいずれもキャラクターが立っている。スポ根ものとして先が読める展開なのだが、それでも面白く見れるのはキャラクターが際だっているからだろう。努力しても努力しても凡人は天才には負けるという厳しい現実と、天才ですらもただ才能だけでは一等賞にはなれないという当たり前の真実をさわやかに描いて大変気持ちがよい。曽利文彦監督、上々のデビュー作だと思う。
ペコ(窪塚洋介)の天才ぶりをもっともっと描くとさらに良かったと思うが、これは監督の計算なのかもしれない。ペコに対して実力を出さない(出せない)スマイル(ARATA)の本当の力をチャイナ(サム・リー)やドラゴン(中村獅童)や小泉コーチ(竹中直人)は見抜く。スマイルが力に目覚め始める前半のまま進めば、これはスマイルが主人公であってもおかしくない話だった。あるいは中国で落ちこぼれて日本にやってきたチャイナが主人公でもいいし、勝ち続けることを自分に課したたために卓球の楽しさを忘れてしまったドラゴンでも良かった。さらに限りなくどこまで行っても凡人にしかすぎないアクマ(大倉孝二)が主人公であれば、これはまた違った映画になったはずだ。スマイルに簡単に負けてしまい、「なんでお前なんだよー!」と叫ぶアクマの心情は天才モーツァルトに嫉妬した凡人サリエリの心情と同じものだろう。
曽利監督は、あるいは原作の松本大洋はペコを描くのと同じぐらいの比重をかけて、これらの脇の人物たちを描いていく。誰もが自分の人生では主人公。しかし、公の場でも主人公たり得ることが非常に稀であることもまた普遍的な真実だ。大方のスポ根物語が描くような落ちこぼれが勝っていく快感とは別次元のところでこの物語は成立しており、それにもかかわらず、脇の人物たちが強い印象を残す。天才がただ勝っていくだけの物語なら、面白い映画にはならなかっただろう。
2002/08/18(日)「仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL」
龍騎の物語は13人のライダーがミラーワールドを舞台に最後の一人になるまで戦うというものである。ライダーたちはモンスターと契約し、力を得る代わりに定期的にモンスターを倒してその力を契約モンスターに与えねばならない。映画はテレビシリーズに先行して、この戦いの最後の3日間を描く。新しく仮面ライダーファム(加藤夏希)と仮面ライダーリュウガが登場してくる。ライダーは6人に減っており、さらに凄絶な戦いが続くという展開。しかもリュウガがミラーワールドの封印を解いたため、モンスターたちが人間界に大挙押し寄せてくる。龍騎はライダー同士の戦いをやめさせようとし、同時にモンスターたちと戦っていく。
監督は「アギト」に続いて田崎竜太。脚本は井上敏樹。なぜ13人のライダーが存在するのか、その理由やミラーワールドにモンスターが存在する理由などを明らかにしていくのだが、どちらも話をまとめきれていない感じがする。アイデアだけがあって、技術が伴っていないというのは昨年も感じたこと。惜しいね。
13人のライダーの戦いというのはキネ旬のインタビューによると、「人造人間キカイダー」がヒントにあるそうだ。ミラーワールドと言えば、ミラーマンだが、モンスターの秘密などに僕は永井豪の影響を感じた。そういう過去のヒーローもののあれこれを取り入れており、基本的にあまり独自性はない。ラストは「ガメラ3」みたいだったし。
主人公の龍騎こと城戸真治(須賀貴匡)とファムこと霧島美穂(加藤夏希)のロマンスなどもう少しドラマティックにしたいところ。全体にドラマ部分の演出がうまくない。一番の儲け役はそのファム役の加藤夏希で、初めての女ライダーを颯爽と演じている。
2002/08/04(日)「ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET」
話はテレビシリーズが終わった後の設定で、まあ番外編と言っていい内容。昨年公開された「ウルトラマンコスモス」(未見)はテレビシリーズが始まる前の話だったので、2つの映画にテレビを挟む構成となるわけだ。しかし、まだテレビ終わってないんですけど。
ムサシ(杉浦太陽)はチームEYESを離れ、宇宙飛行士になっている。調査のため向かった遊星ジュランで、ムサシは死の星になったジュランの惨状を見る。砂漠を好む怪獣スコーピスが破壊したらしい。ムサシの宇宙船も狙われるが、そこへコスモスが現れ、ムサシを救う。というのがタイトル前の部分。
地球に帰ったムサシは友人の結婚式に出るためサイパンへ行く。幼なじみのマリ(西村美保)とダイビングした際、巨大な怪獣レイジャと遭遇。レイジャは海底に住むギャシー星人が操っていた。ギャシー星人はスコーピスに星を破壊され、地球に秘かに逃げてきていたのだった。ギャシー星人のシャウ(斉藤麻衣)は人間に理解を示すが、ジーン(松尾政寿)は強い警戒心を抱いている。そこへスコーピスが襲来。レイジャはスコーピスに立ち向かうが、反対にやられてしまう。ギャシー星人とムサシの交流を描きつつ、映画は後半、北九州を舞台にスコーピスとそれを操るサンドロスに立ち向かうムサシとコスモスの活躍を描く。
テレビシリーズの後の話なので、ムサシ=コスモスということはチームEYESのメンバーは知っている。しかし、ムサシはコスモスと別れたらしく、なかなか一体化できない(自由に変身できない)というのがポイントか。SFXはテレビよりはるかにましだが、話に破綻はないにしても今ひとつ新鮮さがないし、引きつけられる部分もない。監督の北浦嗣巳は「特撮怪獣映画」を目指したそうだが、ゴジラやガメラのような怪獣映画はまず怪獣の魅力を十分に伝えるところが基本にある。スコーピスは出自もはっきりしないし、その親玉のサンドロスもただ強いだけである。基本的にはスーパーヒーローもののテレビの話を引き伸ばしただけという感じが拭いきれない。怪獣映画の分かる脚本家を入れないとダメでしょう。ギャシー星人と一体化したレイジャの造形はデジモンみたいだった。
併映の「新世紀ウルトラマン伝説」は20分程度の短編。過去のウルトラマンシリーズの各場面をつないでいく構成で、懐かしい映像も。ウルトラセブンが十字架に磔にされる場面を見て、その劇的な映像の力をあらためて感じた。セブンシリーズはやはり名作。こういうドラマティックな場面がコスモスにもあればね。