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2023年04月23日の記事

2023/04/23(日)「名探偵コナン 黒鉄の魚影」ほか(4月第4週のレビュー)

 「名探偵コナン 黒鉄の魚影」は劇場版第26作。八丈島近海に建設され、世界中の防犯カメラを繋ぐ海洋施設パシフィック・ブイを舞台に、それを狙う黒ずくめの組織とコナンたちの闘いを描いています。単純に面白さの点では昨年の「ハロウィンの花嫁」(満仲勧監督、大倉崇裕脚本)に負けていると思いましたが、女性キャラで最も人気のある灰原哀をフィーチャーしたこともあってシリーズ初の興収100億円突破が有力だそうです。

 本格稼働を控えたパシフィック・ブイに世界各国のエンジニアが集結する。その頃、コナンたち少年探偵団一行は八丈島にホエールウォッチングに来ていた。コナンのもとへFBIの赤井秀一から電話が入る。ユーロポールの職員がドイツで黒ずくめの組織のジンに殺害されたのだ。コナンはパシフィック・ブイの警備に向かっていた警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に潜入。施設内で女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐され、彼女が持っていたある情報を記録したUSBが組織の手に渡る。八丈島に宿泊していた灰原哀にも組織の手が忍び寄っていた。

 パシフィック・ブイの老若認証システムで灰原哀の正体が死んだはずの宮野志保であることが黒ずくめの組織に分かってしまう、というのが中心となる話。劇場版のコナンはほぼスパイアクションなので、今回も007シリーズのような海洋アクションとスケール感で描かれますが、話の密度がやや薄く感じられました。

 コナンと灰原のキュンキュンなシーンがあるほか、赤井秀一と安室透という人気キャラも出ているので、ファンの満足度は高いのでしょう。エンドクレジットの後の場面を見ると、来年は今回出番がなかった怪盗キッドが登場するようです。1時間49分。
▼観客35人ぐらい(公開4日目の午後)

「いつかの君にもわかること」

 余命わずかなシングルファーザーが4歳の息子のために里親を探す物語。「おみおくりの作法」(2013年)のウベルト・パゾリーニ監督作品で、事実を基にした物語だそうです。

 窓拭き清掃員として働く33歳のジョン(ジェームズ・ノートン)は息子マイケル(ダニエル・ラモント)と二人暮らしだが、自分が不治の病で余命わずかであることを知る。ロシア人の妻はジョンの仕事に満足せず、マイケルを生んで間もなくロシアに帰ってしまっていた。自分が死んだ後のマイケルの生活を心配するジョンはソーシャルワーカーのショーナ(アイリーン・オヒギンズ)とともに里親を探し始める。何組もの家族と面会するが、なかなか息子をまかせられる家庭は見つからなかった。

 パゾリーニ監督の描写は「おみおくりの作法」同様に今回も淡々として、ジョンの病気の詳細さえ明らかにしていませんが、深い情感がこめられて胸を打ちます。家庭の裕福さよりも愛情深さを元に里親を決めたジョンの選択は納得できるものでした。1時間35分。
IMDb7.4、ロッテントマト100%(アメリカでは映画祭での上映のみのようです)。
▼観客13人(公開5日目の午後)

「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命」

 恋人の死を回避するために過去に戻るという前作(2020年)と同じ趣向であることに伴う「またかよ感」に目をつむれば、悪い出来ではありませんが、「話の途中で終わった感」は拭いきれず、6月公開の後編「血のハロウィン編 決戦」を見ないことには評価のしようがありません。

 普通のタイムリープものではどんなに過去を変えても現在の事象は変えられないという結論に達するものも多いですが、あんなにかわいいヒナ(今田美桜)を救うためなら、タケミチ(北村匠海)が何度でも過去に戻りたくなる気持ちも分かりますね。監督・脚本は前作と同じ英勉と高橋泉のコンビ。1時間30分。
▼観客多数(公開初日の午前)

「レンタル×ファミリー」

 オンラインで観賞。実際の人間貸し出しサービスを営むファミリーロマンス社代表の石井裕一著「人間レンタル屋」を塩谷瞬主演で阪本武仁監督が映画化した作品です。6月10日に劇場公開予定。

 amazonの紹介を見ると、原作は事例集のようなものなのでしょう。映画は「パパにあいたい」「人間レンタル」「喜びも悲しみも」の3つのエピソードにまとめてあります。人間レンタルという題材自体には興味深いものがありますが、端的に言って脚本の出来が良くありません。特に二番目の「人間レンタル」のエピソードは結婚式の出席代行、父親レンタルに依存する話、レンタル子供・孫、レンタル彼氏などをモキュメンタリー形式で描き、原作は恐らくこんな感じなのでしょうが、ドラマの作りが弱く、他の二つのエピソードに比べて違和感があります。

 三番目の「喜びも悲しみも」はレンタル父親を何年も続けたシングルマザー家庭の母親が死んでしまう話。娘は月に1回帰ってくる父親がレンタルであることを知らなかったという設定です。これが残念なのは人間レンタルが後景に退き、シングルマザーの家庭で母親が死んだらどうなるかという話に重点が移ること。高校生の娘役の白石優愛と、バイト先のでんでんの演技がしっかりしているので、3つのエピソードの中では最も良い出来ですが、この展開では人間レンタルがなくても成立してしまいます。

 ファミリーロマンス社のサイトにある利用者の声を読むと、人間レンタル利用の動機には孤独や見栄、ついてしまった嘘をごまかすため、秘密を隠し通すためなどさまざまなものがあるようです。映画はそれをうまくドラマ化できていません。構成も含めて脚本をもっと練り上げる必要があったのだと思います。1時間47分。

 こうしたオンライン観賞は動画共有サイトVimeoで行われることが多いんですが、Vimeoはamazon FireTV Sticへの対応を辞めてしまったのが残念です。昨年11月、「の方へ、流れる」(竹馬靖具監督、唐田えりか主演)の時はまだ対応してましたが、やめた理由は何なんですかね?