2005/08/20(土) キネ旬9月上旬号

 さっそく「妖怪大戦争」の批評が載っていた。書いているのは秋本鉄次。いつものように女優に入れ込んだ批評で、今回の対象は栗山千明である。そう、子どもは高橋真唯が印象に残るだろうが、大人は栗山千明なのである。ただし、秋本鉄次が言うほど栗山千明がカルト的な道を歩んでいるとは思わない。清純派だなんだというレベルを超えて魅力を持っている女優と思うが、僕は基本的には「アタシの全存在をかけてアンタを否定してあげる」という「バトル・ロワイアル」のような役柄が好きだ。ゴーゴー夕張もアギもいいけど、ああいう役にもまた挑戦してほしいと思う。

 秋本鉄次の批評で気に入ったのは次の部分。「さる映画関係者に聞いたのだが、『あずみ2』の現場で、彼女だけが違うオーラを放ち、違う地平を見ていた、という」。そういう女優なのだと思う。

2005/08/19(金)「宇宙戦争」

 1953年製作版のDVDが届いた(DVDのジャケットには1952年とある。どちらが正しいのか)。楽天のショップで1,197円。字幕版だけで日本語吹き替え版は入っていない。小学生のころだったか、テレビの吹き替え版で見て以来の再見だが、上映時間が85分と短いとは知らなかった。当時はこれぐらいの長さで十分だったのだろう。

 結末はスピルバーグ版と同じなのに納得できるのはその前に都市の徹底的な破壊シーンがあり、群衆が暴徒化するシーンがあるからか。原爆を使っても撃退できない相手では奇跡でも起きないと、どうしようもないという気分になるのだ。映像は当時としては画期的だっただろう。これと「禁断の惑星」(1956年)が50年代SF映画の白眉だと思う。もちろん、物語は「禁断…」の方がよりSFらしい。

 原爆を使うシーンには例の翼だけの飛行機が登場する(全翼機と呼ぶそうだ)。Northrop YB-49という実在の飛行機。30年近く前、小野耕世がキネマ旬報で「宇宙戦争」に絡めてこの飛行機のことを紹介していて、興味深く読んだものである。この原爆シーンで主人公の科学者(ジーン・バリー)と軍の兵士たちは爆風をもろに浴びる。原爆実験に参加するアトミック・ソルジャーがいた時代だから、こういう描写も仕方ないかと思う。

 もし、原爆で効果があったにしても、世界中に下りた宇宙船を破壊するには相当数の原爆攻撃が必要だろう。いずれにしても地球は破滅することになる。火星人は殲滅できたが、地球もまた終末の時を迎える。そういう風な映画もありかなと思う。

2005/08/18(木) 「ActiveBasicオフィシャルユーザーズガイド」

 去年の5月に出た本。ActiveBasicはVisualBasicに似た言語で統合開発環境がフリーで提供されている。さわりを読んだが、それなりにプログラムの基礎知識がないと難しいようだ。現在、ActiveBasicのバージョンは4.04.00。本の方は3.1.0を元に書かれているが、まあ、基本は変わらないだろう。

 作者は1983年生まれ。プログラミング言語の開発者としては最も若いのかな。ActiveBasic自体、開発が始まったのは1999年でWin32APIに完全対応したのは2003年とのことなので、まだまだ若い言語なのだ。

 ユーザーズガイドと言えば、日本語プログラミング言語なでしこの公式ガイドブックも9月8日に発売されるとのこと。cbook24.comで予約した。簡単な処理をやるなら、なでしこの方が手軽ではある。

2005/08/17(水)「傷痕」

 今年のMWA賞を受賞した短編。ミステリマガジン9月号に掲載されている。自宅で胸にステーキナイフを深々と刺された女が警察に通報する。女は強盗が自分を刺し、財布を奪って逃げたと言う。奇跡的に急所を外れていたとはいえ、女の傷は生きているのが不思議なくらいの深さだったが、刑事は現場の状況と周辺の捜査から女の自作自演と結論する。6年後、女は事件の再捜査を要求する。

 物語のヒロインは事件発生当時、警察官志望で被害者サービスの仕事をしていた。被害者と心を通わせるが、自分が警察志望であると分かると、交流はなくなる。その後、事件を担当した刑事と結婚し、今は地域連絡官になった。これは市民からの事件の審査請求を担当する部署。つまり、ヒロインは夫が担当した過去の事件を再捜査すべきかどうかを判定することになるのだ。

 文章がうまいためか面白く読めるのだが、設定には無理があると思う。背中に届くほどの傷を自分で刺せるかどうか。それを自作自演と決めつける刑事というのもややリアリティに欠ける。展開もミステリとしては物足りない面が残る。これが受賞したのは純文学っぽいところがあるからではないかと思う。キャラクターの描き込み、心理描写などはうまいのである。

