2013/02/10(日)「イノさんのトランク」
まいった。泣けて泣けてしょうがなかった。録画しておいた「イノさんのトランク 黒澤明と本多猪四郎 知られざる絆」をようやく見た。昨年12月20日にNHK-BSプレミアムで放送されたドキュメンタリー。黒澤明と本多猪四郎の友情を本多の妻きみの視点から描き、深い感動を残す傑作だった。
戦前の助監督時代に意気投合した2人はその後、死ぬまで友情をはぐくむことになる。本多は戦争に行ったが、黒澤は行かなかった。復員後、30代半ばだった本多には仕事がなく、東宝からは監督になることは諦めるように言われる。そんな時、黒澤は本多に「野良犬」の助監督を依頼する。これが本多の監督への道を開くことにつながった。晩年も会えば、2人は映画の話ばかりしていたという。温厚な本多に対して、黒澤は現場で怒ることが多かった。正反対の性格であり、お互いに尊敬しあっていたから、友情は長く続いたのだろう。
本多が死んだ時のことについて黒澤、本多の映画に多数出演した土屋嘉男はこう話す。「さぞがっくりしているだろうと思って自宅に行ったら、黒澤さん、言いました。『さあ、めそめそなんかしていられるか! 元気出してこれから頑張るぞ』。あれはね、すごい哀しみだったんですよ」
僕は「ゴジラ」シリーズから本格的に映画を見始めたので、本多猪四郎は最初に名前を覚えた監督だ。同時に小学生の時にテレビで見た「マタンゴ」によって深いトラウマを刻みつけてくれた恨み多い監督でもある。しかし、監督自身のことは何も知らなかった。亡くなっても、「いい人だった」と言われる人は幸せだなと思う。
2013/02/10(日)「つばさ」
第1回アカデミー作品賞を受賞したサイレント映画「つばさ」(1927年)がWOWOWで放映された。僕は名前だけ知っていて初めて見た。第一次大戦を舞台にした戦争映画で、当時としてはかなりの超大作。複葉機と戦車、白兵戦が入り乱れるクライマックスには相当の予算がかかっている。古い映画とバカにできない迫力だ。Wikipediaには「空中戦映画の先駆的な超大作として映画史上に名高い作品」とある。
終盤の展開には少し疑問があって、現代の映画だったら、ここから深刻なドラマが始まるところだろう。この映画はさらりと反戦に絡めて(すべて戦争のせいにして)終わっている。