2005/08/17(水)「傷痕」

 今年のMWA賞を受賞した短編。ミステリマガジン9月号に掲載されている。自宅で胸にステーキナイフを深々と刺された女が警察に通報する。女は強盗が自分を刺し、財布を奪って逃げたと言う。奇跡的に急所を外れていたとはいえ、女の傷は生きているのが不思議なくらいの深さだったが、刑事は現場の状況と周辺の捜査から女の自作自演と結論する。6年後、女は事件の再捜査を要求する。

 物語のヒロインは事件発生当時、警察官志望で被害者サービスの仕事をしていた。被害者と心を通わせるが、自分が警察志望であると分かると、交流はなくなる。その後、事件を担当した刑事と結婚し、今は地域連絡官になった。これは市民からの事件の審査請求を担当する部署。つまり、ヒロインは夫が担当した過去の事件を再捜査すべきかどうかを判定することになるのだ。

 文章がうまいためか面白く読めるのだが、設定には無理があると思う。背中に届くほどの傷を自分で刺せるかどうか。それを自作自演と決めつける刑事というのもややリアリティに欠ける。展開もミステリとしては物足りない面が残る。これが受賞したのは純文学っぽいところがあるからではないかと思う。キャラクターの描き込み、心理描写などはうまいのである。

 原題は“Something about a Scar”。作者のローリー・リン・ドラモンドは元警察官とのこと。

2005/08/16(火)「妖怪大戦争」

 「妖怪大戦争」パンフレットかつて大映の夏興行の定番だった妖怪ものを、大映を買収した角川映画が製作。一見して類似性を感じたのは原口智生の快作「さくや妖怪伝」(2000年)で、同じ妖怪ものだし、剣を持った少年(少女)が悪に立ち向かうという基本プロットも同じである。ただ、「さくや」が1時間半足らずだったのに対して、この映画2時間3分もある。原作・脚本が荒俣宏なので話はしっかり作ってあるにしても、どうしても中だるみを感じてしまう。子ども向けの映画であると割り切り、導入部分をてきぱきとまとめて1時間半程度にした方が良かっただろう。全体として悪くない出来だけにそれだけが惜しい。

 映画はプロデュースチーム「怪」の雑談が発端にあったそうだ。水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきというメンバーで、それぞれゲスト出演もしている。加藤保憲を敵役にしようと発案したのは京極夏彦だそうで、映画は加藤が出ることによって「帝都物語」番外編みたいな雰囲気もある。残念なことに加藤を演じるのは嶋田久作ではなく、豊川悦司。豊川版加藤も悪くはないが、どうせなら嶋田久作に出て欲しかったところだ。監督の三池崇史は「ゼブラーマン」で意外にスーパーヒーローものに理解があることを示したが、今回も的を外していない。導入部分では妖怪の怖さを見せ、中盤からユーモアを散りばめている。おまけに出てくる女妖怪がどれもこれも色っぽい。鳥刺し妖女アギ役の栗山千明、川姫役の高橋真唯の2人が印象的で、個人的にはワルを演じる栗山千明がはまり役だと思った。ろくろ首役の三輪明日美もいい。

 主人公のタダシ(神木隆之介)は両親の離婚で鳥取の祖父(菅原文太)の家に母親(南果歩)と住む。東京から来たために学校ではいじめられている。タダシは神社の祭りで麒麟送子(きりんそうし)に選ばれる。麒麟送子は悪と戦う定めで、選ばれた者は大天狗の聖剣を取りに行かなくてはならないとの伝説があった。大天狗の山に向かったタダシは妖怪の姿を見て逃げ出すが、途中、けがをした不思議な生き物と出会う。その生き物はスネコスリで、やはり妖怪の一種。再び大天狗の山に引き寄せられたタダシは猩猩(しょうじょう=近藤正臣)、川姫(高橋真唯)、川太郎(阿部サダヲ)と出会い、ついに大天狗のもとへたどり着く。聖剣を取ろうとしたところへ、鳥刺し妖女アギ(栗山千明)が機怪(人間に捨てられた機械と妖怪が合体した怪物)とともに現れる。アギは人間に復讐を誓う魔人・加藤保憲(豊川悦司)に賛同し、妖怪たちを狩り集めていた。タダシは聖剣で立ち向かうが、アギに剣を折られてしまう。スネコスリを連れ去られたタダシは妖怪たちの協力を得て、加藤に立ち向かう。

