2002/01/28(月)「ラットレース」

 「ゴースト ニューヨークの幻」のジェリー・ザッカーのコメディ。予告編を見てキャノンボールのような作品かと思ったが、その通りで、200万ドル獲得を目指して6組の親子やカップル、家族、兄弟が700マイル(約1000キロ)を奔走する。それぞれのキャラクターを紹介する導入部分が単調になるのは仕方がないのだが、ジェリー・ザッカーはここから大いに笑わせてくれる。いや、こんなに本気で笑わせられたのはアメリカ映画ではホントに久しぶり。当然のことながらザッカーのコメディセンスも「ケンタッキー・フライ

ド・ムービー」(1977年)のころよりは随分、洗練されたのである。

 出てくるだけで存在感がありすぎるローワン・アトキンソンのみ、導入部分では紹介されず(紹介しようがないキャラだし、後のエピソードの伏線でもある)、いきなりラスベガスのホテルの一室に登場する。そこはスロットマシンで金色のコインを出した男女が集められていた。大金持ちでギャンブル好きのドナルド・シンクレア(ジョン・クリース)が、ニューメキシコの駅のコインロッカーにある200万ドルを最初にたどりついた者に与えると宣言。一同、半信半疑だったが、欲には勝てず、懸命にニューメキシコを目指すこ

とになる。ここからはさまざまな笑いのオンパレード。短いシーンで笑いのエピソードを次々に描き、おなかいっぱい。ジョーク・ブックのような構成は「ケンタッキー…」のころから変わらないのだが、進歩した部分はそれぞれのキャラクターをしっかり描き分けていることだろう。

 予告編ではアトキンソンの存在が強調されていたが、メインなわけではなく、あくまでもキャラクターの一人。スタート直後に立ったまま眠ってしまい、30分ほど画面から消えるのだ(ナルコレプシーか、お前は)。これは懸命な処理で、アクの強すぎるキャラは控えめに出した方がいいのである。その代わり、ホテルを出た直後の場面から爆笑である(特に心臓を巡るエピソード)。同じ意味でウーピー・ゴールドバーグも控えめな扱いだ(リスを巡る爆笑場面がある。これはアメリカの田舎で実にありそうな話)。

 シチュエーション・コメディにスラップスティックで味付けし、ラストは嫌な金持ちに一撃を与える気持ちよさ。久々の「コメディの快作」と、少しおまけの評価をしておこう。

 ただ、観客は2人だけ。ちょっと爆笑しにくいシチュエーションだったのは残念。こういう映画は満員の映画館で大いに笑いたい。