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1969年にニューヨークのハーレムの公園で行われた「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメンタリー。
フェスティバルは6月から8月にかけて日曜日に6回開かれ、計30万人の観客を集めた。
4台のビデオカメラで撮影された映像は当時、「ウッドストック」とは対照的に「売れない」と言われ、撮影者の自宅の地下室に眠ることに。
プロデューサーのロバート・フィヴォレントはこの映像素材のことを2016年に知り、撮影者と契約を交わして映画の制作を始めた。
テープは40時間分あり、製作総指揮と監督を務めたアミール・“クエストラヴ”・トンプソンはそれを編集して3時間25分にし、さらに短くして2時間弱の映画に仕上げた。
映画はジョン・F・ケネディ、マルコムX、キング牧師、ロバート・ケネディの暗殺をはじめベトナム戦争やアポロ11号の月着陸など激動の60年代の世相を織り込みながら、フェスティバルの熱気を伝えています。
黒人指導者や理解のある政治家の暗殺が続いたことから当時のハーレムは暴動の一歩手前。
フェスティバルにはそれを沈静化する狙いもあったようですが、参加アーティストたちの現状に対する抗議の姿勢をしっかり見せています。
19歳のスティーヴィー・ワンダーや「To Be Young, Gifted and Black」を歌うニーナ・シモンも良かったのですが、個人的にはフィフス・ディメンションの「輝く星座(アクエリアス)/レット・ザ・サンシャイン・イン」のパフォーマンスが一番響きました。
52年前のコンサートなので懐メロ気分も湧いてくるんですが、黒人差別に関して52年前と今の状況がほとんど変わっていないことを強調した作りが評価の高さにつながっているのだと思います。
アメリカでの評価を見ると、IMDb8.2、メタスコア96点、ロッテントマト99%と絶賛となってます。
「TSUTAYA CREATOR'S PROGRAM」で準グランプリを受賞した企画・脚本を堀江貴大監督自身で映画化。
人気漫画家の早川佐和子(黒木華)は結婚5年目。夫の俊夫(柄本佑)も漫画家だが、新作を4年も発表していず、今は佐和子のアシスタントをしている。佐和子の母親(風吹ジュン)が事故に遭い、2人は実家に帰った。
俊夫は佐和子が書いた新作漫画のネームで、自分と編集担当者の千佳(奈緒)の不倫を描いていることに衝撃を受ける。
さらにその話は自動車教習所の先生(金子大地)と佐和子の不倫に発展していく。果たして佐和子は俊夫の不倫を知っているのか、教習所の話は本当なのか。
話が二転三転するのは面白いのですが、どうも狭いところをぐるぐる回っている観があります。
演出のメリハリも欲しいところ。
とはいえ、黒木華と柄本佑なので最後までそれなりに見せます。
奈緒も良かったです。
東京在住の2人のクルド人青年に焦点を当てたドキュメンタリー。
オザンとラマザンはトルコ国籍のクルド人で、身の危険を感じて家族と小学生の頃に日本に逃げてきた。
家族ともども難民申請をしているが、認められず、不法滞在状態で入管への収容をいったん解除される仮放免の身分。不法滞在なので働くことは禁じられ、もちろん健康保険等もない。2カ月に一度、入管に行き、現状報告する義務がある。
日本政府がクルド人を難民と認定したことはないそうで、こうした宙ぶらりんな状態が何年も続くことになっています。
クルド人に限らず、日本政府が難民認定に消極的、というか、追い返す施策を取っているのは難民が増えるのを警戒しているからでしょう。
世界5位の移民大国になったにもかかわらず、通常の移民よりも困っている人たちに手を差し伸べないことには疑問を感じます。
日本政府に必要なのは人道的観点からの施策でしょう。
監督はテレビドキュメンタリーを手がけてきた日向史有。
フランス人のアルチュール・アラリが監督。
1974年までの戦後29年間、終戦を知らずにフィリピンのルバング島で戦った小野田寛郎元少尉を描いています。
小野田元少尉と言えば、僕は軍刀をフィリピン軍の司令官に渡す場面をテレビで見たのを覚えています。
投降する際の旧日本軍の作法だったと説明され、会見で述べた言葉も含めて「恥ずかしながら帰って参りました」の横井庄一さん(元軍曹)とは違うな、さすが将校だと思えましたし、一般的な評価もそうでした。
映画には小野田がルバング島の住民を殺す場面が3度描かれ、こういうこともあったんだと驚きますが、実際には3人どころではなく、本人の言葉によると、30人を殺害、100人に負傷させたそうです。