 これで妖怪大戦争というわけだが、おかしいのは集まった妖怪たちが、加藤が敵と知って、「それでは…解散」と帰ってしまうこと。このあたりから映画はユーモアの度が強まってくる。妖怪のキャストが多彩でおかしい。油すまし=竹中直人、小豆洗い=岡村隆史、ぬらりひょん=忌野清志郎、大首=石橋蓮司、一本だたら=田口浩正、雪女=吉井怜、神ン野悪五郎=京極夏彦、魍魎=塩田時敏、山ン本五郎左衛門=荒俣宏、妖怪大翁=水木しげる、といった面々である。人間側も多彩で佐野史郎、津田寛治、大沢在昌、徳井優、永澤俊矢、田中要次、宮迫博之、柄本明といった顔ぶれ。宮部みゆきは学校の先生役で登場する。三池崇史の人徳なのか、ちょい役も含めてこんなにキャストがそろった映画も珍しいだろう。

 加藤の復讐は物を使い捨てにする人間たちへの憎しみから来ている。そういう理由にはあまり必要性を感じないのだが、子供たちに見せるにはそうした部分があった方が良いのかもしれない。ただし、これを見た子供たち、特に男の子は高橋真唯の太ももや栗山千明の衣装にしびれるのではないか。そうした部分を入れているところに三池崇史らしさを感じた。「ゼブラーマン」のゼブラナース(鈴木京香)の衣装を彷彿させるのである。逆に女の子がしびれるのは神木隆之介のけなげな姿なのだろう。

 パンフレットに収録された「怪」の4人による座談会(2002年12月収録)では3部作の構想が紹介されている。3年前の話だからどうなることかは分からないが、続編を作るなら、キュッと引き締まったコンパクトな映画を期待したい。

2005/08/07(日) 個人情報流出

 楽天からやっぱり漏れてました、とメール。住所、氏名、電話番号、カード番号、アドレスなど。取引で入力した情報はすべて漏れたようだ。やっぱりね。

 カード番号を変えなくてはいけないが、今、沖縄にいる。帰ってから手続きするしかない。それに10日には先月分の引き落としがある。先月分の明細には怪しい点はなかったので、とりあえず大丈夫のようだ。

携帯から更新

 携帯でメモ帳に書いていたら、文字数に制限があって途中で入力できなくなった。auの携帯はメールは5000文字までOKなのでメモ帳も大丈夫と思いこんでいたが、違うのですね。日記をメールで更新できるようにしておかないといけないなあ。

沖縄1日目

 「リザンシーパークホテル」昨年と同じく夏の旅行は沖縄にした。9時発の飛行機で出発。1時間半かかるので空港で買った打海文三「ハルビン・カフェ」を読む。第1章しか読めなかったが、すごく面白い。続きが楽しみ。

 午前10時半に沖縄空港着。オリックスレンタカーの迎えの車に乗る。昨年はニッポンレンタカーで営業所は空港のそばだったが、今回は15分ほど離れた所。会社の規模の差ですかね。借りた車はトヨタのアレックスだった。

 ホテルは午後1時チェックインなので先に昼食を取る。営業所に隣接したアウトレットモール「ASHIBINAA」。僕はサンドイッチとコーラ。家族はカレーとか沖縄そばとかスパゲティとか。12時過ぎに車でホテルへ向かう。カーナビに行き先をセットしようとしたら、ホテル名を入れても探せない。電話番号もダメ。仕方ないので住所を入力したが、番地までは入力できない。おまけに現在いる場所が海の中になっている。このカーナビ古いのだろうか。

 高速に乗って1時間ほどでリザンシーパークホテル谷茶ベイ写真=着。大きなホテルである。10階建てで1フロアに100部屋以上ある。予約しておいた部屋はファミリールーム。2部屋をつないだ広さで快適。バスルーム2つ、テレビも2台ある。ホテル自体は新しくはないが、広いのでまあいいでしょう。少し休んでホテルの前にある海へ。去年の残波岬は石がゴロゴロしてうれしくなかった。ここは貝がらやサンゴの破片がゴロゴロ。沖縄には長い川がないので、砂もないのだと推測。それでも残波岬よりは良かったのでしばらく泳ぐ。

 続いて屋内プール、屋外プールと泳いだらぐったり。部屋で少し休んで夕食に行くことにする。ホテルにはレストランが8つある。実は沖縄料理は苦手。イタリア料理のレストラン「カフェ・ルマーニ」にした。家内と僕はディナーコース、子供はピザとスープ、飲み物。ピザはLサイズを注文したら相当大きなのが出てきた。ディナーコースはメインディッシュを伊勢エビと牛フィレから選べる。それぞれ頼んで食べ比べてみたが、どちらも味はイマイチか。牛フィレの方がましだが、宮崎牛のおいしさに比べると、どうしても劣ります。

 部屋に戻ってシャワーを浴びる。ここには大浴場もあるが、800円かかる。疲れていたので、お風呂は明日にする。東アジア選手権の日本―韓国戦を見た後、10時半ごろ就寝。

