2005/06/06(月) キネ旬6月下旬号
巻頭特集は「ミリオンダラー・ベイビー」。既に公開されているので、いつものキネ旬らしくない掲載の遅さだが、これは終盤のネタを割るために仕方のない措置だったのかもしれない。クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマンのインタビューのほか、崔洋一、宇田川幸洋、新藤純子、香川照之の文章が結末に触れている(注意書きがある)。この映画の分析ではそういう部分がないと、後世に残す文章として十分ではないのだろう。
ただ、まだ見ていない人がこの文章を読む可能性は大きいわけで、注意書きがある以上、読むのは本人の責任だという理屈には無理がある。こういうのって、ついつい読んでしまうのだ。ま、原作を読んでいる人には関係ないことではある。
結末に触れていない小林信彦は「映画史にそびえ立つ作品」と評している。分かりやすいのは、前半は従来のイーストウッド・ファンを泣かせ、後半はイーストウッドを知らなかった観客を泣かせるだろうという宇田川幸洋の指摘。「その二者が、直線的なシンプルなひとつながりの構造をなしているところが、すばらしい」と宇田川は書いている。その通りで、この映画はファンの枠を超えて支持を集める作りになっており、そこに僕は大衆性を感じた。
ちなみにREVIEW2005では評者4人が全員四つ星を与えている。これほど絶賛ばかりを目にする映画というのも珍しい。