 原題は“Something about a Scar”。作者のローリー・リン・ドラモンドは元警察官とのこと。

2005/08/16(火)「妖怪大戦争」

 「妖怪大戦争」パンフレットかつて大映の夏興行の定番だった妖怪ものを、大映を買収した角川映画が製作。一見して類似性を感じたのは原口智生の快作「さくや妖怪伝」(2000年)で、同じ妖怪ものだし、剣を持った少年(少女)が悪に立ち向かうという基本プロットも同じである。ただ、「さくや」が1時間半足らずだったのに対して、この映画2時間3分もある。原作・脚本が荒俣宏なので話はしっかり作ってあるにしても、どうしても中だるみを感じてしまう。子ども向けの映画であると割り切り、導入部分をてきぱきとまとめて1時間半程度にした方が良かっただろう。全体として悪くない出来だけにそれだけが惜しい。

 映画はプロデュースチーム「怪」の雑談が発端にあったそうだ。水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきというメンバーで、それぞれゲスト出演もしている。加藤保憲を敵役にしようと発案したのは京極夏彦だそうで、映画は加藤が出ることによって「帝都物語」番外編みたいな雰囲気もある。残念なことに加藤を演じるのは嶋田久作ではなく、豊川悦司。豊川版加藤も悪くはないが、どうせなら嶋田久作に出て欲しかったところだ。監督の三池崇史は「ゼブラーマン」で意外にスーパーヒーローものに理解があることを示したが、今回も的を外していない。導入部分では妖怪の怖さを見せ、中盤からユーモアを散りばめている。おまけに出てくる女妖怪がどれもこれも色っぽい。鳥刺し妖女アギ役の栗山千明、川姫役の高橋真唯の2人が印象的で、個人的にはワルを演じる栗山千明がはまり役だと思った。ろくろ首役の三輪明日美もいい。

 主人公のタダシ(神木隆之介)は両親の離婚で鳥取の祖父(菅原文太)の家に母親(南果歩)と住む。東京から来たために学校ではいじめられている。タダシは神社の祭りで麒麟送子(きりんそうし)に選ばれる。麒麟送子は悪と戦う定めで、選ばれた者は大天狗の聖剣を取りに行かなくてはならないとの伝説があった。大天狗の山に向かったタダシは妖怪の姿を見て逃げ出すが、途中、けがをした不思議な生き物と出会う。その生き物はスネコスリで、やはり妖怪の一種。再び大天狗の山に引き寄せられたタダシは猩猩(しょうじょう=近藤正臣)、川姫(高橋真唯)、川太郎(阿部サダヲ)と出会い、ついに大天狗のもとへたどり着く。聖剣を取ろうとしたところへ、鳥刺し妖女アギ(栗山千明)が機怪(人間に捨てられた機械と妖怪が合体した怪物)とともに現れる。アギは人間に復讐を誓う魔人・加藤保憲(豊川悦司)に賛同し、妖怪たちを狩り集めていた。タダシは聖剣で立ち向かうが、アギに剣を折られてしまう。スネコスリを連れ去られたタダシは妖怪たちの協力を得て、加藤に立ち向かう。

 これで妖怪大戦争というわけだが、おかしいのは集まった妖怪たちが、加藤が敵と知って、「それでは…解散」と帰ってしまうこと。このあたりから映画はユーモアの度が強まってくる。妖怪のキャストが多彩でおかしい。油すまし=竹中直人、小豆洗い=岡村隆史、ぬらりひょん=忌野清志郎、大首=石橋蓮司、一本だたら=田口浩正、雪女=吉井怜、神ン野悪五郎=京極夏彦、魍魎=塩田時敏、山ン本五郎左衛門=荒俣宏、妖怪大翁=水木しげる、といった面々である。人間側も多彩で佐野史郎、津田寛治、大沢在昌、徳井優、永澤俊矢、田中要次、宮迫博之、柄本明といった顔ぶれ。宮部みゆきは学校の先生役で登場する。三池崇史の人徳なのか、ちょい役も含めてこんなにキャストがそろった映画も珍しいだろう。

 加藤の復讐は物を使い捨てにする人間たちへの憎しみから来ている。そういう理由にはあまり必要性を感じないのだが、子供たちに見せるにはそうした部分があった方が良いのかもしれない。ただし、これを見た子供たち、特に男の子は高橋真唯の太ももや栗山千明の衣装にしびれるのではないか。そうした部分を入れているところに三池崇史らしさを感じた。「ゼブラーマン」のゼブラナース(鈴木京香)の衣装を彷彿させるのである。逆に女の子がしびれるのは神木隆之介のけなげな姿なのだろう。

 パンフレットに収録された「怪」の4人による座談会(2002年12月収録)では3部作の構想が紹介されている。3年前の話だからどうなることかは分からないが、続編を作るなら、キュッと引き締まったコンパクトな映画を期待したい。