2016/10/19(水)「GANTZ:O」 熱狂的な支持も納得

 「あんなぁ……こーゆーときは嘘でも、頷いとくもんやって」。「おたがい、死なれへん言うたやろ、待ってる人がおるんやろ」。「君を死なせへんっ」。「あのバカ、偽善者全開や」。関西弁の山咲杏(M・A・O)が映画の大きな魅力の一つであることは明らかだ。23歳で3歳の子どもを持つ杏は死んでGANTZに召還される。大阪の街で17歳の高校生・加藤勝(小野大輔)と出会い、老夫婦と孫を助けようとする加藤の真っ直ぐな行動を見て「偽善者星人や」と、からかいながらも、惹かれていくのだ。そして「生きて帰ったら、(息子と加藤の弟と)4人で暮らそう」と無理矢理、加藤に約束させる。

「GANTZ:O」パンフレット

 妖怪型星人が跋扈する大阪でのすさまじい戦闘を描く96分。最初はのっぺりした顔のCGキャラにうーんと思いながらも、脚本の出来は悪くなく、アクションに次ぐアクションに徹した展開を一気に見せる演出も水準をクリアしている。続編もありだろうと思った。

 奥浩哉原作の「GATNZ」(全37巻)で最も評価が高いという「大阪編」の3DCGアニメ化。原作は佐藤信介監督の実写版「GANTZ」と「GANTZ Perfect Answer」(2010年と2011年)が公開された際に5巻ぐらいまで読んだ。大阪編に関してはまったく知らなかったが、「大阪編」を知らなくても、「GANTZ」自体に触れたことがなくても、この映画を見るのに支障はない。これはこれで完結した話になっている。

 加藤は地下鉄のホームで通り魔に刺され、気づいたらマンションの一室にいた。GANTZと呼ばれる黒い球体の指示でわけが分からないまま、大阪に転送され、そこで妖怪型宇宙人たちと戦う羽目になる。東京チームの仲間はアイドルのレイカ(早見沙織)、おっさんの鈴木(池田秀一)、中学生の西(郭智博)の3人。宇宙人を倒せば、点数を与えられ、合計100点になれば、より強い武器をもらうか、死んだ人間を生き返らせるか、記憶を消されて元の生活に戻るかを選択できる。戦いのまっただ中に送られた加藤はたった一人の家族である小学生の弟・歩(森尾俐仁)のために「必ず、生きて帰る」と決意する。

 チームに与えられたのは撃って数秒後に爆発するX-GUN。お歯黒べったりや、一本だたらなどX-GUNですぐに倒せる相手から始まって、次々に登場する妖怪型星人の強さは徐々にパワーアップしていく。巨大な牛鬼やX-GUNの効かない天狗、そして大ボスのぬらりひょん。ゲームを何度もクリアしている凄腕の大阪チームのメンバーも一人また一人と倒されていくほど強い。特にぬらりひょん。次々に形態を変え、つかみどころがない。どうやって倒すかがポイントになるが、ここはもう少し工夫があると良かったと思う。それ以外はまず満足できる出来で、大阪チームの凄腕2人を演じるレイザーラモンHG&RGやケンドーコバヤシら意外な声優陣の頑張りがCGキャラにリアリティーを与えている。

 ハリウッド製の3DCGは興業面を意識するためか、ヒューマンなファミリー映画が多いが、これはPG-12ぎりぎりの描写で若い世代にアピールしている。熱狂的な支持が多いのもうなずける。ただ、個人的には表情の乏しいCGキャラよりも生身の俳優が演じた方がしっくりくる。「ジャングル・ブック」のように主人公以外はすべてCGという映画もできるのだから、日本映画でも考えてほしいところだ。

