2013/11/24(日)「そして日本経済が世界の希望になる」

 リフレ派のノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンによるアベノミクス肯定論。国際ジャーナリストの大野和基がインタビューしてまとめたもので、クルーグマン自身の著書ではなく、日本でのみ発売されているそうだ。まあ、それはそうだろう。まだ途上にあるアベノミクスだけを論じた著書が欧米でそれほど関心を集めるとは思えない。英語のタイトル(クルーグマン自身がつけたものかは分からない)は「The World Looks to Japan's Economy Again」だから、「希望になる」は少しオーバーで「期待する」とか「注目する」というニュアンスだ。

 アベノミクスの三本の矢のうち、クルーグマンが特に評価しているのは金融緩和で、これはかねてからの持論だから当たり前。反対しているのは消費税増税で、「責任ある財政を求める時期尚早の努力は、回復をかえって遅らせ、経済を弱らせる結果を招いてしまう」としている。政府・日銀が掲げる2パーセントのインフレターゲットを達成すれば、公的債務は目減りし、税収も上がっていく。アベノミクスが始まったばかりで消費増税を決めるのは時期が早すぎるというわけだ。クルーグマン自身は4パーセントのインフレが必要としている。

 あくまでインタビューなので、新しさや深い内容があるわけではなく、サラッと読むのに適した本だ。解説で山形浩生が「6月の暴落」と書いているのには少し違和感がある。日経平均株価が1日で1144円も暴落したのは周知の通り5月23日。6月13日に12445円まで下げたから、ここまでの下げの期間を指しているのだろうが、発端となった日を指すのが普通だろう。

レモン収穫

収穫したレモン

 明日は雨になりそうなので、庭のレモンを収穫した。レモンの木は高さ3メートル近くになっていて、収穫用のハサミと高枝切りバサミを使った。高枝切りバサミは初めて使ったが、なかなかに重たいですね。レモンの木にトゲがあるのも初めて知った。

 収穫したのは150個以上。まだ数十個、枝に残っている。全部で200個以上、実を付けたんじゃないかな。緑色で硬いが、香りはいい。そのうち黄色くなるのでしょう。スーパーに並んでいるものより不格好だが、まったくの無農薬(ほったらかし、とも言う)なので安心。一部を出しておいて、残りは保存のため倉庫の冷蔵庫へ入れた。

2013/11/23(土)「先取り!NISA投資の銘柄選定教室」

 NISA口座で買う株の銘柄を紹介した電子書籍。毎週クスクス笑いながら聴いているラジオNIKKEI「櫻井英明の投資知識研究所」で昨日、PRしていたので買った。amazonのKindleストアで280円。迷いもなく買える価格だが、この価格で多くを期待してはいけない。1時間ほどで読み終わる本だろうと思ったら、15分で読み終わった。電子書籍オリジナルの本はお手軽なものが多いのだ。

 中身は「第1章 NISA具体的資産運用のすすめ」「第2章 初心者でもわかる銘柄選定法」「第3章 コレが足で稼いだ厳選10名銘柄」。NISAについて知っている人は1章、2章は読み飛ばしてかまわない。3章で紹介されている銘柄に投資して株価が上がれば、すぐに代金の元は取れるだろう。個人的に興味の持てる銘柄(10万円以下)もあった。

 NISA口座は短期の投資には向かないから、基本的に株式の保有にも向いていないと思う。保有する株でふさわしいのは高配当の銘柄ぐらいだろう。昨年10月までは配当利回り4、5パーセントの銘柄がいくらでもあったが、11月からの上昇相場で配当利回りはがくんと落ちた。今、高配当の銘柄は上昇に乗り遅れたものと見ていい。今後、上昇する可能性がないとは言えないけれど、期待薄ではないか。この10銘柄もNISAの外で買った方がいいのではないかと思う。