2005/08/05(金)「亡国のイージス」

 「亡国のイージス」パンフレット映画の登場人物たちがこだわる亡国に関する部分がよく伝わってこない。今の日本の現状にどう不満があるのかの説明が不足しており、分かったような分からないような気分になるのだ。残るのは「ダイ・ハード」的シチュエーションのアクションということになるが、これは阪本順治にとって得意な分野ではない。例えば、中盤のイージス艦から発射されたミサイルで護衛艦が沈むシーンなどもう少し緊迫感が欲しいと思えてきてしまう。中井貴一の「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」というセリフほどアクションが戦争には見えないのである。「ダイ・ハード」的シチュエーションにしては、アクションに入るまでの前ふりが長すぎると思う。

 加えて、登場人物の背景を思い切り簡略化した結果、ヨンファ(中井貴一)と工作員の女ジョンヒ(チェ・ミンソ)の関係(原作では兄妹)がよく分からなくなっている。殺人マシーンであるジョンヒは原作では強烈な印象を放つが、チェ・ミンソはそれほど強そうにも見えない。一番弱いと思うのはテロリストたちの正体で、原作では北朝鮮とはっきり書いてあるのに映画ではこれがあいまい。具体的に国名を出せないさまざまな事情は分かるけれど、それなら架空の国にでもしてしまえば良かった。ヨンファの国がどういう状態か、どういう扱いを受けたかが示されないので、テロリストたちの真の目的もあいまいになり、ヨンファに同調するイージス艦副長の宮津(寺尾聰)にも説得力がなくなっている。ヨンファが自分の国をどうしようとしているのかをもっと描くべきで、それとヨンファの過去を組み合わせなければ、テロリストたちの動機が見えてくるはずはない。テロリストに対抗する仙石(真田広之)と如月行(勝地涼)にしてもキャラクターの描き込みが足りず、この映画、キャラクターの掘り下げ方が足りなかったのが一番の敗因なのではないかと思う。長い原作のまとめ方としては「ローレライ」の方がうまかった。

 ヨンファとジョンヒの兄妹は収容所に勤務する両親を暴動で殺され、軍の高官に引き取られた。工作員として育てられたが、過酷な任務でジョンヒは声を失う。敵国の捕虜になり、拷問によって廃人になる寸前のところをヨンファに救出される。やがてヨンファは育ての親の高官を殺し、政府の打倒と国の立て直しを意図するのだ。凄腕の特殊工作員であることと、父親殺しという点で如月行とヨンファには共通点があり、だからこの兄妹は如月を仲間に引き入れようともする。映画ではこうした部分が一切なく、水中の戦いで如月とジョンヒが唐突にキスをする意味がまったく分からない。宮津は国家に息子を殺される。国家への復讐という点でヨンファと共通点があるのである。そうした暗い情念を持った登場人物たちが映画ではまったく薄っぺらになっている。もちろん、原作をそのまま映画にできるわけはないから、省略や変更があるのは当然のこと。しかし、それにしても中途半端な描写が多すぎるように思う。阪本順治は本来なら、こうした人物を描き分けるのが得意のはずだが、脚本にする段階で失敗しているのではどうしようもない。

 原作を読んだ時に気になったのは福井晴敏の国防に対するスタンス。敵と対峙しても先に発砲することを許されない自衛隊の在り方への批判と受け取られかねない部分があるのだ。原作は冒険小説的側面を強調しているので、後半、この部分は薄くなるけれど、こういう考えは改憲派に利用されるなと感じた。映画に自衛隊が全面協力したのも原作にこういう部分があったからだと思う。協力をもらったからといって、自衛隊PR映画にする必要はさらさらなく、巧妙に反自衛隊映画にすることもできるのだが、阪本順治にはそういう意図はなかったようだ。この種の映画には政治意識が必要で、硬派の話が書ける人でないと、脚本化は難しい。そういう人材、今の日本映画にはあまり見あたらないのが悲しいところだ。

 言わずもがなのことを書いておけば、原作の主人公ははっきりと如月行である。如月行を演じられる俳優もまた見あたらないので主人公を仙石にしたのは仕方がない。原作の仙石は真田広之ほど格好良くはなく、普通のおっさんの感じだが、真田広之はそうした部分も少し取り入れつつ、アクション映画の主演をこなしていて悪くないと思う。

2005/08/04(木) CharsetがShift_JISのメール

 Spamに多いので削除条件に使っている。不具合もないようなので、拒否条件にしようと思ったら、中には一般ユーザーでわざわざShift_JISにしている人がいるのだ。Vine LinuxのML過去メールを検索したら5人いた。メーラーはBeckyやThunderbirdやOutlook。日本語の標準設定はISO-2022-JPなので、メーラーもデフォルトの設定ではこうなっているはず。それがShift_JISにしてあるということはわざわざ設定を変えたのだろう。

 何か意図があるのか、単に知らなかったのか分からないが、こういうメールはMLのアーカイブで文字化けを起こす。Spamと間違えられる可能性も大きいので標準に戻した方が無難。