2008/03/09(日)「バンテージ・ポイント」
大統領狙撃事件を8人の視点(バンテージ・ポイント)で描くアクション映画。森卓也はキネ旬で「スタンリー・キューブリックの出世作『現金に体を張れ』(56)にインスパイアされたのではあるまいか」と書いている。なるほど。午前11時59分57秒から狙撃の瞬間を経てその後まで何度も違う視点で繰り返すうちに徐々に犯行の詳細が分かってくる。途中に謎やサスペンスを加えるのもうまい。脚本はもちろん優れているが、それ以上に演出のスピード感が良い。クライマックス、コンパクトカーによる渋滞した中でのカーチェイスも面白かった。
1時間30分の上映時間は賢明。この趣向ではこれ以上長くなると、スピード感を減殺することになったかもしれない。絶賛はしないけれど、良くできた作品と思う。気になるのはラストで、偶然に頼った解決にすぎなかった。もっとも、これもちゃんと伏線らしきものはある。監督のピート・トラビスはテレビの演出家で、劇場用映画はこれが初めて。このスピード感もテレビ向きなのかもしれない。