 個人的にNISA口座は日本株に偏ったポートフォリオの是正に使おうと思っている。外国株式の投信かETFを購入するつもりだ。山崎元「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(amazon)ではTOPIX連動型上場投資信託とSMTグローバル株式インデックス・オープンを50:50の割合で購入することを勧めている。「ベストの運用ではないが、まあまあの運用ができる」というこちらの方がNISAの使い方としては納得できる。

2013/10/30(水)「バビロンの大富豪 『繁栄と富と幸福』はいかにして築かれるのか」

 富豪になるための現実的で堅実な方法を教える物語。収入の1割を自分のものする。つまり、貯蓄するのがその第一歩。ためたお金は投資すれば、お金は自分で増えていってくれる。このほか、働くことに喜びを見いだす、簡単でうまい投資話には気をつける、華美な生活は送らない、などいちいち納得できる内容だ。

 1920年代に出版されて延々と読まれ続けてきたのはこの本に書いてあることが時代を超えた真理だからだろう。実際の億万長者を調査したトマス・J・スタンリーとウィリアム・D・ダンコの「となりの億万長者」を併せて読むと、この本に書いてあることがいかに当たっているかがよく分かる。投資教育がない日本の中学高校生にぜひ読ませたいテキストだ。

2013/10/07(月)「薬をやめれば病気は治る」

 薬は化学物質なので体にとっては毒、というのが著者の基本的スタンス。少し極端にも思えるが、素人考えでも高血圧や糖尿病など常用しなければならない薬が体に良いとは思えない。

 著者が飲まない方がいい薬として挙げているのは高血圧、コレステロール、糖尿病、睡眠薬・精神安定剤、胃薬、鎮痛剤、抗生物質、骨粗鬆症、風邪薬、逆流性食道炎などの薬。すべての薬を否定しているわけではなく、短期的に効果的に服用する方法を推奨している。驚くのは牛乳も毎日飲まない方がいいとしていることで、牛乳に含まれるカゼインが「最も強力な化学的発がん物質だ」とするコリン・キャンベル博士の説を紹介している。

 西洋薬が症状を緩和する対症療法であるのに対して漢方薬は体全体の調子を整えることを目指す。対症療法では根本的原因を取り除くことはできないのでこれは理にかなった方法だ。著者が進めるのは薬食同源の考え方で、これはもっともだと思う。サラッと読める本なので何らかの薬を毎日飲んでいる人は読んで見た方がいい。

2013/10/01(火)「共震」

 東日本大震災の傷がまだ癒えない被災地の現状を伝えるミステリー。著者の相場英雄が書きたかったのは被災地の現状の方で、ミステリーではない。本来ならノンフィクションとして書いた方が良かった題材だろう。なぜノンフィクションにしなかったのか。著者はビジネスジャーナルのインタビューでその理由について「ノンフィクションの本は本当に売れないです。どんなに大事なメッセージを込めても、ノンフィクションというだけで、世間はそれほど注目してくれない」と話している。

 より多くの人に被災地の現状を伝えるには読者の多い小説にした方が良いという理由は一面でうなずけるが、読んでいて、やはりこれはノンフィクションで読みたかったと思わずにはいられない。作品の説得力が弱いのだ。どこまでが被災地の現状か、読者には分からない。それが著しく説得力を欠いている。

 被災地の復興に力を尽くした県職員が殺されるというミステリー部分には特に評価すべき点がない。しかもこれが終盤、物語の中心に居座ってくると、どうも居心地が悪くなってくる。300ページ余りで被災地の現状が伝えられたとも思えない。微に入り細にわたった描写でこの倍ぐらいの分量で書いた方が良かったと思う。すぐに読めるページ数で収めたのは、ページ数が多くなると、本の価格が高くなり、より多くの人に手にとってもらえなくなるからだろうか。著者の真意はそんなところにはないだろうし、被災地に何度も足を運んだことには頭が下がるが、この本の完成度では被災地を舞台にしたお手軽な本と受け取られかねない。小説の長さはその質とは関係ないが、長さが必要な小説もあるのだ。