2014/06/22(日)「チョコレートドーナツ」

「正義なんてないんだな」

「法科学校で習わなかったのか。それでも闘うんだ」

 ダウン症のマルコ(アイザック・レイヴァ)の監護権を麻薬中毒の母親に奪われた裁判の後、アフリカ系弁護士のロニー(ドン・フランクリン)がポール(ギャレット・ディラハント)に言う。裁判で常に正義が勝つとは限らないけれども、現状を打破するには闘うしかない、という訴えにはとても共感できる。しかし、映画を見ていてどうもすっきりしないのは「ほら見ろ、ゲイへの偏見を持つからこういう悲劇が起きるんじゃないか」という展開になってしまっているからだ。

 ゲイへの偏見と差別は十分に描かれていて、それはそれで納得できる。しかし、このストーリーではダウン症のマルコの存在が利用されているだけのように思えてきてしまう。脚本家の狙いはゲイへの偏見と差別を糾弾するだけで、ダウン症への偏見と差別にはあまり関心がなかったのではないか。映画に奥行きが感じられないのはそのためもあるようだ。お涙ちょうだいの域を出ない展開がとても歯がゆい。