2000/08/07(月)「リプリー」
ルネ・クレマン「太陽がいっぱい」のリメイクではなく、パトリシア・ハイスミス“The Talented Mr. Ripley”の映画化。「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ監督だから、見応えのある映画にはなっているけれど、失敗作と思う。
主人公のトム・リプリーの内面描写がないので、感情移入しにくいのだ。これはリプリーがだれにも本心を明かさないからで、観客はリプリーの行動からその気持ちを推し量るしかないのである。唯一、本心を明かす場面がディッキーを船の上で殺す場面。しかし、その後の行動は大金を手に入れたいのか、犯罪を隠したいのか、分かりにくくなっている。冒頭に「過去を消してしまいたい」とのモノローグが入るけれど、これだけではリプリーがどういう人物なのか説明するには十分ではないだろう。
「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンのイメージをきっぱり捨てて見るべき映画。映画に漂うある種の不快さはハイスミスの作品に通じるものではある。