2016/10/15(土)Google Feed APIの代替その2

Google Feed APIの代替からの続きです。

 開発の終わったMagpieRSSを使い続けるのも少し心配なので、今もメンテナンスされているSimplePieを使ってみた。公式サイトからダウンロードしたファイルのうち、libraryフォルダとautoloader.phpをサーバーにアップして、RSSの指定と表示の加工をするスクリプトを同じ階層に置けばいい。サンプルは以下。

 simplepieget.php

 いろんなサイトを参考にして書いたスクリプトは以下。

 simplepieget.txt

 これをMODXで使おうと思ったが、Feed.phpやMagpieRSSとは違ってスニペットからは動かない。どうもキャッシュの仕様がバッティングしているようだ。以前はSimplePieのMODXプラグインがあったが、もはやない。仕方がないので、JSONファイルを出力してGoogle Feed APIのようにJavaScriptで読み込んで表示することにした。参考サイトはPHP用 Google Feed API が完全に廃止されてしまった時の対応方法。ここはRSS-PHP(Feed.php)を使っているが、JSONさえ出力すれば、あとは同じだ。この方法ならMODXだけでなく、他のCMSでも使えるので汎用性がある。

サンプル Simplepie Test

スクリプト simplepieget.txt

JSファイル simplepieget.js

 表示したいページに
<dl id="simplepieget"></dl>

と書けばOK。ただし、JSONファイルを更新するにはスクリプトにアクセスするか、定期的にCRONで動かす必要がある。

 久しぶりにCRONを使ったら、うまく動かない。コマンドラインからスクリプトを実行してみると、「Could not open input file」とエラーが出る。スクリプトのパスは絶対パスで書かなくてはいけないのだった。スクリプトの中のautoloader.phpとJSONファイルの出力先も絶対パスに書き換える必要がある。これで動いた。うまく動けば、「JSONファイル出力OK。」と表示されます。

 しばらく使っていたのだが、時々、表示されないことがある。戻るボタンを使った時などブラウザがキャッシュを読むので、JavaScriptのページ読み込みのイベントが発生しないからだろう。考えてみると、読み込みだけなら、PHPを使った方が簡単だ。JSONファイルのままだとまた加工しなければいけないので、整形したテキストファイルを出力してそれをPHPで読めばいい。simplepieget.txtの最後の行を削除して以下のようなテキストファイルの出力を書く。

$filename = 'simplefeed.txt'; //←出力するテキストファイル。絶対パスで書く
try{
file_put_contents($filename, $html);
        echo "テキストファイル出力OK。"
        }catch(Exception $e){
        echo "テキストファイルの出力に失敗しました。"
        }

 読む込みは以下のような感じでページに書くか、feedget.phpなどのファイル名で実行する。

<?php
$filename = 'simplefeed.txt';
$file = file_get_contents($filename);
echo $file;
?>

 echoをreturnに変えると、MODXのスニペットにも登録できる。

2016/10/09(日)「ある天文学者の恋文」 中盤以降が単調

 予備知識一切なしで見たので、最初のクレジットを見て初めてジュゼッペ・トルナトーレの監督作であることを知った。トルナトーレにしては、というか、トルナトーレだからなのか、ツイストが決定的に足りない。死んだ恋人から手紙やメール、ビデオレターが届き続けるという設定だけで話が発展していかないのだ。だから中盤以降が単調に感じられる。

 初老の天文学者エド(ジェレミー・アイアンズ)と教え子エイミー(オルガ・キュリレンコ)は恋人関係にあった。ある日突然、エイミーはエドが死んだことを知らされる。ちょうどメールが届いたばかりだったため、エイミーはなかなかエドの死を受け入れられない。彼女の元にはその後もエドからの手紙やメールや贈り物が届き続ける。エイミーはエドが残した謎を解き明かそうと、彼が暮らしていたスコットランド・エジンバラや、2人で過ごしたイタリアのサンジュリオ島を訪ねる。

 エイミーには自分が運転していた車に同乗していた父親を事故で亡くした過去がある(ファザコン気味だから初老の教授と恋愛関係になったのだろう)。学生の傍ら、危険なスタントウーマンのアルバイトを続けているのも父親の死の責任を感じ、死の願望を密かに抱いているからなのかもしれない。父親の死以来、母親とは疎遠になっている。届き続ける手紙の意図は母親との関係を修復させることにあるのかと思わせるが、そのあたりの描写はあっさりしたものだ。となると、手紙の意図が分からなくなる。死んでからも恋人を束縛し続けるだけとしか思えないのだ。さまざまな場面を想定して、こんなに何通もの手紙を用意しておくにはかなりの時間がかかったはず。恋人への思いがさせたことであったにしても、この教授、実はとんでもなく偏執的な男に違いない。ある意味、気味の悪いキャラクターだ。

