U-NEXTで「ほつれる」(加藤拓也監督)を399ポイント払って見た2日後にamazonプライムビデオを見たら、既に見放題に入ってました。劇場公開が9月8日だったので3カ月。配信が始まってもおかしくはないですが、見放題とは。同時にガイ・リッチー監督「オペレーション・フォーチュン」も見放題に。こちらは劇場公開が10月8日。約2カ月での配信は少し早く感じます。下に感想を書いた同時期公開の「シアター・キャンプ」もディズニープラスで見放題に入りました。ディズニーの「ウィッシュ」はアメリカでは「どうせすぐにディズニープラスでやるだろう」と思われたことがヒットしなかった一因とか。そういう時代なのです。
太平洋戦争末期にタイムスリップした女子高生・百合(福原遥)が特攻隊の隊員たち、特にその中の1人の彰(水上恒司)と心を通わせる話。貶す気満々で見に行ったら、意外にも悪くない出来でした。
成田洋一監督はCMディレクター出身。劇場用映画は2作目ですが、60代のベテランだけに浮ついた演出はありません。正攻法な画面作りできっちりとまとめた作品になっています。
気になるのは原作由来のことなんでしょうが、物語の場所が不明確なこと。特攻隊基地の近くの町で、原作者の汐見夏衛は鹿児島出身なので知覧にするのが自然なんですが、町の人たちの言葉は標準語。特攻基地が多かった九州ではなく、関東地方、筑波海軍航空隊のあった茨城あたりの設定なのではないかと思います。映画のロケも茨城と千葉だったようです。
百合は幼い頃に父親が事故死し、母親(中嶋朋子)と二人暮らし。母親は夜中まで働いていますが、家は裕福ではありません。懸命に働く母親のことを理解せず、スーパーで魚をさばいていることで「魚くさい」と恥ずかしい思いを抱いています。それが戦争中の過酷な運命を目の当たりにして変わる、というのが分かりやす過ぎる展開ではあります。
特攻基地の近くで食堂を切り盛りして特攻兵たちに食事を提供する松坂慶子と、シングルマザー家庭の現実を反映した中嶋朋子の存在が映画を引き締めていました。
▼観客多数(公開7日目の午後)2時間7分。
ご存じ黒柳徹子の大ベストセラーのアニメ化。この本、800万部以上売れて国内トップ級のベストセラーだそうですが、未読でした。いい機会なので文庫本を買って読み始めました。
戦前から戦中にかけての物語。落ち着きがなく、授業中に騒ぐため小学校を退学となったトットちゃんが私立のトモエ学園に入学、小児麻痺で手足が不自由な泰明ちゃんらクラスメートと伸び伸びと育っていくエピソードで構成しています。
トモエ学園は自由な校風ですが、世の中は息苦しさを増し、トットちゃんの家庭にも波及していきます。この対比をもっと強調した方が良かったかなと思います。トットちゃんの元気の良さと奔放さは「となりのトトロ」のメイに重なりました。声を演じたのは7歳の大野りりあな。校長先生は役所広司、お父さんが小栗旬、おかあさんが杏。八鍬新之介監督。
▼観客16人(公開5日目の午後)1時間54分。
精神的に不安定なことなどが原因となる思春期症候群(架空の症状です)をテーマにした略称「青ブタ」シリーズの劇場版第3弾。
高校2年生の梓川咲太の1学年上の恋人で女優の桜島麻衣は卒業を迎える。咲太が海岸で麻衣を待っていると、子役時代の麻衣と瓜二つの小学生が現れる。父から電話が入り、長く入院していた母が、妹の花楓に会いたいと言っていることを告げる。咲太は花楓と共に母親と会うことにするが、咲太の身体に謎の傷跡が現れる。
6月に公開された前作「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」よりは面白く見ました。ただ、「窓ぎわのトットちゃん」が幅広い世代に受け入れられる内容なのに対して、これは主に10代、20代の男子限定でしょう。この世代に受けるのは桜島麻衣先輩が理想の彼女だからですね。次は大学生編だそうです。増井壮一監督。
▼観客8人(公開13日目の午後)1時間15分。
1944年、第二次大戦末期のフィンランドを舞台にしたアクション。川で砂金を探す主人公アアタミ((ヨルマ・トンミラ)が金鉱を掘り当て、荒野を馬で移動中にナチスに遭遇。金塊を狙ったドイツ兵から執拗に追跡され、死闘を繰り広げることになります。アアタミは老人ですが、特殊部隊出身で過去に300人のロシア兵を殺したと言われています。「ランボー」のように“1人だけの軍隊”なわけです。
