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2014年12月07日の記事

2014/12/07(日)「ショート・ターム」

 「実名レビュー評価サイトRotten Tomatoes(ロッテン・トマト)で満足度99%、2013年No. 1の実績を記録」と、映画のパンフレットや公式サイト、キネ旬の記事にまで書いてある。ロッテン・トマトをよく利用している人には説明するまでもないが、99%は満足度ではない。肯定的な評価をしたレビュワーの割合だ。そうしたレビュワーの採点を平均すると8.4で、これは2013年の映画では「ゼロ・グラビティ」「それでも夜は明ける」「ビフォア・ミッドナイト」に次いで4番目となる。高く評価されたことは事実だが、ナンバーワンではない。間違った認識に基づくPRの仕方は少し気になった。

 ショート・ターム12は18歳以下の少年少女のための短期保護施設。親からの虐待など家庭に事情がある子供たちのシェルターの役割を果たしている。ここにある日、ジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女がやって来る。「父がすぐに迎えに来る」と言って周囲になじもうとしないジェイデンだが、ケアマネージャーのグレイス(ブリー・ラーソン)はジェイデンが創作したタコとサメの物語を読んで、ジェイデンが父親から虐待を受けていることに気づく。グレイスは施設で一緒に働くメイソン(ジョン・ギャラガーJr)と同棲しており、妊娠していることが分かるが、メイソンには内緒で病院に中絶の予約をしてしまう。グレイスが妊娠するのは二度目だった。

 施設の子供たちが描かれるのかと思ったら、グレイスの話がメインになっていく。グレイスもまた施設の子供たちと同じような過去を持っていたのだ。グレイスは自傷行為によって傷だらけになった足首をジェイデンに見せ、「血が流れている間はいやなことを忘れていられる」と話す。「くしゃみをして足の腱を切りそうになってしまったの」。グレイスにとってジェイデンを助けることは自分を助けることでもあるのだろう。

 児童虐待が許せないのは子供にとって逃げ場がないからだ。本来は守ってくれるはずの家庭が地獄のような状態になってしまった子供の境遇は想像を絶する。友達になる代わりにタコの足をすべて食べてしまうサメの物語、ジェイデンが考えた物語はこうした状態を悲痛に表現している。

 主演のブリー・ラーソンがいいし、良い映画なのだが、どうも食い足りない思いが残るのは1時間37分という上映時間のためではなく、問題への切り込み方、深化のさせ方が今一つ足りないからだろう。もっと話に奥行きがほしいところだ。監督・脚本のデスティン・ダニエル・クレットンはこれが2作目。この映画はグループホームで働いた経験を基にしたという。