2000/05/10(水)「イグジステンズ(eXistenZ)」

 デビッド・クローネンバーグの新作。前作「クラッシュ」を見ていないし、その前の「Mバタフライ」もビデオに録画したまま見ていないので、個人的には実に「裸のランチ」(91年)以来のクローネンバーグ映画となる。近年は文学的な題材を選んでいたクローネンバーグが原点回帰したと言われる作品で、その通り「ラビッド」や「ブルード 怒りのメタファー」などを思わせるB級SFチックな出来である。

 ゲームの世界と現実との区別がつかなくなるという結末からすれば、まあ小粒な映画といっていいだろう。しかし、そのゲーム機が有機体(突然変異生物)でできているというのがクローネンバーグらしいところ。人は背中にあけたバイオポートにプラグを差し込んでゲームをプレイするのだ。予告編でさえ、気持ち悪い部分があったので心配したが、映画は全体としてみれば、傑作ではないにしても面白い仕上がりと思う。主演の2人、ジュード・ロウとジェニファー・ジェイソン・リーがなかなか良く、楽しめた。

2000/04/19(水)「スリー・キングス」

 湾岸戦争終結直後のイラクを舞台にした戦争アクション。ちょっと変わっている。表面的には脳天気な装いなのに細部がやけにリアル。アメリカのアクション映画でよくある、クライマックスに破壊の限りを尽くすパターンともきっぱり決別している。戦争が終わって、クウェートは解放されたが、イラク国内にはサダム・フセインに苦しめられている人々がいる。フセインがクェートから奪った金塊を横取りしようとした4人のアメリカ兵が難民の苦況を見るに見かねて助けようとする話なのである。

 ボストン批評家協会賞の最優秀作品賞と最優秀監督賞をダブル受賞したほか、タイム誌が昨年のベストテンに選出したそうだ。確かにオリジナリティーという点でデヴィッド・O・ラッセルの脚本と演出は抜きん出ている。固すぎる社会派にもならず、単純なアクション映画にもならず、さじ加減が絶妙。演出に一部荒さは残るが、注目していい監督の一人と思う。