画面に出るのは明らかに西部劇風のフォント。といってもマカロニウエスタンに近い描写の仕方で、これにクエンティン・タランティーノ風のタッチを加えて出来上がった作品と言えるでしょう。
主人公のアアタミは死なないにもほどがあるほど死にません。ここまで不死身だと、その理由が必要になると思いますが、映画はそれには触れません。
ヤルマリ・ヘランダー監督は1976年生まれ。「ランボー」など1980年代のアクション映画が好きなのだそうです。
IMDb6.9、メタスコア70点、ロッテントマト94%。
▼観客10人(公開初日の午後)1時間31分。
ニック・リーバーマン監督の短編「Theater Camp」(2020年)をリーバーマンと「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」(2019年)の女優モリー・ゴードンが共同監督を務めて長編化したコメディ。
ニューヨーク州北部の演劇スクール「アディロンド・アクト」はミュージカルスターを夢見る子どもたちを指導してきた。今夏のキャンプ開校を前にジョーン校長(エイミー・セダリス)が昏睡状態となり、演劇に無関心な息子トロイ(ジミー・タトロ)が跡を継ぐ。経営は破綻寸前。スクール存続のためには3週間後のキャンプ終了までに出資者に新作ミュージカルを披露する必要がある。教師たちと子どもたちは舞台を完成させようと奮闘する。
落ちこぼれチームが栄光をつかむという、よくあるパターンのプロット。序盤のドキュメントタッチがどうも乗り切れない要因のようで、これは普通に映画化した方が良かったと思います。完成したミュージカル「ジョーンのままで」(Still Joan)を披露するクライマックスがそれなりに盛り上がるだけに序盤がもったいなかったです。1時間35分。
IMDb7.0、メタスコア70点、ロッテントマト85%。
「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」はロアルド・ダール原作「チャーリーとチョコレート工場」(2005年、ティム・バートン監督)の工場主ウィリー・ウォンカの若き日を描く前日談。ミュージカルタッチのファミリー映画として、「パディントン」シリーズのポール・キング監督は手堅くまとめています。
発明の天才でチョコレート職人のウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ。)は亡き母(サリー・ホーキンス)との約束を果たすため、一流のチョコレート職人が集まる町にやってくる。ところが、その町はチョコレート店の新規開店ができず、夢見ることも禁じられていた。しかも、ウォンカが泊まった宿はあくどい商売をしていて、文字を読めないウォンカは多額の借金を背負い、無理矢理働かされる羽目に。宿の地下には少女ヌードル(ケイラ・レーン)をはじめ同じ目に遭った人たちがいた。ある夜、ウォンカはチョコレートを盗む小さな紳士ウンパルンパ(ヒュー・グラント)と出会い、仲間たちとともにチョコレートの製造にとりかかる。
ヒュー・グラントはウンパルンパをユーモラスに演じていて子供たちの人気を集めそうです。ダール作品に特徴的なダークさは宿の意地悪な女主人(オリヴィア・コールマン)やウォンカを迫害するチョコレート組合のメンバーたちに残っていますが、総じて控えめ。大人もそこそこ楽しめる仕上がりにはなっていて、年末年始のファミリームービーには最適でしょう。
IMDb7.5、メタスコア68点、ロッテントマト83%。
▼観客9人(公開2日目の午前)1時間56分。
タイトルから近未来の話かと想像してましたが、現在の話でした。トランシルバニア地方の小さな村での外国人労働者排斥を描くルーマニア映画。村のパン工場がスリランカからの労働者を受け入れる。よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。それが村全体を揺るがす激しい対立へと発展していくというストーリー。
パンフレットのクリスティアン・ムンジウ監督の解説によると、トランシルバニア地方にはルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人とロマ(ジプシー)が住んでいて、それぞれの言葉を話すほか、共用語として英語が使われ、映画の中にはフランス語を話す人も出てきます。観客がすべての言語に詳しいわけではありませんから、字幕は白、ピンク、黄色などで区別されています。
