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2022年03月20日の記事

2022/03/20(日)「ブルー・バイユー」ほか(3月第3週のレビュー)

「ブルー・バイユー」は国際的な養子縁組を巡るアメリカ映画。監督は「トワイライト」シリーズに出ていた韓国系アメリカ人俳優のジャスティン・チョンで、監督としては4作目になるそうです。

主人公のアントニオ(ジャスティン・チョン)は韓国生まれ。3歳のときに養子としてアメリカに来た。シングルマザーのキャシー(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚し、キャシーの前夫エース(マーク・オブライエン)との間の娘ジェシー(シドニー・コウォルスケ)と3人で、貧しいながらも幸せに暮らしている。ある日、スーパーマーケットでエースら巡回中の警官とトラブルになり、逮捕される。アントニオには以前、バイクを盗んだ前科があり、30年以上前の義父母による手続きの不備もあってICE(移民関税執行局)に引き渡され、国外追放処分を受ける。裁判で異議を申し立てようとするが、弁護士への依頼に5000ドルかかることが分かり、途方に暮れる。

最後の字幕で米国の養子の中には国外追放処分を受ける人も多いことが示されます。監督はそれを知って映画にしたそうですが、問題を抉った社会派の作品にはならず、ある家族の悲劇性が前面に出ているのが少し残念なところ。アメリカでは国際養子縁組の養子に市民権を与える子供市民権法が2001年に施行されましたが、施行後の養子に限られたため、施行前に養子となった主人公には適用されません。特にこの主人公の場合、3歳からアメリカに住み、韓国に帰されても住む家すらないわけですから、国外追放はひどい処分だと思います。

ラストシーンは泣かせる意味合いが大きく、こういう問題を扱った映画のまとめ方として適切とは思えません。ただし、このシーンの子役の演技は特筆もののうまさでした。
アメリカでの評価はIMDb7.0、メタスコア58点、ロッテントマト75%(一般ユーザーは93%)。

妻役のアリシア・ヴィキャンデルはメジャー作品ばかりでなく、こうしたマイナーな作品にも出るのがえらいです。

タイトルは「青い入り江」の意味で、1963年に発表されたロイ・オービソンの楽曲。監督はリンダ・ロンシュタットがカバーした歌から取ったそうです。

「KAPPEI カッペイ」

「デトロイト・メタル・シティ」などの漫画家・若杉公徳の同名原作の実写映画化。バカバカしさに徹したギャグ映画で、ここまで来ると、むしろ好感すら持ってしまいます。

ノストラダムスの大予言を信じ、1999年の人類滅亡に備えて修行を重ねてきた“終末の戦士”たちの青春物語。予言が実現するはずの1999年7月から20年たっても世界は一向に滅亡せず、師範は解散を宣言する。最強の殺人拳・無戒殺風拳(むかいさっぷうけん)を習得しながら活躍の場を与えられなかった彼らがたどり着いたのは、その能力を全く必要としない現代の東京だった。

伊藤英明、山本耕史、小澤征悦らがぶっ飛んだキャラクターを大真面目に演じていて良いです。「人間には恋という感情があるらしいが、おぬし達には一切関係ない」と何かにつけて「一切関係ない」が口癖の師範役の古田新太もおかしいです。これでもう少し脚本に工夫を凝らし、演出にメリハリをつけると良かったんですけどね。

「ウェディング・ハイ」

バカリズムの脚本を「勝手にふるえてろ」「私をくいとめて」の大九明子監督が映画化。個人的には今年のワースト候補で、久しぶりにあきれるぐらいにつまらないコメディーでした。バカリズムはギャグは書けてもドラマは書けないということがよーく分かりました。「才人」などと持ち上げてはいけません。

大九監督は「この脚本では映画にならない」とはっきり言うべきだったでしょう。ドラマ部分を補強して、監督自身でまとめ直した方が良かったと思います。まるでハウツーものみたいな序盤と結婚式出席者を同じ具合に順番に取り上げる単調な構成の中盤にアクビが出ましたが、終盤の安易な下ネタにはあきれました。これで笑うのは子供ぐらいじゃないかな。