2013/03/31(日)「ひまわりと子犬の7日間」
実際に犬の殺処分の様子を見たことがあるが、炭酸ガスで殺される犬たちは容易にアウシュビッツを思い起こさせる。宮崎県内だけで年間4000頭の犬がそういう殺し方で処分されているのに、その中の一家族の母犬と子犬だけを助けることに何の意味があるのか。映画はそこにまったく触れていかない。問題意識の低さと甘さが露呈している。
堺雅人の涙を見て、元の飼い主の涙を思い出すという犬の擬人化にも大いに疑問がある。新人監督がまじめに一生懸命に撮った映画だが、この程度の出来を褒めることは褒め殺しにつながりかねない。原作がどうあれ、脚本を徹底的に練り上げるべきだっただろう。話の膨らませ方が足りないのだ。1時間のテレビドラマですむような内容を映画にすることはない。平松恵美子監督、くれぐれも注意して2作目に取り組んでほしいと思う。
2013/03/03(日)「ふがいない僕は空を見た」
「恋の罪」がR18+なのはよく分かるが、これのどこがR18+なのだろう。これでR18+の判定になるのなら、描写を少しソフトにして高校生でも見られる映画にした方が良かったような気がする。昨年は「ヒミズ」「桐島、部活やめるってよ」と青春映画の傑作があったが、この映画もそれに連なる、そして少しも劣らない厳しい傑作だと思う。キネマ旬報ベストテン7位。
問題は何も解決しない。しかし、登場人物達は受けたダメージから、厳しすぎる現状から、なんとか立ち上がろうとする。スキャンダルに巻き込まれ、不登校だった主人公は学校に行くようになり、その親友は大学を目指して図書館で辞書をめくる。
「俺にはとんでもない部分があるから、とんでもなく人に優しくしなくちゃいけないんだ」。
「バカな恋愛したことないやつなんて、この世にいるんすかねえ」というセリフを吐くみっちゃん先生(梶原阿貴)のがらっパチなたくましさが良く、主人公の母親で助産師の原田美枝子の包容力がいい。