さまざまな言葉と文化が混在しているにもかかわらず、村人の多くはアジア人に対して差別意識を隠しません。「パン工場でスリランカ人がこねたパンは食べたくない」「どんな病気を持っているか分からない」といった理由からですが、要するに理解が及ばない対象に対して人は恐怖心もあって差別・迫害してしまうのでしょう。
映画は出稼ぎ先のドイツで暴力事件を起こして帰国したマティアス(マリン・グリゴーレ)とパン工場の責任者で元恋人のシーラ(ユディット・スターテ)を中心に描いています。ルーマニアはEU加盟国の中でブルガリアに次いで貧しい国で、海外への出稼ぎが多いそうです。国内の賃金は安く人手が集まらず、映画でスリランカから労働者を招くのもそれを反映しています。原題“R.M.N.”はMRI(核磁気共鳴画像療法)のこと。
IMDb7.2、メタスコア81点、ロッテントマト96%。
▼観客5人(公開初日の午前)2時間7分。
高校の体操部で一緒だったまなみちゃん(中村守里)を10年間思い続けたボク(青木柚)を描いた青春映画。10年間思い続けるといっても、ボクはかなりいい加減な男で、たくさんの女の子と付き合うし、その女の子たちに対してひどいこともします。要するにクズキャラに近いんですが、憎めないヤツです。映画は憎めないどころか、好感度たっぷりでおかしくてちょっと切ない作品に仕上がってます。
川北ゆめき監督の自伝的な話をいまおかしんじが脚本化。ボクはまなみちゃんに何度か求婚しますが、まるで相手にされません。まなみちゃんはボクの言葉を本気と受け取っていないからで、そこをなんとかうまく伝えられれば、恋が成就することもあったんじゃないかなと思えます。
体操の先生役でYouTubeの「エガちゃんねる」ではお馴染み、佐賀県人会NO.3のオラキオ。いつも体操服着てる芸人さんですが、ホントに体操できるんだと感心しました。このほか、ボクの憧れの先輩役に伊藤万理華、ボクをめぐる女の子たちに新谷姫加、宮崎優、菊池姫奈ら。
▼観客3人(公開7日目の午後)1時間40分。
スペインで実際にあった事件を元にしたロドリゴ・ソロゴイェン監督作品。「ヨーロッパ新世紀」同様に異邦人への差別意識に加えて隣人戦争の様相も強く、緊迫した内容になっています。
フランス人夫婦のアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)はスペイン・ガリシア地方の小さな村に移住した。村は貧しく、隣人のシャン(ルイス・サエラ)とロレンソ(ディアゴ・アニード)兄弟は夫婦に嫌がらせをするようになる。そんな中、村に風力発電の計画がもたらされ、誘致に積極的な村人と反対する夫婦が対立、亀裂は大きくなっていく。
対立がエスカレートしてある事件が起きるんですが、その後の終盤が長いです。いくらなんでも長すぎるのではないか、もっと簡潔に結論を描いた方が良いのではないかと思ってパンフレットを読んだら、二部構成と書いてありました。いや、これは二部構成じゃないでしょ。そうする必要もないと思います。実際の事件は2010年に発覚し、裁判が終わったのは2018年だったそうで、その時間の長さを意識したのかもしれません。
こうした事件は日本でもどこでも起こりそうで、田舎を勝手に理想郷なんて思わない方が良いです。原題“As bestas”は「野獣」の意味。
IMDb7.5、メタスコア85点、ロッテントマト98%。昨年の東京国際映画祭グランプリ。
▼観客10人(公開6日目の午後)2時間18分。
倉井眉介の原作を三池崇史監督が映画化。評判良くないですが、僕はそんなに悪くないと思いました。怪物とはサイコパスのことで、それを狩る覆面の連続殺人鬼(=木こり)とサイコパスな弁護士(亀梨和也)を巡る話。以前、「アップグレード」(2019年、リー・ワネル監督)を見た時に「頭にチップを入れたぐらいで超人的な能力を得られる訳がない」と思いましたが、この映画もそんな設定。超人ではなく、サイコパスを作るわけです(いや、無理だから)。それを受け入れられれば、まずまず楽しめるんじゃないでしょうか。
三池崇史監督にしては過激な描写がないのがやや物足りないところではあります。刑事役に菜々緒、弁護士の恋人役に吉岡里帆。脚本はエグゼクティブプロデューサーを兼ねた小岩井宏悦。