 描写も感傷過多で、見ていてうんざり。はいはい、ご勝手にどうぞと思えてくる。撮影当時、妊娠4カ月だったというオルガ・キュリレンコは悪くないが、36歳で大学院生役というのは少し無理がある。20代の女優の方が良かったのではないか。古風な響きがある邦題に対して、原題はCorrespondence(文通、通信)。現代的な通信方法は即物的なのであまりロマンティックにはならないなと思う。

 教授のマニアックさはトルナトーレ自身に共通する部分がある。個人的にトルナトーレの映画に心底から感心した作品がないのはマニアックな部分が人物造型に向けられていて、話に向かっていないからだと思う。

 【amazonビデオ】ジュゼッペ・トルナトーレの監督作品

2016/10/01(土)Google Feed APIの代替

 先日、GoogleからFeed APIを終了すると最後通告のメールが来た。以前から非推奨となっていたが、いよいよ2016年12月15日で終了するそうだ。Feed APIはトップページに使っているので代替策を考えなくてはいけない。検索してみると、代替のPHPスクリプトがいろいろ公開されている。セキュリティーを考えれば、PHPの設定でallow_url_fopen=offで動くものが望ましい。

 simplexml_load_fileやfile_get_contentsなどを使っているスクリプトはこの時点でアウト(cURLなどでRSSを取得してsimplexmlを解析に使うのなら良い。複数のRSSに並列リクエスト後マージして返す関数 - Qiitaなど参照)。Feed.php(rss-php)はSimpleXMLとcURLを使い、allow_url_fopen=offの環境でも大丈夫のようだ。

 PHPでRSSやAtomのフィードを取得する方法「Google Feed API」の代替として「rss-php」でRSSやAtomフィードを取得・表示するなどでスクリプトが公開されている。ただしRSSかATOMのどちらかにしか対応しない。両方対応するように少し手を加えた。映画ニュースサイトのRSSを取得したサンプルは以下。

【サンプル】movienews.php

【スクリプト】movienews.txt(拡張子は.phpに変え、UTF-8で保存する。ファイル名は何でも良いです)

 MODXで使う場合はスニペットに登録する。最後から2番目の行の

echo "<dl>" . $html . "</dl>";

を「return $html」に書き換えて、assets/snippetsにアップロード。スニペットを新規作成し、

return @require MODX_BASE_PATH.'assets/snippets/movienews.php';

とスニペットコードに書き、movienewsの名前で保存する。呼び出すページに

[[movienews]]

と書けばOK。

 ただし、Feed.phpでRSS1.0の解析の仕方がよく分からない。というか、パースできない。しょうがないので2005年から更新されていないのであまり気が進まなかったが、Magpie RSSを使ってみた。これは難なく、RSS1.0のフィードを解析できた。古いといっても、RSSの技術自体が2005年当時から変わったわけではない。車輪の再発明をしたい人は別にして、手っ取り早くGoogleから乗り換える代替スクリプトとしては良いと思う。以下はMagpie RSSを利用したサンプル。参考にしたのは複数RSSの統合して更新日時でソートする方法について(MagpieRSS使用) - PHPプロ!Q&A掲示板

【サンプル】feedall.php

【スクリプト】feedall.txt

 Google Feed APIのように表示すると以下の通り。

【サンプル】magpieget.php

【スクリプト】magpieget.txt

 Feed.php、Magpie RSSともキャッシュを作成して、設定時間ごとにRSSファイルを取得する。毎回、取りに行かないのでサーバーへの負荷は抑えることができるだろう。言うまでもなく、cURLが使えない環境では動きません。

