2003/08/07(木)「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」

 ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」を基にしていると聞いたのでお子様向けかと思ったら、そうでもなかった。牢屋の鍵をくわえた犬に向かって囚人がこっちへ来いと叫んでいる場面や、敵役が骸骨のゾンビたちである点はアトラクション通りで、あとは自由に作ってある。監督のゴア・ヴァービンスキーは「ザ・リング」に続いて、凡庸なりにまずまずの演出を見せ、「ザ・メキシカン」の汚名はぬぐい去ったようだ。しかし、話に広がりがないし(狭いところで、ごちゃごちゃやっている)、展開がもたもたしているし、2時間23分もつ話でもない。展開が難しくないのはやはりお子様を意識したからだろう。レイティングがPG-13とはいっても、アメリカでヒットしているのはファミリー映画であるからにほかならない。

 タイトルが出てきただけで始まるオープニングがかつての海賊映画をなぞった感じである。カリブ海を航行中の英国海軍の船が漂流している少年ウィルを発見する。黒い海賊船に襲われたらしい。総督の娘エリザベスは少年が掛けていた髑髏の図柄入りの金のメダルをとっさに隠す。そして8年後、エリザベス(キーラ・ナイトレイ)は美しく成長し、ウィル(オーランド・ブルーム)は鍛冶屋となっている。総督の就任式に出席したエリザベスは海に落ちたところを海賊のジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)に助けられる。その夜、黒い海賊船ブラック・パール号が町を襲撃。エリザベスは船長バルボッサ(ジョフリー・ラッシュ)に囚われの身となる。ウィルはジャックの助力を得て、エリザベスを助けるためブラック・パール号を追う。

 黒い海賊たちは実は呪いを掛けられて死ぬに死ねないゾンビで、月明かりの下では骸骨に変身する。ILMが担当したVFXは人間から骸骨への変化を実に自然に見せる。デップやブルームと骸骨との戦いもよくできている。しかし、原初的な感動に関してはレイ・ハリーハウゼンが「アルゴ探検隊の大冒険」で見せたモデル・アニメーションの骸骨との戦いの方が優れているようだ。あちらの方が手間がかかっていそうに見えるのである。

 話は金のメダルを巡る争奪戦で単純なのはいいのだが、“死の島”で同じような場面を2度繰り返したり、話自体にも新鮮さが感じられない。もう少し脚本に工夫が欲しいところだった。ありきたりなのである。

 ジョニー・デップは沈みかけた船で港町にやってくる登場場面からおかしい。会う女に殴られ続けるというのが実にピッタリな感じで、この映画を支えている。清楚に美しく、どこかウィノナ・ライダーを思わせるキーラ・ナイトレイはこれでブレイクすると思える演技。オーランド・ブルームは「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラスの方が颯爽とした感じがあるが、この役柄も悪くなかった。