▼観客9人(公開5日目の午後)1時間58分。
雷の直撃で故障した飛行機がフィリピンの孤島に不時着。そこは反政府勢力が支配する無法地帯だった。機長ブロディー・トランス(ジェラルド・バトラー)を含む乗客17名はどうサバイバルするのか、というアクション。1980年代にチャック・ノリスが主演した「地獄のヒーロー」(1984年、ジョセフ・ジトー監督)のような映画を思い出す内容でした。つまり、よその国に行って悪人をバタバタ殺しまくる映画です。このためフィリピンでは公開を自主規制しているとのこと。こういうことがあるから、架空の国の島にしておいた方が無難なんです。
乗客の中には殺人を犯してフランスの傭兵部隊に逃れ、逮捕・移送中のガスパール(マイク・コルター)がいて、トランスとともに助けを呼ぶため飛行機を離れますが、その間に乗客たちは反政府勢力に捕まります。トランスとガスパールは協力して乗客たちを救助しようとする、という展開。飛行機が不時着するまでの序盤がモタモタしているためか、反政府勢力との戦いに割とあっさり片が付く印象を受けました。
原題は“Plane”とシンプル。ガスパールをフィーチャーしたスピンオフ“Ship”の企画があるそうです。ジャン・フランソワ・リシェ監督。
IMDb6.5、メタスコア62点、ロッテントマト78%。
▼観客12人(公開12日目の午後)1時間47分。
今回初めて日テレから株主優待が来ました。オンラインフィットネスの「torcia(トルチャ)」とHuluの1カ月分チケット。これ、正式の優待ではなく、隠れ優待ということになってるそうです。証券会社のサイトでも日経などでも日テレは「優待なし」になってますが、毎年7月と12月に送られてくるとのこと。僕が日テレの株を買ったのは昨年11月(株主になったのは約10年ぶり)。今年8月頃まで貸株にしていたので、7月分は届かなかったわけです。
トルチャはともかくHuluは以前から加入しているのでこれはありがたい。さっそくチケットを登録しました。来年1月分(月額1086円)はこのチケットで払えます。
良かった良かったと思っていたら、Huluとディズニープラスのセットプランのお知らせが掲載されているのに気づきました。
セットプランは月額1490円なので別々に入るより586円お得になります。アメリカではHuluとディズニープラスは同じ系列ですが、日本のHuluは日テレがやってるので日本では始まらないだろうと思ってました。7月から始まってたんですね。知りませんでした。トホホ。1月分は優待チケットで払ってしまったので2月からこれに変更します。
動画配信サービスParamount+の作品が12月1日からWOWOWオンデマンドで見られるようになりました。
ラインナップを見ると、ドラマはともかく映画に関してはほとんど見ている作品ばかり。配信されるのはParamount+の一部の作品のようです。Wikipediaによると、動画配信サービスとしては5番目の規模(加入者6100万人)で、経営的にも苦しい状況のようです。
昨年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたインド映画。カースト最下層のダリット(ダリト=不可触民)の女性たちが設立した新聞社「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波)の活動を5年間にわたって記録しています。
彼女たちはカーストによる差別とインドに根強い女性蔑視による二重の差別を受けています。ダリットの女性が自宅に押し入ってきた男たちに何度もレイプされた事件を取材しますが、警察は立件しません。記者が警察に取材に行っても、とぼけられるか無視されるか。被害女性と夫は警察からも暴力を受ける始末。記者たちは記事を書くだけでなく、スマホで動画を撮影し、動画チャンネルにアップしています。新聞の発行は週1回ですが、これは文字の読み書きができない住民が多いからなのかもしれません。
記事になることで村に電気が通ったり、道路が舗装されたりの効果も紹介されています。ジャーナリズムの原初的な意味の感動がこの映画にはあり、そうした記事の効果は彼女たちの励みにもなっているでしょう。それにしてもインドはカースト制度をなくして、民主主義を確立すれば、もっと経済成長が期待できるのに、現状は残念すぎます。監督はリントゥ・トーマスとスシュミト・ゴーシュ。