 この記事をアップした途端にスクリプトにエラーが出た。調べてみると、リアルサウンドのフィードにエラーがあった。おかしな文字が混ざっているために、フィードの読み込みができない。というわけでmovienews.phpの方にはエラーの内容表示処理を追加した。

このエントリーの続き→Google Feed APIの代替その2

2016/09/20(火)「怒り」 今年のベストを争う作品

 東京・八王子の夫婦が自宅で惨殺され、現場に大きな血文字の「怒」が残されていた。という発端から映画は東京、千葉、沖縄に現れた殺人犯かもしれない3人の男とその周辺の人々のドラマを描く。映画の主眼はだれが犯人かということではなく、周辺の人々の心の揺れ動きの方にある。

 これは吉田修一の原作でもそうだ。個人的に深い感銘を受けた原作を同じ吉田修一原作の「悪人」に続いて李相日監督が映画化すると聞いて大いに期待した。期待はまったく裏切られなかった。見ながら、いくつかの場面で胸が熱くなる。登場人物たちの慟哭、後悔、悲しみ、やりきれなさが胸に迫ってくるのだ。多くの登場人物たちのさまざまな感情の渦に巻き込まれたよう。見事な脚本と編集とリアルな絵づくりと俳優のリアルな演技に坂本龍一の美しい音楽が加わって、ケタ違いに充実した映画になった。今年のベストを争う作品であることは間違いない。

「怒り」パンフレット

 八王子の事件から1年後、沖縄の無人島に現れた男(森山未來)は田中と名乗る。高校生の小宮山泉(広瀬すず)は同級生の知念辰哉(佐久本宝)のボートで島に遊びに行き、田中と出会う。どこか田中のことが気になった泉は交流を深めるようになる。東京で藤田優馬(妻夫木聡)はゲイのパーティーで大西直人(綾野剛)と出会い、お互いに惹かれ合って一緒に暮らすようになる。直人は自分のことを一切語らなかった。千葉の漁港で働く槙洋平(渡辺謙)は娘の愛子(宮崎あおい)を歌舞伎町の風俗店から連れ戻す。槙の下では3カ月前にやってきた田代哲也(松山ケンイチ)が働いていた。コンビニ弁当を食べている田代を見て、愛子は弁当を作るようになる。やがて愛子は田代と一緒に住みたいと言い出す。

 3つの場所で進行する物語が交錯することはない。素性不明の3人の男と関わる人々の姿がそれぞれに描かれていく。凡庸な監督が撮ったら、エピソードの羅列に終わっただろうが、李相日監督は沖縄から東京、東京から千葉へと転換する場面でフラッシュフォワードを使ったり、エピソードに軽い関連を持たせ、エモーションをうまく持続させている。

 渡辺謙も宮崎あおいも松山ケンイチも妻夫木聡も綾野剛も広瀬すずも森山未來も、それぞれが1人で主演を張れる俳優。それが束になって出てくるのだから、画面の厚みがただごとではない。松山ケンイチと綾野剛に関しては受けの役柄のため演技の見せ場がないのだけれど、それでもこの2人が演じることによる効果は大きい。最も儲け役なのは宮崎あおいで、予告編を見た時からうまいと思ったが、「少し人とは違う」女を演じきっている。これで女優として大きく成長したのではないか。それはアイドル女優だったらやらないような難しい役を演じる広瀬すずにも言えることで、試写を見た事務所の社長が「いい映画になって良かった」と涙ぐんだ(キネ旬2016年9月下旬号)というのもよく分かる。

 空撮を交えた笠松則通の撮影も見事。どの場面もないがしろにしないという強い意志が伝わってくる。隙がない映画というのはなかなかないし、原作を無茶苦茶にする映画も多いのだが、李相日が書いた脚本は原作のエピソードを削りながら、そのエッセンスは少しも損なわれていず、驚くほど原作に忠実なイメージになっている。ストーリーを知っていても圧倒されるのは画面と脚本の構成、出演者の演技が高いレベルにあるからだろう。上映時間2時間22分。それでも短い。3時間でも4時間でも見ていたくなる。