2008/10/19(日)「イーグル・アイ」

 巻き込まれ型のノンストップアクション&スリラー。全然内容を知らずに見て、それこそノンストップのアクションを堪能し、ヒッチコックの効果的な引用に感心し、クライマックスの「知りすぎていた男」のうますぎる換骨奪胎にしびれた。個人的には主人公のエモーションが最後まで持続する点で、ジェイソン・ボーンシリーズなんざ裸足で逃げ出す大傑作と思うのだが、世間的には評価が高くない。IMDBでは6.9。うーむ。まあいいや、十分すぎるほど楽しめたから。僕はベストテンに入れます。

 主人公のジェリー・ショー(シャイア・ラブーフ)はスタンフォード大学を中退してふらふらしている男。双子の兄は空軍に入り、ジェリーとは違って優秀な男だったが、事故死してしまう。兄の葬儀の翌日、ジェリーの口座に75万ドルが振り込まれ、アパートに帰ると、部屋には大量の兵器が届いていた。戸惑うジェリーの携帯にFBIが踏み込むので逃げろ、と女の声で連絡が入る。半信半疑だったジェリーはテロリストとして逮捕されてしまう。同じ頃、シングルマザーのレイチェル・ホロマン(ミシェル・モナハン)にも女の声で電話があった。指示通りにしなければ、息子を殺す。ジェリーには再び女が電話をかけ、指示通りに行動してFBIのビルから脱出。レイチェルの運転する車にたどり着く。2人は訳が分からないままFBIから逃げ、謎の女の指示通りに動く羽目になる。

 訳が分からないまま動く2人が巻き込まれるアクションが壮絶。カーアクションは「フレンチ・コネクション」を参考にしたらしいが、ちょっと撮り方に難はあるものの、スピード感は満点だ。何よりも謎だらけの展開なのに面白く物語っていく手腕に感心した。謎が途中で明かされるのはヒッチコック映画を踏襲している。その後は敵の目的が謎として残り、それも明らかになった後はサスペンス的展開となる。2人が選ばれた理由もここで分かる仕組み。謎が分かってしまうと、途端に失速する映画がよくあるけれど、この映画の場合、そこでSFチックな展開になるのがよろしい。そこにもやっぱり名作SFを引用してあるのが微笑ましかったりする。

 FBIの捜査官にビリー・ボブ・ソーントン、空軍の捜査官にロザリオ・ドーソン。D・J・カルーソ監督の前作「ディスタービア」はヒッチコック「裏窓」の盗作であるとして製作のスピルバーグが訴えられた。カルーソは「テイキング・ライブス」でもヒッチコックタッチを引用していたから、相当にヒッチコックが好きなのだろう。もうそのあたりで贔屓の引き倒しにしてしまいます。ヒッチコック映画を知っていれば、より楽しめるが、知らなくてもスピーディーな展開に不満はないはずだ。アクション映画、サスペンス映画のファンは見逃してはいけない作品だと思う。