IMDb7.3、メタスコア84点、ロッテントマト100%。
▼観客4人(公開7日目の午後)1時間33分。
本番の公演中に恋人の裏切りを目にしたことで動揺して転倒し、足首を剥離骨折したバレリーナがコンテンポラリーダンスで再起する姿を描くフランス映画。初の映画出演で主役を務めたマリオン・バルボーはパリ・オペラ座のプルミエール・ダンスーズ(バレリーナのコンクールで上がれる階級の最高位。その上に監督が任命するエトワールがあるそうです)とのこと。細い体なのにしなやかで強靱さも感じさせるのがさすがです。
映画は「まなじりを決して」という悲壮感ではなく、主人公が自然に緩やかに再起していくのが良いです。コンテンポラリーダンスの魅力もよく分かりますが、その中で普通にバレエの仕草を入れるバルボーがやはり光ってました。ちょっとレベッカ・ファーガソンに似ている顔立ち。今後、映画でも活躍していくのでしょう。
IMDb7.1、ロッテントマト100%(アメリカでは限定公開)。
▼観客8人(公開初日の午後)1時間58分。
累計発行部数650万部を超える井口達也の原作漫画を「ドロップ」(2008年)「漫才ギャング」(2010年)の品川ヒロシ監督が映画化。少年院を出所した主人公(倉悠貴)が叔父(杉本哲太)叔母(渡辺満里奈)の焼肉店で働き始めるが、暴走族「斬人(きりひと)」の副総長・安倍要(水上恒司)と出会い、半グレ集団との抗争に巻き込まれる。
品川監督得意のヤンキーもので格闘アクションをはじめ手堅くまとめていますが、この種のヤンキーものでは「東京リベンジャーズ」もあり、新鮮さがないのが残念なところ。共演は醍醐虎汰朗、与田祐希など。
▼観客2人(公開14日目の午後)2時間9分。
髙森美由紀の原作「ジャパン・ディグニティ」を鶴岡慧子監督が映画化。バカ塗りとはバカ丁寧に何度も塗っては研ぐを繰り返す青森県の伝統工芸・津軽塗のこと。
青森県弘前市の津軽塗職人・青木清史郎(小林薫)とその仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)。美也子は高校卒業後、近所のスーパーで漫然と働きながら家業を手伝っていた。人とコミュニケーションを取るのが苦手で、恋人や仲のいい友人もおらず、家とスーパーを往復する毎日。父・清史郎は津軽塗の名匠だった祖父を継いだが、今は注文も減って苦労している。
堀田真由は人当たりの柔らかさが魅力ですが、今回は笑顔をあまり見せず、引っ込み思案の主人公を好演しています。主人公がバカ塗りを継ぐ意志があいまいなまま話が進むのが少し残念で、もっと明確に描いた方が良かったと思います。鶴岡監督は立教大時代に万田邦敏監督(「接吻」「愛のまなざしを」)に師事したとのこと。
▼観客6人(公開12日目の午前)1時間58分。
アメリカでの評価が良くなかったので期待しませんでしたが、やはりそれぐらいの出来でした。リドリー・スコット監督だけにクライマックスのワーテルローの戦いなど戦闘シーンの描写はすごいんですが、ドラマがイマイチ。どうしてもナポレオンの生涯のダイジェストになってしまいますね。主演のホアキン・フェニックスよりジョゼフィーヌ役のヴァネッサ・カービーが良いです。
IMDb6.7、メタスコア64点、ロッテントマト60%。
▼観客15人ぐらい(公開2日目の午前)2時間38分。
ミステリマガジン1月号で恒例のミステリーベストテンが発表されています。国内篇1位は米澤穂信「可燃物」、海外篇はロス・トーマス「愚者の街」でした。国内篇3位に京極夏彦の17年ぶりの百鬼夜行シリーズ「鵺の碑」が入ってます。単行本(3960円)で1280ページ、新書版(2420円)で832ページという大作で、久しぶりに読んでみたいです。直木賞と山本周五郎賞を受賞した永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」は4位。ミステリの枠を取っ払っても名作で、まだ映像化の予定はないようですが、構成から見てNHKの時代劇にはぴったりだと思います。
今週、しみじみと良かったのはこのアニメ。幻のウイスキーKOMA(独楽)の復活を目指す蒸留所の若い女性社長・駒田琉生(声:早見沙織)と、それを取材するWebメディアの記者・高橋光太郎(声:小野賢章)を描き、ウェルメイドな仕上がりになっています。
