2006/09/23(土)「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」

 「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」パンフレットウルトラマンシリーズ生誕40周年記念作品。出てくるのは初代ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン(今はウルトラマンジャックと呼ばれる)、ウルトラマンエース。どれもリアルタイムに見ていたので、黒部進、森次晃嗣、団時朗、高峰圭二が出てくると、懐かしさがこみ上げてくる。そういうノスタルジックというか40年の歴史の重みを一番感じさせるのはエンドロールで、桜井浩子やひし美ゆり子、星光子まで顔を出すのが何というか感涙ものである。桜井浩子はウルトラマンの後、実相寺昭雄の映画に出ていたし、ひし美ゆり子も東映映画などに出ていた(というか桜井浩子はウルトラマン以前からかなりの映画出演歴がある)。

 メビウスの物語にウルトラ兄弟の面々を絡ませた展開は悪くないのだが、怪獣に襲われて心を閉ざした少年のエピソードに魅力を感じない。作劇としてうまくないのだ。加えて、GUYSの戦闘機のいかにもオモチャ然とした造型および質感は僕には見ていく上での障害でしかなかった。板野サーカスと言われるCG監督板野一郎のCGも取り立てて騒ぐ出来ではない。小中和哉監督作品としては大人の観賞を意識して作った前作「ULTRAMAN」(2004年)の方が面白く、今回の映画は子供向けストーリーの域を出ていないのが惜しい。マニアは喜ぶだろうが、ウルトラマン世代向けなのは懐かしさだけなのである。

 20年前、異次元超人ヤプールの怨念で生まれた究極超獣Uキラーザウルスをウルトラ兄弟は協力して神戸沖に封印する。パワーを使い切ってしまったために4兄弟は変身能力を失い、以後は市井の民間人として暮らしていた。そして現在、GUYSのヒビノミライ(五十嵐隼士)は神戸に異変を感じて一人出動する。テンペラー星人、ガッツ星人、ナックル星人、ザラブ星人の宇宙人連合がUキラーザウルスを復活させようとしていたのだ。ミライは現れたテンペラー星人をメビウスに変身して倒すが、その戦いで宇宙人連合に能力を知られ、倒されて十字架に架けられてしまう。ウルトラ兄弟はメビウスを救うために死を覚悟して変身する。しかし、宇宙人連合の狙いは4兄弟の方にあった。兄弟のエネルギーでUキラーザウルスを復活させたのだ。

 これが本筋でサイドストーリーとして描かれるのが、天才科学者ジングウジアヤ(いとうあいこ)の弟で怪獣に襲われて心を閉ざしたタカト(田中碧海)の話。タカトはGUYSとウルトラマンメビウスにあこがれていたが、一緒にいた愛犬を救おうとしなかった自分を責めていた。この話がどうもテレビシリーズレベルの話である。子供を意識したのだろうが、全体の流れから言えば不要としか思えない。クライマックスは巨大化したUキラーザウルスとウルトラ兄弟の戦いをCGを駆使して描く。ここはそれなりに見応えはあるものの、これがこの映画の魅力かと言えば、そうでもないだろう。子供なんか意識しなくていいから、ガチガチの4兄弟の話にした方が良かったように思う。

 気になったのはミニチュアの神戸の街並みに登場する着ぐるみ怪獣たちのリアリティ欠如。平成ガメラシリーズも着ぐるみだったのに、あれはどうしてあんなにリアリティを持ち得たのか。たぶんドラマとエモーションががっちり組み合わさっていたからだろうと思う。ウルトラマンシリーズでも「ウルトラセブン」が名作だったのは脚本家・金城哲夫の存在が大きかった(どうでもいいが、この夏、石垣島に行った際、金城哲夫作品のDVDボックスのテレビCMが盛んに流れていた。沖縄では金城哲夫の名前でDVDが売れるのか)。映画の中にも引用されるキングジョーとの戦いや最終話のドラマティックさがこの映画にも必要なのだろう。小中和哉、次もウルトラマンを作るなら、脚本にもっと力を入れて欲しいと思う。