そうした小野田の負の側面は当時から一部報道されていたようですが、賞賛の世論の中に埋もれていました。
ルバング島民にとって、小野田とは29年間にわたって略奪と殺傷を繰り返してきた凶悪な犯罪者にほかならないでしょう。
小野田が終戦を知らなかったということを疑問視する見方もあります(ラジオで日本の短波放送を聞いていたのですから知らなかったはずはないでしょう)。
アラリ監督は父親から聞いて小野田のことを知り、、日本在住のジャーナリストだったベルナール・サンドロンの著書「ONODA」を読んで映画化を決めたそうです。
174分という長尺なのでジャングルシーンなど長すぎると思えますが、負の側面を最小限に抑えたフィクションとして見るならよく出来ています。
壮年期の小野田を演じる津田寛治はかなり体重を落として外見を似せていますし、小野田を発見して日本に帰国させる役割を果たす冒険家・鈴木紀夫を演じる仲野太賀、小野田のかつての上官谷口役のイッセー尾形らも好演しています。
全編日本語であることを考えると、アラリ監督の演出は的確です。
ちなみに「野生のパンダと小野田さんと雪男に会うのが夢」と話していた鈴木紀夫は2つを実現した後、3つ目を目指してヒマラヤに行き、遭難死したそうです。
シリーズ25作目で上映時間はシリーズ最長の2時間44分。
「ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドは最後」とアナウンスされているにしても長すぎるのでは、と見る前は思ってました。
でもこの内容なら仕方ないかなと思います。
KINENOTEから粗筋を引用すると、「現役を退いたボンドは、ジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。しかし、CIA出身の旧友フィリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者を救出するという任務は、想像以上に危険なものだった……」。
この紹介は何も言っていないに等しいですが、この映画、激しくネタバレ禁止の内容でした。
この内容ならば、もっと情感たっぷりに描いて欲しいところなのに、キャリー・ジョージ・フクナガ監督の演出はドラマティックな盛り上げ方がうまくありません。
敵役のラミ・マレックもダニエル・クレイグの相手としては役不足の感じがあります。
しかし「女王陛下の007」のようにエモーショナルな展開ではあり、シリーズのファンであるなら、必見の作品であることは間違いありません。
1年前にリリースされたビリー・アイリッシュのややブルーな主題歌もオープニング映像に合わせて聞くと、さらに良かったです。
キューバでボンドを支援するCIAの女エージェントが格好良くて美人だなと思ったら、アナ・デ・アルマス(「ブレードランナー 2049」「ノック・ノック」)じゃありませんか。
エンドクレジットの最後にはいつものように「James Bond Will Return」と出ます。
「明日の食卓」に続いて今年2本目の瀬々敬久監督作品。
東日本大震災と生活保護を絡めたテーマは重いですが、これに連続殺人まで絡めなくても良かったのではないでしょうかね。
ミステリーとしては犯人の動機の設定が弱いです。
2人を縛ったまま放置して餓死させ、さらに3人目まで狙うというのは相当な恨みの感情が必要ですが、それを納得させる描写が足りませんでした。
殺人の動機となった出来事から何年もたってなぜ犯行に及んだのかの説明もありません(これは中山七里の原作も同じだそうです)。
加えて制度・運用上の欠陥を現場の個人の責任に帰す犯人の考え方は近視眼的すぎるほか、狙われる1人の代議士はそうした欠陥を知った上で現状改善を含めた福祉向上を訴えており、いわば同士討ちの様相になっています。
佐藤健、清原果耶、阿部寛、倍賞美津子らの演技に深く感心しながらも、この脚本ではダメだという思いが沸々とわいてきました。
瀬々敬久監督は「明日の食卓」もそうでしたが、物語の不備に気づいていないか、気づいても修正能力がないのでしょう。
演出の技術は高いので、誰か優秀な脚本家と組んだ方が良いと思います。
いわゆる扶養照会が生活保護の受給をためらわせる原因となるケースは多いと聞きます。
子どもや親族に自分の窮状を知られたくない、迷惑をかけたくないという気持ちはよく分かりますが、その結果、保護費を受給せずに苦しんだり、病気になったりするのはおかしいでしょう。
人命を第一に考えて、制度運用を改め、早急に保護を決定してほしいものです。
震災の避難所で老婆と若者、子どもが出会い、疑似家族を形成するという出だしは「岬のマヨイガ」と同じでした。若者の男女の違いはありますけど。