制作は富山県に本社を置くP.A.WORKS。同社はアニメ制作現場を描いた「劇場版 SHIROBAKO」(2020年、水島努監督)などの“お仕事アニメ”を撮っていて、この映画も仕事に絡む問題が描かれています。美大に通っていた琉生は、地震で被害を受けた会社を建て直すため仕事に打ち込んだ父親の急死で蒸留所を継ぎ、かつて作っていたKOMAの復活を目指しています。その困難な過程とともに、職を転々としてきた光太郎が記者として成長していく過程を盛り込み、実写で十分に通用する内容です。
経営の苦しい蒸留所には買収の話が持ちかけられます。そんな時に漏電が原因の火事に見舞われ、経営は一層苦しい状況に。琉生は買収に応じることを決意しますが、従業員たちの励ましで撤回。光太郎も協力して復活の道を進むことになります。
実写ドラマで描かれれば、従業員が生活の苦しさを顧みず、夢の実現に全員協力する描写などは甘さを感じるでしょうが、そこに違和感がないのがアニメの良さかもしれません。夢を諦めない、仕事に意味を見いだす過程をさわやかに描いて好感が持てました。吉原正行監督。
入場者プレゼントは主題歌「Dear my future」(早見沙織)のダウンロードでした。
▼観客2人(公開12日目の午後)1時間31分。
「ゲゲゲの鬼太郎」テレビアニメ第6期(全97話)の劇場版。昭和30年を舞台に目玉おやじが幽霊族だった頃の事件を描いています。目玉おやじがあのような姿になり、鬼太郎がどう誕生したかのエピソードは原作を読んだことがあり、テレビアニメ「墓場鬼太郎」第1話でも描かれています。
映画はそれ以前の話で、哭倉村(なぐらむら)にやってきた血液銀行に勤める水木が鬼太郎の父親(「ゲゲッ」と驚いたことから水木に「ゲゲ郎」と呼ばれます)とともに連続怪死事件に遭遇する展開。この事件が何というか、横溝正史「八つ墓村」や「犬神家の一族」を思わせる内容で、新味がないのが辛いところです。監督は「ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」(2008年)の古賀豪。脚本はアニメ第6期も担当した吉野弘幸。
▼観客多数(公開6日目の午後)1時間44分。
「人生タクシー」(2015年)「ある女優の不在」(2018年)のジャファル・パナヒ監督作品。偽造パスポートで国外へ脱出しようとする男女と、国境付近の小さな村で因習に縛られる男女の姿を通して、イランの現状を批判しています。パナヒ監督自身がリモートで助監督に指示を出す自身の役で出ていて、「人生タクシー」と同じくフィクションとドキュメンタリーを組み合わせた構成となっています。
パナヒは2010年に逮捕され、20年間の映画製作を禁じられましたが、逆境の中でゲリラ的に映画を撮り続けていて、イラン国外では高い評価を得ています。この映画もヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞しました。
IMDb7.3、メタスコア93点、ロッテントマト99%。
▼観客2人(公開4日目の午後)1時間47分。
魔夜峰央の原作コミックの映画化第2弾。埼玉に海を作る計画を思いついた埼玉解放戦線の麻実麗(GACKT)は仲間とともに美しい砂を求めて未開の地・和歌山へと向かう。そこには大阪に支配され、馬鹿にされ、苦しむ人たちがいた。
埼玉や滋賀、奈良、和歌山などをディするギャグは笑えるんですが、話にもっと凝って欲しいところ。2時間持つ話ではなかったです。アイデアを詰め込んだ方が良かったでしょう。武内英樹監督。
▼観客20人ぐらい(公開2日目の午前)1時間57分。
6年ぶりの北野武監督作品。織田信長(加瀬亮)と明智光秀(西島秀俊)、荒木村重(遠藤憲一)が同性愛の三角関係だったという設定で本能寺の変を描いています。合戦シーンにかなりの予算をかけているようで、見応えはありますが、大河ドラマ「どうする家康」、映画「レジェンド&バタフライ」などこの時代を描いた作品が続いていて食傷気味です。設定をいかに変えようと、話の行く末は分かりきっているので興味が半減してしまいます。
映画の作りは悪くないので、オリジナルの物語を描いた方が良かったのではないかと思います。アドリブで笑いを取るのも個人的には感心しません。テレビのバラエティじゃないんだから。
▼観客多数(公開初日の午前)2時間11分。